軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第13話 田中、魚人と戦う

『ギィィィ!!』

『ギョオオオオ!!』

魚人たちの群れに突っ込むと、奴らは甲高い奇声を上げながらこちらに襲いかかってくる。

こいつらを見ているとどうしてもダゴ助の顔がチラつく。いや顔はそんなに似てはないんだけど、パッと見た時の姿はかなり似ているんだよな……。

少し罪悪感は湧くけど、相手は普通のモンスター。いつも通り粛々とやることにしよう。

"魚人おっかないな"

"普通に強そう"

"確かAランクのモンスターだっけ? 普通に強いよね"

"Aランクが何十体もいるなんて、普通なら絶望レベルだわなw"

"昔のわいなら慌ててたわ"

"確かに笑"

"初見です。なんでこんなにモンスターがいるのにみなさん冷静なんですか!? 危ないですよ!"

"え、まだ初見いたんか"

"初見の日本人……もう絶滅したものかと"

"貴重な初見だ! 囲え!"

"丁寧に沼に落とせ! いきなりビビらせるな!"

"チームワーク抜群で草"

魚人は水中戦を得意としていて、地上では特に特殊な攻撃はしてこない。

しかしその筋力は非常に発達していて、そこまで大柄じゃないのにミノタウロスを素手で倒してしまうほどだ。おまけに鱗は並の刃物なら弾いてしまうほど硬く、腕に生えているヒレはかなりの切れ味を誇る。

熟練の探索者でも気をつけないといけない相手だ。

『シャア!!』

魚人は俺に接近してくると、さっそくそのヒレで切りかかってくる。

なので俺はそのヒレを右手でパシッと受け止めた。

「やっぱりダゴ助のヒレと比べると、結構切れ味が落ちてるな。似てるけど全然違う種族ってことか」

『ジャ……?』

"魚人くん困惑してて草"

"ダゴ助戦を思い出すなあw"

"ええ!? なんでこの人素手でモンスターの攻撃止めてるの!?"

"初見くん初々しくてかわいい"

"答え、シャチケンだから"

"シャチケンの行動一つ一つに驚く、俺にもそんな"

近くで観察してみたけど、やはりこの魚人は普通のモンスターで間違いないみたいだ。ならば遠慮する必要はない、とっとと倒して進むとしよう。

「ほっ」

『ギョア!?』

魚人の腹部に拳を打ち込む。

すると魚人は苦しそうな声をあげながら体をくの字に曲げる。数秒はなんとか立ったまま堪えていたが、すぐにその場にばたりと倒れる。数発は耐えてくれたダゴ助とは打たれ強さが段違いだな。

"え、殴って倒しちゃった……。これ本当にCGじゃないんですか?"

"CGじゃないんだよなあ"

"田中はモンスターよりモンスターしてるからw"

"初見くんのリアクション100点やね"

《ダゴ助》"兄貴のパンチ痛いんだよなあ……思い出すだけでゾッとするぜ"

"ダゴ助おって草"

"なんでお前も見とんねん!"

"まあお留守番してるし見ててもいいだろw"

"経験者は語る"

『ギイィ……』

『ギャア!!』

仲間をやられたことに腹を立てたのか、他の魚人たちが一斉に俺に向かって飛びかかってくる。

"うわあ!! いっぱい襲ってきた! 逃げて!"

"初見くん本当にいい反応するなあw"

"初見くんかわいすぎる"

"まあ見ててくださいよ(腕組後方彼氏面)"

"逃げなきゃいけないのは魚人くんの方なんだよなあ"

《ダゴ助》"言えてるww"

"なんでこの魚人普通にコメントしてるの?"

"適応能力高すぎる"

"うちのオカンよりネット使いこなしてて草なんだ"

魚人はヒレ以外にも鋭い爪と牙という武器を持っている。奴らはそれらを剥き出しにして俺に突き立てようとしてくる。この程度の攻撃なら防御しなくても大丈夫だけど、万が一スーツに傷でもついたら困る。とっとと片付けるとしよう。

俺は腰に差した剣に手をかけ、高速で振り抜く。

「橘流剣術、 閃(ひらめき) 」

刹那の間に剣閃が 奔(はし) り、迫りくる魚人たちの肉体を深く斬り裂く。

剣閃の数は合計で十。昔の俺はこの繊細な技が苦手だったが、今は師匠の橘さんと同じレベルまで扱えるようになった……と思っている。

"えええええええ!? なにが起きたの!? 一瞬で全員倒した! すごい!"

"初見くん大はしゃぎで草"

"マジで見えなかったw コマ送りしても分からんw"

"魚人くんもなにが起きたか分からなかっただろうな"

"シャチケンさんってこんなに凄かったんですね! ファンになりました!"

"こうしてまた一人、田中沼にハマるやつが現れるのだった"

"いいぞこの沼は。心地良いし底が深い"

"沼? 分かりませんがこれからも配信見ます!"

"こんな新規が来るならチャンネルの未来は明るいな"

魚人たちを倒した俺は剣をしまい、堂島さんたちの方に視線を移す。二人とも魚人程度では苦戦しなかったみたいであちらももうすぐ戦闘が終わりそうだ。

さて、先は長い。

急いでダンジョンの最深部まで向かうとしよう。