軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第59話 見張りと押収。そして……

証拠が見つかって、本当に良かった。

ハワードさんとルオンさんに捕縛されている皇兄父子たちを眺めながら、私は心の底から安堵していた。

◇◇◇

昨夜、皇帝を宰相さんの屋敷へ送り届けたあと、私たちはハワードさんの案内で皇兄の屋敷へ向かった。

窃盗事件のときと同様に、夜中に忍び込んでクーデターの証拠を探すためだ。

ハワードさんは、屋敷のどこかに血判状があるはずだと言う。

「 政権転覆(クーデター) を成功させるのは簡単ではない。血判状は同志の結束の固さを示すと同時に、裏切りを防止する役割もある。いわゆる運命共同体だな」

賛同者の名が自署されているため、言い逃れは通用しないとのこと。

「なるほど、『 一蓮托生(いちれんたくしょう) 』ということですね」

「イチレン?」

「どんな結果になっても、最後まで行動や運命をともにするってことです」

「失敗すれば死罪だからな、それくらいの覚悟がなければやらないだろう」

屋敷へ潜入するのは、ハワードさんとゼットンさんの二人に決まる。

危なくなったら、ゼットンさんがハワードさんの姿を消してくれるらしい。

ルオンさんにはレースの上から、レイ君で屋敷の窓から部屋の中を偵察してもらうことになった。

私は足手まといなので、今回も屋根の上でお留守番。

ミケも待機となった。

「ミケちゃん、じっとしていると寒いね……」

深夜になって、かなり冷えてきた。

ミケが風魔法で風除けはしてくれているし、外套を羽織ってはいるけど、寒いものは寒い!

⦅リサ、コタツみたいな物を出してよ⦆

そういえば、ミケは寒い季節になるとこたつの中に入ったきり出てこなかったね。

ここに机はないから、別のものにしておこう。

「フィレレース、暖房!」

私は、電気カーペットや床暖房をイメージする。

うん、下がじんわりと暖かくなってきたね。

ルオンさんも「あったかいな!」と喜んでくれた。

「本当に、おまえ一人いたら何でも解決できるな……」

半ばあきれたように言われたけど、一応褒め言葉として受け取っておきますね。

しばらくして、ハワードさんとゼットンさんが戻ってきた。

残念ながら、証拠品は見つからなかったそうだ。

「例の窃盗事件のときは、時間をかけて伯爵邸の内偵をおこなっていた。だから、隠し金庫の存在も把握できたが……」

書棚や執務机の中も調べたけど、それらしい物は見つからなかったとのこと。

やはり、事前調査なしでは難しいよね。

「長期戦になるかもしれないが、相手が証拠品を出すまで監視するしかない」

『皇兄父子らしき人物は屋敷内におりましたので、おそらくこの時間に動きはないと思われますなあ。念のため私が見張りをしますので、皆さまは一度休息されたほうがよろしいかと』

⦅じゃあ、朝まで寝ようかな……おやすみ⦆

ミケは速攻で寝てしまう。

昨日からあまり寝ていないから、私も相当眠い。

外套を掛布団にして仮眠を取ることにした。

レースが暖かいから、よく眠れそうだ。

翌朝、日が昇ったら活動できなくなるゼットンさんと交代し、監視を再開する。

昨夜ゼットンさんが言っていた父子らしき人物二人を、私たちとレイ君でそれぞれ窓の外から見張っている。

父親のほうは私室から出ず、食事も部屋でとっているようだ。

まったく動きはないとルオンさんが言う。

息子の方は執務室へ入り、従者と話をしている。

姿が見えないのをよいことに、私たちは窓のすぐ外から部屋の中を覗き見している状態なので、一応ごめんなさいと心の中では謝っておく。

従者が部屋を出て行ったあと、息子が執務机の左右の引き出しを同時に開けた。

おかしな行動をしているなと眺めていたら、隣からハワードさんの「証拠が出たな……」という小さなつぶやきが聞こえる。

天板の下から出てきたのは、円環状に署名と血判が成された紙だった。

⦅リサ、すぐに回収するよ!⦆

外套を頭から被り、私とミケだけ姿を見せる。

ルオンさんの命によって、レイ君が床に落ちた血判状を拾ってきてくれたのだった。

証拠を押さえ、すぐさま屋敷内を制圧する。

誰一人逃げられないように、屋敷ごと(見えない透明)レースで防御魔法をかけてから宰相さんの屋敷へ報告に向かった。

もちろん、ハワードさんとルオンさんを先に宿へ送り届けてからね。

別れ際に、ハワードさんから「今度、時間をもらえないか?」と言われた。

「君たちが本当は何者なのか、その……少しだけでもいいから教えてもらえないだろうか?」

「わかりました。すべてが片付いたら、きちんとお話しますね」

二人にはお世話になったし、もう信頼できる人物だとわかっているから、私もいずれ自分の正体を明かそうと思っていた。

ハワードさんたちは事態の成り行きを見届けるために、まだ帝都に滞在するという。

私の方から探知魔法で会いに行くと約束をし、別れたのだった。

◇◇◇

あの騒動から数日後、私とミケは大聖堂にいた。

証拠を手にしてからの宰相さんの動きは早かった。

即座に軍を動かし、国賊として皇兄以下派閥の貴族たちを次々と拘束。

皇帝暗殺未遂の実行犯として、帝城内の皇兄の息のかかった者たちもすべて捕えたのだ。

報告を終えた私たちは邪魔にならないよう離宮を出て、顔を隠したまま帝都の宿に滞在していた。

外出時には、ミケは額の星模様が見えないように頬被りをしてベビースリングの中に入れていたから、本当の赤ちゃんだと思われていたかもしれないね。

そして、今日は女神様と対面するために大聖堂へ来た。

クーデターの件は、大司教様を含め市井の人たちにはまだ公表されてはいない。

これ以上の混乱を避けるため、聖女が正式に声明を出してから公表されることになっているのだ。

「うわぁ、大きなステンドグラスだね!」

女神像に行く前に、おばあちゃんとミケのステンドグラスを先に見学する。

『聖女の間』と呼ばれる部屋の壁一面には、陽光を受け黒髪の女性が聖獣を抱っこする姿が映し出されていた。

額にはきちんと星模様も描かれている。

「本当にミケちゃんなんだね……なんだか、不思議な感じ」

⦅元絵となった絵を描いてもらっているときに「動かないでください!」って何度も言われたよ……⦆

「ミケちゃんのことだから、どうせ寝ていたんでしょう?」

⦅だって、いつまでもじっとしてるのは退屈だもんね⦆

「ふふふ、本物は大変だね!」

私は偽聖女だし、こんな大きく描かれたら恥ずかしくてしょうがない。

王都でトムさんに貰ったステンドグラスくらいが丁度いいよ。

さて、女神像の前にやって来た。

いよいよ女神様と初対面だ。非常にドキドキする。

今回は私も動けなくなるから、一番前の長椅子の隅に座らせてもらう。

⦅じゃあ、目を閉じて、「女神様に会いたい!」と念じてみて⦆

「わかった」

女神様に会いたいです!

強く願った次の瞬間、私は見覚えのある白い部屋の中にいた。