軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

299◇全天祭典競技最終段階『血戦領域魔王城』21/その力の名は

狼の如き雄叫びが響く。

一般的な【人狼】の三倍ほどの巨躯を誇る大狼男。

男気溢れる剛力の武人。

「よくぞ呼んでくれた参謀殿!!」

『難攻不落の魔王城』第四層フロアボス――【人狼の首領】マルコシアス。

彼の雄叫びに呼応するように、遠吠えを上げる者がいた。

猛禽を思わせる巨大な翼と、大型四足獣の体躯を持つ亜獣。

己だけでなく、仲間にも『不可視化』を付与できるという、特異な固有魔法を持つ。

僕に軽く顔を寄せてくる彼の頬あたりを、そっと撫でる。

『難攻不落の魔王城』第一層副官魔物――【不可視の殺戮者】グラシャラボラス。

そんな彼の横には、三つ首の大型【黒妖犬】の姿があった。

「参謀殿に召喚される時は、いつだって死闘の 最中(さなか) ですな」

首の一つが楽しげに言う。

魔王城に挑む者達を、最初に出迎える者。侵入者を焼き尽くす獄炎を操る者。

『難攻不落の魔王城』第一層フロアボス――【地獄の番犬】ナベリウス。

「我らが王の戦いでもある。私も死霊の全てを投入するとしよう」

どこか青白く不健康な印象を受ける面貌とは対照的に、彼を包む騎士鎧の下は鍛え抜かれている。

それは、彼自身の剣の腕を見れば明らか。

その上で、彼自身は死者を操ることに長けた術者でもあるのだ。

この時代では、倒した冒険者の 魔力体(アバター) を使役する。

『難攻不落の魔王城』第二層フロアボス――【死霊統べし勇将】キマリス。

「最強の魔王相手に、この毒矢がどれだけ通じるかは分かりませんが……死力を尽くします」

露出の多い身軽な衣装の上に外套を纏うは、切れ長の眼をしたダークエルフの美女。

弓の腕前だけでなく、恐ろしいのは矢に塗られた毒だ。この腐蝕の矢によって敵が弱まったところをキマリスさんが襲い、死霊化するというのが、第二層における定番の流れ。

『難攻不落の魔王城』第二層副官魔物――【闇疵の狩人】レラージェ。

フェニクスとの第十層戦から協力してくれた、最初期の契約者たち。

彼らだけではない。

金色の毛髪に、隠された瞳、鋭い牙。血を操る人間を超越した生き物。

『難攻不落の魔王城』第三層副官魔物――【串刺し令嬢】ハーゲンティ。

青みを帯びた波打つ金の長髪に、宝石のように煌めく下半身の鱗。

『難攻不落の魔王城』第六層フロアボス――【水域の支配者】ウェパル。

彼女は己が生み出した水球の中を泳いでいるが、それは非常に巨大。

それもその筈。中にはもう一体の魔物がいるからだ。

巨大鯨を思わせる巨体を誇る鮫の亜獣。

『難攻不落の魔王城』第六層副官魔物――【海の怪物】フォルネウス。

鳥のきぐるみを着た鳥人、というユニークな格好の紳士。

『難攻不落の魔王城』第七層フロアボス【雄弁なる鶫公】カイム。

巨大な烏の亜獣にして、アガレスとはまた異なった空間転移の使い手。

『難攻不落の魔王城』第七層副官魔物――【怪盗烏】ラウム。

白い髪と鱗を持つ 半人半蛇(ラミア) にして、石化の魔眼を持つ参謀直属の配下。

『難攻不落の魔王城』第十層所属――【魔眼の暗殺者】ボティス。

既に退場した者を除く、我が魔王軍の主戦力。

それに加え、『初級・始まりのダンジョン』にて縁を結んだ者たち。

――【零騎なる弓兵】オロバス。

――【寛大なる賢君】ロノウェ。

タッグトーナメントにおいてレメと共に戦い、レイドでレメゲトンと共に戦った者。

――【銀砂の豪腕】ベリト。

当初はレイド限定ということで、契約を交わした者達。

――【深き森の射手】ストラス。

――【絶世の勇者】エリー。

この全天祭典競技において、レメに何かを見出し縁を結んだ者達。

『南の魔王城』四天王――【火炎の操者】アイム。

『南の魔王城』所属――【炎の槍術士】アミー。

全員が、『難攻不落の魔王城』参謀レメゲトンとの契約をよしとしてくれた者達。

その全員を、同時に召喚した。

今この瞬間でなければ実現出来ぬ荒業だが、今出来るのならそれでいい。

「敵は最強の魔王だ。だが臆することはない」

黒魔術を準備、展開。

全ての星に向かって放つ。

「貴様らには、やつを護る赤き星々への対処を頼みたい。一つ一つが【魔王】に匹敵する魔力量を誇っているが、ただ それだけのこと(、、、、、、、) だ」

他ならぬ師匠が示してくれたのだ。

フルカスさんの魔法具を枯らした、あの黒魔術で気づきをくれた。

魔法に黒魔法は掛けられない。

だが、師匠の星々は角の一部という実体を持っている。

そして、魔力とは全ての源。当然、命の源でもある。

師匠本人には黒魔術を通せなくても、無数に分割した星の一つ一つならば、僕の黒魔術を通せるのではないか。

通したところで、全てに 終わり(死) を押し付けるほどの魔力は割けない。

そんなことをしたら、僕の魔力がどれだけ失われてしまうことか。

だから、弱めるのは――強者が破壊できるギリギリまでで、いい。

その強者を、僕は喚び出すことが出来るのだから。

師匠の強さは、個としての極地に達しているように思う。

鎧角や黒魔術だけではない。

四大属性に関しても師匠は群を抜いている。

白魔法にしたってそうだ。

僕に角を定着させたのとは別の秘術の類も、まだまだ隠し持っているだろう。

だがこの星々に限っては、彼の弟子によって、攻略法が編み出されてしまった。

普通にやっては勝てない相手? そんな相手こそ、僕の役目だ。

敵を弱くして、味方を勝たせる。

「無論、この星の掃討が終わった暁には、最強の魔王と戦う機会が得られるだろう」

一部の好戦的な者達が、喜びの声を上げる。

「貴様らには黒魔術師がついている。弱体化した【魔王】の軍勢など、敵ではない。存分に暴れ、巡る星々を――ことごとく破壊しろ」

この場にいる者達は、僕の力を知ってくれているからこそ、僕の判断を疑わない。

違う。己自身の頭で検証した上で、信じてくれるのだ。

その、なんとありがたきこと。

そして、この場にはまだまだ頼れる者達がいる。

「【嵐の勇者】、【炎の勇者】、【湖の勇者】よ―― 合わせろ(、、、、) 」

この三人には、それだけで充分。

フォラスは指示するまでもなく他の仲間達に合流し、魔王二人も好きに動くだろう。

「魔王様。参りましょう」

「うむ」

様々な場所で共に戦い、時に争ってきた者達が。

今日この場においては、最強の魔王を倒す為の仲間。

この縁こそが、僕が師匠に勝つ為の鍵。

たった一人で、世界の 頂(いただき) に立ってしまった師のところまで。

みんなの力を結集して、辿り着いてみせる。

そして、勝つのだ。

それこそが、僕にとっての――。