軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第6話 領都へ

白いレースの絨毯が、森の上を飛んでいる。

乗っているのは三人と一匹だ。

私は膝の上に昼寝中のミケをのせたまま、編み物に集中している。

マイルさんは固まったまま動かず、ケイティちゃんは目を輝かせながら景色を楽しんでいた。

「マイルさん、絶対に落ちませんから安心してください。それに、高度があるので魔物にも遭遇しませんよ」

あまり高いところを飛ぶと、慣れていない二人が怖がるかもしれない。

そう思って、少し高度を下げて木のてっぺんすれすれの場所を飛んでいる。

ここなら地表の魔物とも遭遇せず、ワイバーンの縄張りも避けられる。

木々の枝に隠れるので、下から見られる可能性も低いだろう。

「もう、いろいろと凄すぎて……何も反応ができない」

「魔法使いって、本当にすごいですね! 空も飛べるなんて……」

「ケイティ、普通の魔法使いは空なんて飛べない。これは、リサさんだからできることだ」

今はヘリコプターモードで飛んでいるが、速度は帝国から飛んできた行きの半分くらいに抑えている。

それでも、森の開けた平地から離陸するときは、未経験のスピードと高さにマイルさんが絶叫していた。

ケイティちゃんはキャーキャー言いながら喜んでいたけど。

領都まで半日かかる距離も、一時間かからずに到着できそうだ。

サイエル王国に入国したときと同じように、領都の城壁の手前の森でレースから降り、何事もなかったかのように検問の行列に並ぶ。

今回はギルドカードがあるから、騎士に止められることなくすんなり領都へ入ることができた。

ここで、マイルさんたちとはお別れだ。

「リサさんには、いろいろと世話になった。本当にありがとう」

「ありがとうございました。いただいた『シュシュ』、大切に使いますね!」

ケイティちゃんの髪は、私があげたピンク色のシュシュで束ねられている。

髪をまとめるのが簡単で、とても可愛いです!と喜んでくれた。

「試験、頑張ってくださいね。あと、移動手段については、どうか内密にお願いします」

「もちろん、誰にも言わない」

「私もです」

私が人差し指を立てて口に当てると、二人も同じように返してくれたのだった。

「ここが、商業ギルドか……」

冒険者ギルドの堅牢な建物とは異なり、木をふんだんに使ったおしゃれな木造建築だ。

扉を開けると木の香りが広がる。

ロビーには商人らしき人たちが大勢いた。

自分たちが少し場違いな雰囲気を感じつつ、受付に進む。

「すみません、商品を売りたいのですが」

「かしこまりました。商業ギルドのご利用は初めてですね? ギルドカードを作成しますので、こちらにご記入をお願いします」

記入する内容は冒険者ギルドのときと同じで、名前、年齢、職業を書いて提出する。

ただし、こちらでは名字は名乗らないことにした。

また貴族と間違われると、いろいろと面倒そうなので。

「リサさん、ですね。ご職業が魔法使いということは、商品はポーションでしょうか?」

「いえ、違います。こちらの小物です」

カウンターの籠の中に、持ってきた商品を並べる。

鞄が四つ。髪留めが二つ。シュシュが三つ。

「これは……すべて、リサさんの手作りですか?」

「鞄と髪留めは既製品を加工しています。それ以外はすべて手作りです」

「担当者が参りますので、少々お待ちください」

案内された個室の椅子に腰を下ろす。

私の膝に飛び乗ったミケが、いつものように丸くなった。

頭を撫でていたら、担当者がやってきた。

「お待たせいたしました。サブギルドマスターのオリビアと申します」

「リサです。こちらは従魔のミケです。よろしくお願いします」

オリビアさんはスーツっぽい服を着こなした、大人の女性だった。

キャリアウーマン風の、いかにも仕事ができますという雰囲気をひしひしと感じる。

そんな人に自作品を見てもらうなんて、非常に緊張してしまう。

「拝見します」

そう言うと、オリビアさんは商品を手に取った。一つ一つを真剣な表情で見ている。

小花やイチゴのモチーフについて、「見本があれば、他の花や木の実も作れますか?」と訊かれたので、「よほど特殊なものでなければ大丈夫です」と答えておいた。

これは、なかなか好感触かもしれない。

シュシュを手に取ったオリビアさんが首をかしげる。

伸ばしたり縮めたりしているので、「中にスライムの皮紐が通っていて、こうやって髪を結びます」と実演を交えて説明をする。

「なるほど! スライムの皮紐にこのような使い方があるとは……これは便利ですね」

「今日持ち込んだ小物は、糸の素材や色を変えるだけで種類を増やせます」

オリビアさんの反応が良いので、セールスポイントをしっかりとアピールしておく。

すべての商品を確認したオリビアさんが、おもむろに口を開いた。

「販売価格ですが、小さい鞄が一つ銅貨五枚、大きい鞄が銅貨八枚、髪留めが一つ銀貨一枚、シュシュが一つ銅貨一枚でいかがでしょうか?」

「あの……そんな高値で売れるのでしょうか?」

私の想定の倍以上の売値だ。

高く売れるのは嬉しいが、売れなければ意味がない。

とても強気の値段設定だから不安になる。

「問題ございません。他に類のない商品ですから、即完売となるでしょう」

サブギルドマスターがここまで断言したのなら、もうお任せするしかない。

商業ギルドと契約を交わし、手数料やギルド口座についての説明を受けた。

手数料を差し引いた金額が、口座へ振り込まれるとのこと。

冒険者ギルドと同様に、商業ギルドであれば国を跨いでも口座から入金・出金ができるようだ。

「出来上がったものから順次納品いただければ、こちらで張り切って売ります! もちろん、新商品も大歓迎です!」

「わかりました。よろしくお願いします」

私はガツガツ作って、ギルドでガンガン売ってもらおう。

作りたいものは、まだまだたくさんある。

売れ筋商品を見極めながら、このヘンダームで頑張ろうと気合いを入れた私だった。

◆◆◆

リサとの商談を終えたオリビアは、その足でギルドマスターの執務室を訪れていた。

ギルマスのハリーは年配の男性で、この道四十年以上の大ベテランだ。

そんなハリーの目の前に、オリビアはリサが持ち込んだ商品をすべて並べた。

「いかがでしょうか? 刺繍とは全く異なる技術で、私はこれまで見たことがありません」

「これはすごいな。糸を使用して、立体的な造形を作り出す技術か……」

ハリーは拡大鏡を手に取り、髪留めの小花やイチゴをじっくりと観察している。

「こちらであれば、ルーク様へ自信を持って提案できると思います」

「マルベリーシルクの糸で製作すれば、十分貴族向けの商品となるな。さらに、販路拡大にも繋がりそうだ……よし! さっそくルーク様へ面会を申し込もう」

リサの知らないところで、大きな動きが起きていた。