軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

233◇予選通過者

各地で行われた大会予選も、全ての日程が終了。

自分たちのパーティーの獲得ポイントは予選後すぐに分かったが、それで通過したかどうかを判断するのは無理。

というのも、何ポイント以上で通過という方法ではなく、全ての会場の結果が出揃った後で、ポイント上位五百パーティーが通過というやり方なのだ。

五百パーティーだとかなり多く感じるかもしれないが、冒険者パーティーが世界に数万組あり、今回は冒険者以外でも参加オーケーということもありかなりのパーティーが集まった。

予定の合う冒険者は大体参加しただろうし、これでもかなり絞った方だろう。

それに、本戦でもどんどん数が減っていく。

師匠やアルトリートさんと戦える最終戦までに、一体どれだけの者たちが残れるか。

「ふ、ふふ……ふふふ……」

魔王城に与えられた寮室である。

僕は今、リビングの椅子に腰掛け、 映像板(テレビ) の前で予選通過者発表を待っている。

いや、ちょっと正確じゃないかな。

パーティーリーダー宛てに、既に結果は送られている。

映像板(テレビ) で発表されるのは、注目パーティーの通過についてだ。

「ミラさん、そろそろ始まるよ」

先程から端末の画面を見つめてニヤニヤしている吸血鬼の美女に、僕は声を掛けた。

「くくっ、あの【戦士】アルバがレメさんを庇うとは。脳みそまで筋肉で出来てるのかと思いましたが、存外やるではないですか。それにしても……はぁはぁ……予選におけるレメさんの活躍と言ったら……! これは編集にも気合いが入るというものです。あとでニコラさんにも送ってあげましょう」

客観的な視点で確認したかったので、あの予選の映像をなんとかコピーしてもらったのだ。

部屋で再生していたそれに合流したミラさんが興味を示し、以来食い入るように繰り返し視聴している。

「しかしサポート要員の活躍も視覚化するというのは、見事なシステム。仲がよろしくないとはいえ、さすがは魔王様の父親ということでしょうか」

「ミラさーん」

再度呼びかけると、なにやらぶつぶつ呟いていたミラさんがびくっと肩を震わせる。

「……っ。れ、レメさん。なんでしょう?」

「番組、始まるよ。ミラさんも観るって言ってたから」

「まぁ、もうそんな時間なのですね」

ミラさんは椅子を僕の横にぴったり寄せ、そこに腰掛けた。

彼女の体温と匂いを間近に感じる距離。

そこから更に、彼女は僕の腕をとった。

「み、ミラさん……?」

「大会参加は自らの意思とはいえ、レメさんと離れて寂しかったものですから」

そういえば、参謀秘書であるカシュもここ最近は以前より近くにいることが多い気がする。

「だ、ダメ……でしょうか……」

上目遣いに窺うような視線を向けられて、僕が断れるわけがない。

「ダメじゃないです……」

そうこうしている間に、待っていた番組が始まった。

全天祭典競技の予選特集ということで、欲しかった情報がたっぷりと得られた。

特に僕の興味を引いた情報を抜粋すると――。

『世界ランク第七位【森羅の勇者】デメテールパーティーが「1300ポイント」も獲得し予選を突破ーー! 樹木を操る土の精霊術を前に多くのパーティーが撃破されました!』

『世界ランク第六位【雪白の勇者】スノウパーティーも「1300ポイント」近く獲得しています! 幻想的で女性や子供から絶大な人気を誇る雪の精霊術を鮮やかに披露し見事予選を通過!』

他にも上位十パーティーは全て通過。

ここ最近関わりがあった人達で言うと――

第一位【嵐の勇者】エアリアルパーティーが『2300ポイント』、

第二位【漆黒の勇者】エクスパーティーが『1890』ポイント、

第三位【魔剣の勇者】ヘルヴォールパーティーが『1570ポイント』、

第四位【炎の勇者】フェニクスパーティーが『1080ポイント』、

第五位【迅雷の勇者】スカハパーティーが『1550ポイント』。

第十一位【灰燼の勇者】ガロパーティーも『720ポイント』で通過したようだ。

『上位百位以内で言うと「ヒーローショー」への出演や「全レベル対応ダンジョン」の解明、またリーダーと【清白騎士】の「タッグトーナメント」参戦など話題に事欠かない第九十九位【銀嶺の勇者】ニコラパーティーが「660ポイント」で予選突破です!』

