作品タイトル不明
229◇四位と十一位
外に出たら、世界ランク第十一位【勇者】に飲みに行こうと誘われた。
「すみません、うちの兄が」
ガロさんの弟でもある【魔法使い】ブラウさんが、近くにいた【聖騎士】ラークに頭を下げている。
ガロさんがフェニクスの肩に腕を回し、そのフェニクスが困ったような顔をしているからだろう。
ブラウさんはガロさんと対照的に、礼儀正しい。
「いや、うちのリーダーがダル絡みされて困ってるの、中々新鮮で面白いよ」
ラークは普段あまり表情の変わらない顔で微かに笑って、そんなことを言う。
「アンタ口悪くて単純な筋肉だと思ってたけど、ちゃんと考えて戦えるのね」
【戦士】のブランカさんは思ったことをすぐ口にするタイプで、時に汚い言葉を使ったりするがその性格も含めて人気がある。
そんな彼女の評価を受けた【戦士】アルバは、微妙な顔をした。
「うるせぇよ。アンタこそビキニアーマーいつまで着てんだそろそろキツイぞ」
「叩き切るわよクソガキ」
……うん、彼女のビキニアーマー姿も好評を博していると付け加えておこう。
「何度見ても綺麗な子ねぇ……耳触っていい?」
ブランカさんは 魔力体(アバター) でしかビキニアーマーを着用しないが、【剣舞者】のラファさんは普段の姿も扇情的だ。さすがに踊り子風とはいかないが、胸元なんかは何かの拍子にこぼれ落ちそうで道行く男性の目を引くことだろう。
彼女に優しく肩を抱かれた【狩人】リリーは、若干顔を強張らせながら距離をとろうとする。
「いえ、触れられるのはちょっと……」
「じゃあ、そのアホ毛つまんでいい?」
「あほげ……? 私にそのようなものはないかと思いますが」
リリー……自覚、無かったのか。
「あるのに……可愛く揺れてるのに……。じゃあ耳、耳食べていい?」
「食べっ? ……きょっ、許可を出せるわけがないでしょう」
真面目なリリーはからかわれている。
「それにしてもフェニクスパーティーの女性陣は小柄だなぁ……! 特にベーラ嬢! もっと飯を食って肉をつけた方がいいぞ!」
【重戦士】ゴルカさんは体も大きいし声も大きい。
世話焼きで良い人なのだが、どのようなタイプの人でも苦手とされることはある。
たとえば、一般的な冒険者とは価値観が色々違う【氷の勇者】ベーラさんとか。
「……親戚のおじさんのようなことを」
「ん! もっと大きな声で喋らねば聞こえぬぞ!」
「……苦手です……こういうノリ苦手です……静かな部屋で本読みたい……」
ベーラさんは助けを求めるようにそっとリリーに近づいていた。女性同士ということで、パーティー内では親しくしているのかもしれない。
しかし残念ながらラファさんのもう片腕に抱かれ、彼女を両手に花状態にするに終わった。
なんて具合に、それぞれ仲良く? している。
「うるせぇぞお前ら! レメと喋ってんだろうが!」
ガロさんは叫ぶが、残念ながら静かにはならない。ガロパーティーは自由だ。
僕は苦笑してから、返事をする。
「お誘いは嬉しいですが、パーティーで行くと約束していて」
ガロさんは背が高く筋肉質で、鋭い眼光と派手な服もあって威圧感があるが、陽気な人だ。
「だろうなそうだろうとも! 安心しろレメ、ガキも巨人も大食らいも楽しめる店をチョイスするからよ! オレの――弟がな!」
呼ばれて、ブラウさんが進み出た。
「まったく兄さんはまた適当なことを……」
「オレが理想担当、お前が実現担当だ」
「人任せをそこまで格好良く言えるのは、きっと兄さんくらいだね」
「よせよ、照れるだろ」
「はいはい。バルバトスパーティーは参加ということだけど、他のみなさんはどうされますか? もちろんご都合が悪ければ断っていただいても問題ありませんよ」
「いいや、よくねぇ!」
「兄さんはお気になさらず」
【竜の王】ヴォラクさんを見ると、別れてまたすぐ顔を合わせた気まずさからか、鼻を掻いて、それから小さく手を上げてくれた。
僕も微笑んで小さく手を振る。
「私達は、問題ありません」
いまだガロさんに肩を組まれたままのフェニクスが言う。
「そう言ってくれると思ったぜ、ブラザー・フェニクス!」
「いえ、貴殿と私は兄弟ではありませんが……」
「冷てぇこと言うなよ! あんな熱い喧嘩をしたら、もう兄弟同然だろう!?」
実況で聞いた内容を思い出す。
戦闘中はそれどころではなく意識の隅に留めておいたが、確か――。
ガロさんは爆発の勢いで空中を移動し、フェニクスに超接近戦を挑んだ。
爆発の威力は凄まじく、一度はベーラさんの氷塊の中に閉じ込めたが、それを木っ端微塵にして出てきたほど。
フェニクスは仲間を巻き込むと考え、彼を聖剣で上空へ吹き飛ばし、空中戦へ移行。
この時ガロさんは精霊の加護を宿した手袋でフェニクスの聖剣を受け止めていたので、無傷だった。
精霊の加護があればその形状問わず聖剣と呼ぶけど、手袋の場合はなんだろう。……聖手袋?
