軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第3話 天月、バベルに侵入する

目黒磁鋼巣ダンジョンの深層を進む俺たち。

奥に進むに連れて、モンスターもどんどん多くなって来るのだが……進むスピードはむしろ速くなっていた。

「じゃま。退くべき」

リリの黒い髪が伸びたかと思うと、その先端がハンマーのような形状になる。

そしてその髪をまるで鞭のように振り回し、立ちはだかるモンスターを潰してしまう。相手はSランクのモンスターなんだけど、全然余裕で相手できてしまっている。

「倒した、ぶい」

「おお……凄いぞリリ。さすが」

「うん、リリはすごい」

"強すぎて草"

"力の三号が誕生してしまった"

"さっきは強酸を飛ばしてたし、遠近距離隙がないな"

"おまけに可愛い"

"ふんぐるふんぐる(興奮が伝わる謎の言語)"

"今潰したミスリルゴーレムってかなり硬いはずなんだけどな"

"ていうか早く戻って来てくれシャチケン。こっちマジやばいんだって"

"コメント読めない状況じゃなければ……"

"まあ魔対省がなんとかしてくれるっしょ。たぶん"

"不安すぎる"

"なんかどんどん建物みたいのが落ちてきてんだけど逃げた方がいいのかな"

"はよ逃げろ!"

"都民は異常事態に慣れすぎ"

磁場の影響で内容は分からないが、コメントの通知が多い。

これは……きっとリリが変身したことにみんな反応しているんだな! まあ俺もびっくりしたし、みんな驚いて当然だ。

しかもこんなに強いんだから、反応も多くなるだろう。なんだか我が子のように誇らしい。

「たなか、先行く」

「ああ、行こうか」

俺はリリにそう返すと、一緒にダンジョンの奥へ進んでいくのだった。

◇ ◇ ◇

「天月課長、目標目の前です!」

「ええ、確認したわ」

討伐一課一行を乗せ、飛行する軍用輸送機ヤタガラス。

その巨体に見合わぬ速度と機動性を持った機体は、ダンジョン「バベル」に接近していた。

「このダンジョン、立派な塔ですね。手入れされてる感じしますし、誰か住んでいてもおかしくなさそうです」

「そうね。でも中にモンスターがいる可能性は高い。気を抜かないように」

「は、はい! 気をつけます!」

部下に釘を刺した天月は、窓の外のバベルを凝視する。

バベルは今もゆっくり地表に近づきつつある。このままのペースで落ちていたら、後一時間程度で地表に到達する見込みだ。

それまでにバベルの内部に侵入、ダンジョンコアを見つけ出し破壊しなければならない。

もしそれが叶わなければ、多くの犠牲者が出るだろう。既に避難命令は出ているが、そんな短時間で避難は完了しない。

天月は思わず「こんな時、誠がいてくれれば……」と考えてしまうが、すぐに頭を振ってその考えを頭から振り払う。

自分の力でなんとかする。その為に強くなったのだから。

「大丈夫? あんまり無理しちゃ駄目よ」

「問題ありません。この程度の窮地、何度も乗り越えてきました」

「そう? ならいいんだけど……」

雪はそう言うが、天月の表情には余裕がなく心配は消えなかった。

一方天月はバベルに侵入するため、観測装置を使ってバベルの情報を集めている部下に尋ねる。

「バベルへの侵入経路は見つかった?」

「あ、はい。中に入れそうな箇所はいくつも見つけたのですが……ヤタガラスが着陸できるような広い場所が見つかっていません。もう少し時間をいただければ……」

「そう、分かった。それじゃあヤタガラスの着陸は諦め、直接の侵入に切り替えます。ハッチを開けて各自準備をしてちょうだい」

天月がそう命令すると、ヤタガラスはギリギリまでバベルに近づき、後方ハッチを開く。

討伐一課の面々が急いで準備をする一方、天月は愛剣ただ一つを握り締め、開いたハッチのふちに立つ。

「高エネルギー反応があったバベル先端部に直接侵入する。私が先に行って安全を確保するから、各自パラシュートの準備が終わり次第侵入を開始するように」

「え、ちょ、天月ちゃん!?」

困惑する雪をよそに、天月は開いたハッチから外に身を乗り出し、落下する。

頭から落下した天月は、空中で姿勢を制御すると、バベルの先端部で一番侵入しやすそうな入り口に狙いを定める。

「あそこね」

狙いを定めた天月は、空中を 蹴って(・・・) 跳躍する。

田中が配信で見せた空中二段ジャンプ。天月はそれを練習の末、会得していた。

「ふ……っ」

無事狙い通りの場所に着地する天月。

入った場所の奥には通路が続いており、その先に広間のようなものが視認できた。

「高エネルギー反応はあそこから発せられている……ダンジョンコアがあるとしたらあそこしかない」

天月がそう考えていると、他の討伐一課の面々もバベルの中に侵入してくる。その中には雪もおり、馴れないパラシュートを上手く使い侵入に成功していた。

「ふう、まったく。急に行くからびっくりしたじゃない」

「すみません雪さん。しかし時間がありませんでしたので」

「はいはい。分かってるわよ。話は全部終わってからね。先に進みましょう」

総勢十二名と聞くと、戦力としては少し心許ない。しかしここにいるのは全国から集められた選りすぐりの戦士である。たとえ相手がEXランクの相手だろうと負けない自信があった。

「全員集まったわね。それじゃあ隊列を組んで前進、ダンジョンコアがあると思わしき広間に向かいます」

天月を先頭にして、一行は進む。

通路を抜け、広間にたどり着く。その空間にモンスターはおらず、最奥部に王座だけが鎮座していた。

そしてその王座に、一人の人物が座っていた。

「……我が塔へよく来たな、異なる世界の者たちよ。それほど時間は残っていないが、歓迎するぞ」

そう言って恐ろしい笑みを浮かべたのは、青白い肌を持った悪魔のような人物であった。

体長は二メートル半はある巨躯で、体のあちこちから 氷柱(つらら) のような物が生えている。目は血のように赤く、顔は残忍。

睨まれるだけで寒気がするような、恐ろしい生き物であった。

しかしその人物を見た天月は、一切怖気付くことなく対話を試みる。

「貴方とこの建築物は、我が国の領域を侵しています。即刻この侵略行為を中止して下さい。さもなくば貴方を敵性存在と 見做(みな) し、討伐しなければいけません」

「……ほう、いいなお前。気の強い女は好みだ」

謎の人物は楽しげに呟くと、王座を立ち上がる。

立つと人間離れしたその大きさがよく分かり、天月たちは一層緊張する。

「特別に名乗ってやろう女。我が名はガングラティ。『征服王』の異名を持つ、氷の魔王なり。喜ぶがいい、貴様ら劣等種族はこれから私が支配してやる」