『まだまだいますよー! あのレイド戦で魔王軍参謀に味方したことでご存知の方も多いでしょう! 【黒魔導士】二人【白魔導士】二人のイケメン四人を率いて華麗に戦場を舞う白銀のアイドル! 第九十五位【絶世の勇者】エリーパーティーも「710ポイント」獲得で予選を突破!』

『大活躍したのは冒険者だけではありません! 騎士団の方々も十三人の団長がそれぞれ率いるパーティーの内、実に十二ものパーティーが本戦へと駒を進めました!』

【正義の天秤】アストレアパーティーが『800ポイント』で予選通過。

他十一パーティーもそれぞれ優秀な成績を収めていた。

『他にも五人の武闘家が大会に参加する為だけにパーティーを組んでそれぞれがバラバラに戦ったにもかかわらず「550ポイント」を獲得したり、東方より「五人のサムライ」を名乗るパーティーが現れ「680ポイント」も稼いだりとダークホースが沢山出現し会場を沸かせました!』

『更に更にー、強いのは 人間(ノーマル) だけじゃあない! 亜人の実力者の方々もじゃんじゃん紹介していきますよー!』

『「難攻不落の魔王城」より四天王【刈除騎士】フルカスパーティーが「1650ポイント」!』

『同じく四天王【吸血鬼の女王】カーミラパーティーが「1260ポイント」!』

『またまた同じく四天王【恋情の悪魔】シトリーパーティーが「880ポイント」!』

フルカスさんは魔王城勤務の龍人さん三人と、レメゲトンの配下であるミノタウロス【黒き探索者】フォラスとパーティーを組んだ。

彼女は開幕直後、槍を無数に枝分かれさせて周囲の空間にいる選手たちを貫き退場させた。

レイド戦で披露されたその技は、正式に『 森槍(しんそう) 』というスキルとして登録された。

フルカスさんはとにかく多くの敵を退場させることに集中、フォラスは黒魔法でそれに協力。

逆に一対一の戦いを好む龍人さんがたはそれぞれが好きに戦っていた。

カーミラはオリジナルダンジョンで発見された魔法具を購入した筈だが、今回は使わなかった。

副官魔物である【串刺し令嬢】ハーゲンティの他、レメゲトンの配下であるラミア【魔眼の暗殺者】ボティスを加え、残る二人は吸血鬼という構成。

シトリーさんは配下の夢魔メイドさん達を率い、 魅了(チャーム) の猛威を振るった。

これにより、操られた選手たちが他の選手を倒すという状況に。

その場合は、 魅了(チャーム) を掛けた者が五ポイント獲得する。更に対象が負けた場合でも、五ポイント。

予選では退場に際し、ダメージを与えた直近二人分の魔力まで記録し、ポイントを分割するルールだからだ。

四天王繋がりで、東西南北の魔王城四天王が属するパーティーもほとんどが予選を突破。

【竜の王】ヴォラク属するバルバトスパーティーも『470ポイント』で予選突破とのこと。

たとえば『1000ポイント』稼ぐには、百人倒さなければならないのだ。

最後まで残れば自分に割り当てられた十ポイントも加算されるが、試合中はそんなことは考えない。

どう敵を倒し、ポイントを獲得するかが重要。

刻一刻と残り選手が減っていく中で、百人以上も一つのパーティーが倒すとどれだけの者が予想出来たか。

上が凄まじいだけで、バルバトスパーティーの獲得ポイントも全体から見ればかなり多いのだ。

ちなみに、レイスパーティーにも触れられた。

『デビュー直後のためランク外ではありますが、レイド戦でその実力を見せつけた若き俊英【湖の勇者】レイスパーティーは「1150ポイント」獲得で予選突破!』

『パーティー構成からして尖りまくっていると超話題! 勇者パーティーといえば亜人はいてもエルフというのが普通ですが、なんとレイスパーティーはサイクロプスのハーフと鬼をメンバーに加えているんですね。他の二人も幼き【破壊者】と、パーティー脱退後活躍の場を広げる【黒魔導士】という中々個性的なメンバーとなっています』

『水精霊本体と契約したレイス選手の華麗な精霊術! 【破壊者】フラン選手の圧倒的なまでの攻撃力! 【白魔導士】ヨス選手の細やかで的確なサポートに、【鉱夫】メラニア選手の献身と恐ろしい棍棒!』