一応、ガロさんは 聖拳(せいけん) と言っている。
聖拳で殴られた敵は、冗談みたいな大爆発と共に吹き飛ぶのだ。
ここまで視覚的に分かりやすい敵の打倒もそうない。ガロさんの戦いは高い人気を集めている。
二人の戦いによって空中は爆音が轟き、火炎で彩られた。
最後はガロさん渾身の一撃をフェニクスが正面から防ぎ、そこから炎纏う聖剣でガロさんを斬ったことで決着。
その後はそのまま、レイスパーティーのいる方へ向かったわけだ。
「お気持ちはありがたいですが、兄弟のような友は既にいますので……」
「あ? あぁ! レメか! はっはっは、じゃあまぁいいか!」
フェニクスのやつがそんなことを言うので、みんなの視線が改めて僕に向いてしまった。
僕はパーティーメンバーを見回す。
【白魔導士】ヨスくんと【鉱夫】メラニアさんは緊張しているが、嫌がっている者はいない。
「僕らも参加でお願いします」
「ねーねーガロさん、これ奢り?」
レイスくんが言うと、ガロさんは不機嫌そうに視線を鋭くした。
「子供がくだらんことを気にするんじゃねぇ! そんなもん――あったりまえだろうが!」
そう言ってニカッと笑い、レイスくんの頭を撫でる。
レイスくんも特に抗わない。
子供と侮っているのではないと分かっているからだろう。
「ひゅー、男前ー。うちみんなかなり食べるけど、よろしくね」
「それも当然だ! いるやつ全員が満足出来ねぇ宴なんぞ開く価値はねぇからな! というわけで弟よ、ここにいる全員が楽しめる会場を手配してくれ」
「兄さん、僕のこと過大評価してるよね」
「お前なら出来る! お前にしか出来ない!」
「はぁ……そう言われて頑張っちゃう僕も、かなり単純なやつだなって思うよ」
この街は『初級・始まりのダンジョン』のある街。
タッグトーナメントが開かれたような広い競技場もあるし、色んな種族がいる。
とはいえ、バルバトスパーティーやレイスパーティーの面々を考えるとかなり多種多様。
冒険者は主に 人間(ノーマル) 、魔物は主に亜人。
この基本によって、商業区も棲み分けがなされていることが多い。
で、僕ら 人間(ノーマル) は亜人の通りや店に詳しくないので、こういう時は大変だ。
あ、そうだ。詳しそうな人に聞いてみよう。
と、考えていると。
「そうだ、団長サンも来るだろう? つかお仲間はどうした?」
ガロさんが【正義の天秤】アストレアさんに声を掛けた。
「いや……申し出はありがたいが、我々は――」
「いやいや、分かってるぜ? お堅い騎士のことだ、飲んで騒ぐ暇があったら反省会、違うか?」
「……概ね正しい認識と言える」
「だろう? だからこそ、あんたらは来るべきだ」
「如何なる理由で?」
「そりゃあ簡単なことよ!」
そして、ガロさんは言う。