軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話 田中、剣を見てもらう

"折れた!?"

"草"

"剣「ほな……」"

"折れちゃった!"

"わァ……ァ……"

"剣くーん!!"

「まじか……」

俺は無惨な姿になった愛剣を眺めながら、ぽつりと呟く。

なんだか心もぽっきり折れた感覚だ。この剣が壊れるなんて想像もしてなかった。

「どうして……ダンジョンの壁を壊したり、硬い敵を無理やり斬ったりしてただけなのに……」

"理由は明白で草"

"理由:過労死"

"ずっとシャチケンと一緒に働いてたんだからダメージ凄かっただろうなw"

"一番のブラック環境にいたのは剣くんだったか"

"これからどうすんの?"

"シャチケンの馬鹿力に耐えられる剣なんてそうないと思うけど……"

"面白くなってきたな"

師匠にこの剣を貰ってから、俺は他の武器を使っていない。

なので当然スペアの武器もない。いったいこれからどうすればいいんだ……と悩んでいると、突然顔面をぶん殴られる。

「もがっ」

『ゴウッ!!』

"あ"

"ゴーレムのこと忘れてたw"

"そういえば 鉄(くろがね) の"アルゴと戦ってたんだったw"

"急にほったらかされたからな"

"めっちゃ凄い音鳴ったけどシャチケンの顔大丈夫?"

"いたそう"

……剣が折れて放心してたけど、なんだかだんだんムカついてきたな。

そうだ、折れたのはこのゴーレムが全部悪い。それなのにいきなり殴って来やがって。

俺は顔面に突き刺さっているゴーレムの腕をガシッとつかみ、力づくで顔から引きはがす。

『ゴ、ゴァ……?』

「……よくも剣を折ってくれたな?」

"ひっ"

"キレてるやんけ!"

"怖すぎる"

"とばっちりを受けたゴーレムくんに同情する"

"絶対田中のせいだゾ"

「この剣は大事なものだったんだ。それをこんな風に……」

俺は折れた剣を一旦鞘に納める。

これをどうするかは後で考えよう。今はこのゴーレムを倒し、ダンジョンから脱出することを第一に行動する。

俺は拳を握りしめ、怒りを目の前のゴーレムにぶつける。

「お前……弁償しろっ!!」

『ゴウッ!?』

力の限り、ゴーレムの頭部を殴りつける。

するとメギョッ! という音と共にゴーレムの頭部が体内に陥没し、その衝撃で胴体も爆発する。

硬さと引き換えに再生能力は失ったのか、ゴーレムは少しだけ動いた後に止まってしまう。こんな脆い奴に剣が折られてしまったのかと思うと、悲しくなる。

"アルゴくーん!"

"あーあー"

"スクラップになっちゃったw"

"結局素手でボコすの草なんだ"

"ネームド倒したら快挙のはずなのに浮かない顔してて草"

"まあシャチケンにとってこの剣は相棒みたいなものだからな"

"田中ハーレムの一人目だったか"

"で、結局どうすんの?w"

ネームドのゴーレムを倒すと、少しだけ残った他のゴーレムたちは逃げていく。

どうやらネームドは奴らのボス的存在だったみたいだな。異常発生もネームドの影響で起きていたのかもしれない。

しかし今はそんなことどうでもいい。俺は鞘から剣を抜き、短くなってしまったその刀身を確認する。

「はあ……やっぱり折れてるよなあ……」

何度見ても真ん中でポッキリ折れてしまっている。

うう、つらすぎる。今日はなんでもない配信だったはずなのに、こんなことが起きるなんて。

「……今日の配信はここまでにします。ここまで見ていただきありがとうございました」

"おつ"

"おつおっつ"

"元気出して"

"目死んでて草"

"きっと直るから元気出して!"

"おつー"

配信を停止させて、俺はダンジョンから帰還を始める。

無事に直るといいけど……。

◇ ◇ ◇

「これはひどいね。流石の私でも直せないよ」

「そんな……!」

剣の修理は不可能と宣告され、俺はショックを受ける。

唯一の希望が絶たれてしまった。これは本当にマズイな……。

俺は今、かっぱ橋武器商店街の中にある『志波鍛治店』に来ている。

ここの店主、 志波(しば) 薫(かおる) さんは、俺が一番信頼している鍛治師だ。

腕前は一流だが客は少なく、前は知る人ぞ知る鍛治師だったのだが、前に配信でここを紹介した効果でかなりの客が訪れるようになっていた。

そのせいで今は完全予約制となっている。今回は無理をいって空き時間に剣を見てもらっている。

「あんた無茶な使い方しすぎだよ。この剣は他の剣よりずっと頑丈なのに、こんなに傷むまで使い込むなんて。これじゃ折れて当然、今までもっていたのが奇跡だね」

「うぐ。それは……反省してます」

最近は強めの相手と戦うことが多かったから、ダメージがかなり溜まっていたみたいだ。

そもそも社畜生活の中でも、俺はこの剣に無茶をさせ過ぎていた。反省だ。

「薫さん、本当になんとかならないんですか……?」

「私もなんとかしてやりたいけどねえ。こいつに使われている『アダマンタイト』は特殊な金属だ。折れた箇所を繋げることはできるけど、もとの強度に戻るわけじゃない。それだけじゃすぐにまた折れてしまうだろうね」

「そんな……」

俺はショックで肩を落とす。

どんなに辛い時も死にそうな時も、この剣はいつも一緒にいてくれた。

この剣は俺にとって最大の相棒と言っていい。今更他の武器なんて使いたくはない。

そもそもアダマンタイトを使った武器なんて、そう手には入らない。他の素材で作った武器を使ったらすぐに駄目にしてしまうだろうし……どうすればいいんだ?

「純度の高い『アダマンタイト』を仕上げ材に使うことができれば修復できるけど……ここ数年見つかってないし、難しいだろうね。あんたには悪いが、別の武器を使った方が……」

「……アダマンタイトがあれば、修復できるんですね?」

「え? そうだけどアダマンタイトは伝説の金属、滅多に見つかるものじゃないよ」

薫さんの言う通り、アダマンタイトは非常に希少性の高い金属だ。

ほんの一欠片だけでも数百億の値段がつく、幻の金属。

世界三大 希少素材(マテリアル) の一つでもあり、ダンジョンで手に入る素材でもっとも『硬い』と言われている。

俺の剣はそのアダマンタイト100%で作られている。

そんな贅沢な武器は他に存在しないだろう。

「確かにアダマンタイトは希少な金属、そう簡単には見つからないでしょう……でも確率はゼロじゃない。俺がアダマンタイトを見つけます、なので剣を直してくれませんか?」

俺の言葉に薫さんは驚いたように目を丸くした後、「ははっ!」と笑う。

「もちろんいいさ。あんたなら本当にアダマンタイトを見つけられるかもね」

「ありがとうございます。なるべく早めに見つけますね」

こうして俺は、剣を直すため伝説の金属『アダマンタイト』を探すことになったのだった。