『この予選では各メンバーの得点まで分かるようになっているのですが、【黒魔導士】レメ選手は驚きの「470ポイント」なんですよ!』

『ん……!? 同じ会場のバルバトスパーティーの総合ポイントと同じ、ですね? サポートだと一人退場させても五ポイントですから、これは恐ろしい数字ではないですか?』

『【黒魔導士】は様々な理由で冷遇されている【 役職(ジョブ) 】ですが、この数字を見ては最早その貢献を否定出来ないでしょう』

『元々は世界四位パーティーに所属していたレメ選手ですから、全ての【黒魔導士】がこう……というわけではもちろんありません。とはいえ、【黒魔導士】の可能性が見えた一戦とも言えるでしょうね』

『【黒魔導士】と言えばエリーパーティーも――』

と、そこそこの時間を掛けて語られていた。

隣のミラさんがとても嬉しそうだった。

あと、上位陣に比べると僕らの獲得ポイントが若干下がるのは、理由がある。

運だ。

どの会場にどのパーティーが割り振られるかは、一応ランダム。

だが魔物など普段の職場が固定の者達は、あまり遠く離れた会場には行けない。いや行けなくはないが、負担が大きい。

というわけで、活動範囲の近くにある会場に優先的に割り振られる。

また、同じ職場の者同士は、同じ会場でも開催日時がズラされるなど、同じタイミングでフィールドに立たないよう調整されたようだ。

この措置も納得。

同じダンジョンの者達が固まって協力体制をとったら、試合を有利に運べてしまう。

そのあたり、僕は元フェニクスパーティーとはいえ、最早無関係との判断か。

まぁパーティーメンバーの入れ替えは業界では珍しくないので、そこまで気にしだすと予選なんて組めなくなってしまうのだろう。

とにかく、僕らの会場は偶然にも世界四位と十一位、更には新人四大精霊契約者とその仲間達、騎士団長とその部下達と、更には『西の魔王城』四天王二人がいるパーティーに、謎の巨人という強い人盛り合わせみたいな組み合わせになってしまった。

見聞きした限り、ここまで実力者が放り込まれた会場はほとんどなかった。

気になる人はもっと沢山いたのだが、特別気になったとなると後は――。

『五大魔王城の君主それぞれも凄まじいポイントにて予選を突破しています!』

ベルゼビュート、アスタロト、パイモン、アスモデウスの東西南北の魔王城君主。

その【魔王】四人それぞれが率いるパーティーは、全てが『1500ポイント』以上を獲得。

ただ、この日、数多の人気パーティーを押しのけて最も大きな注目を集めたのは、あのパーティーに間違いない。

『ここまで多くのパーティーの活躍に触れてきましたが、こればかりは私も理解するまでに時間が掛かりました。「難攻不落の魔王城」【魔王】ルシファーパーティーの獲得ポイントはなんと』

たっぷりと間を開けてから、それは発表された。

『――「5000ポイント」です……!!!』

そう。我らが魔王様は『5000ポイント』獲得されたのだ。

つまり、全員倒したのである。

映像を見たが、凄まじかった。

試合開始直後に魔王様が腕を振るうと、フィールド全てが黒い炎に包まれ、次の瞬間には試合が終了していた。

彼女は四天王【時の悪魔】アガレスやレメゲトン配下の【一角詩人】アムドゥシアス、それに第十一層配置の巨人二人を率いていたが、配下の四人はそうなると分かっていたとばかりに不動。

僕が角の魔力を温存し、フェニクスやレイスくん、それとおそらくアストレアさんまで、精霊の魔力を使わずに予選を戦う選択をしたのに対し。

魔王様は迷わず角の魔力を解放した。

単に予選を突破するのが目的なら、僕らのやり方が間違っていたとは思わない。

しかし魔王様にとって、これはメッセージなのだ。

師匠への、そして世界への。

最強の魔王は自分だ、と。

僕とミラさんは、改めて我らが王の強さを知り。

そして僕は、改めて我が師の強さを知った。

何故なら、このような言い方はしたくないが、魔王様に出来ることならばおそらく――師匠にも出来る。

どれだけ努力して、成長したと思っても。

我が師へと近づいていると思えたことはない。

それほどまでに遠く、絶対的な存在なのだ。

それでも、今回、あの人は一番最後で待っている。

一度は表舞台から消えたのに、もう一度戦いの舞台に上がった。

全天祭典競技は最強を決める戦い。

本戦がどうなるかはまだ分からないが、場合によっては仲間と戦うこともあるだろう。

だとしても、師匠の対戦者になる権利を、僕は。

――誰にも譲るつもりはない。