軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

223◇険悪かつ完璧な連携

アストレアパーティー、フェニクスパーティー、レイスパーティーを除くと、残る選手は数人。

その数人が四人と戦闘中だったのだ。

僕は加勢に向かう。

四人の力が必要ということもあるし、この状況でもやはりポイントは大事だ。

「あぁ!? レメッ!? テメェ何しに来やがった!」

実にらしい挨拶をしてくれたのは【戦士】アルバだ。

彼の声に、戦っている相手達は僕にも意識を割かなくてはならなくなった。

アルバは細身だが引き締まった体に銀の短髪、鋭い目つきが特徴的な魔法剣遣い。

彼は利き手である右腕を負傷しているようで、左手で魔法剣を振るっている。

もしもを想定してそちらも鍛えているのである程度戦えてはいるが、さすがに利き手ほどではない。

「……レメ?」

紺のウェーブ掛かった髪に眠たげな瞳の【聖騎士】ラークは剣を破壊されたのか、使っているのは【狩人】リリーの鉈だ。

盾と組み合わせて使うには刀身が短いので、少しやりづらそうだ。

「…………」

鉈を貸しているリリーはというと、足を負傷しているようでラークに庇われながら矢を放っている。

敵に風魔法を使う者がいて、常に空気が乱されているので彼女の力が活かせない。

「リーダーがいなくとも、これくらいは対処しなくては……」

【氷の勇者】ベーラさんは味方に近い敵に対し氷結を使うのを躊躇っているようだ。仲間を巻き込みかねないからだろう。

【魔法使い】を狙うべきで彼女もそれは分かっている筈だが、【魔法使い】側もそんなことは承知の上。

土の壁で視界を遮った上で、牽制の『風刃』を時折放つ。

ガロパーティーを撃破した時に相当魔力を使ったのか、大規模攻撃で【魔法使い】を倒すことは出来ていない。

勘違いしそうになるが、幼い頃から鍛えられているレイスくんのような子が例外なのであって、普通は【勇者】と言えど魔法をポンポン使えるわけではないのだ。

特に魔力器官は鍛えるのが大変難しいとされている。

育成機関(スクール) 卒業後すぐフェニクスパーティーに入ったベーラさんは、おそらく在学中の三年が鍛錬期間のほぼ全てだろう。

若い魔法使い系みんなが通る、苦労の道だ。

「大丈夫だ! 彼らは優秀だが万全の状態ではない!」

「作戦は機能してる! このままじわじわ削ろう!」

「本当に【黒魔導士】レメが来てるぞ! どうする!?」

「フェニクス以外とは険悪って噂だが……。よし、俺が対応する」

目視出来る敵は四人。

僕に向かってくるのは【聖騎士】の男性だ。

しかしまだパーティーとして機能する人たちが残っているとは……。

見覚えはないが、ここまで残っていて弱いということはあるまい。

彼らの言った通り、フェニクスパーティーの四人は万全の状態ではない。

だからこそ苦戦しているのだが、逆に言えば負傷しているとはいえ四位パーティーに苦戦を強いるだけの力はあるということ。

「実況は聞いていた! いかに優秀な【黒魔導士】といえど、あれだけのポイントを稼いだあとだ、相当な魔力を使っただろう! 今となっては 抵抗(レジスト) を突破出来まい!」

「どうでしょう」

彼は警戒してか、安易には踏み込んでこない。

サポート【 役職(ジョブ) 】が戦闘職と一対一でここまで警戒されるとは……僕の昔の評判からは考えられないことだ。

タッグトーナメント以降、徐々にではあるが見方が変わってきている感がある。

以前のように敵の侮りを利用する……というやり方はどんどん難しくなっていくかもしれない。

それならそれで、敵の警戒を利用するまでなのだが。

僕から魔力が迸り、彼の警戒が高まる。

【聖騎士】は元々魔法耐性があるので、 抵抗(レジスト) も合わせて防ぎきれるとの考えか。

瞬間的に 抵抗(レジスト) 用の魔力を増やしているので、僕の黒魔法を弾きつつ切り込んでくるつもりなのかもしれない。

しかし、その機会は訪れなかった。

「ガッ!?」「なっ……ッ!?」「――――」

間合いの差を生かしてラークを攻め立てていた槍遣いの【戦士】、身軽さを生かしてアルバの伸びる魔法剣を回避し続けていた【軽戦士】。

そして僕と相対していた【聖騎士】。

三人共、ほとんど同時に退場したからだ。

【戦士】はラークに、残る二人はアルバの攻撃によって。

思っていた通り(、、、、、、、) の展開。

「なんだと……!?」

声を裏返らせて驚くのは【魔法使い】だ。

これまで上手く凌いでいた魔法剣、それも利き手と逆での使用だというのに、一撃で二人やられたのだ。驚きもする。

その隙に僕は彼に肉薄。

「くっ」

彼が杖を僕に向ける。

僕は戦闘職ではないので、勘とか風を読んでとか身体能力を活かしてとかそんな回避は中々出来ない。

ただ得意なこともある。

それは、魔力を感じ取ること。

彼が今咄嗟に出すとしたら、先程まで使っていた――『風刃』。

それも慌てているから、細工する暇もなく杖の先から発生させるだろう。実際、そうした。

杖は見えるし魔力は感じられる。

あとはタイミングを計って、大きく横に跳ねる。

「避けたッ!?」

再び魔法を放たれる前に杖を切り、返す刃で彼の胴を薙ぐ。

彼が上半身と下半身で二つに分かれ、向こうに土壁が見えた。

……さすがは聖剣。切れ味が凄まじい。

『相棒次第で、これからもっと凄くなるけどね』

黒ひよこが楽しげな声で言う。

そう、これでもこの聖剣は不完全らしいのだ。

ダークを満足させれば、更なる加護を得られるとかそんな話を前に聞いた。

確かに精霊憑きの聖剣には、未契約ながら精霊の力を使える機能があるようだった。

【騎士王】アーサーさんの、光の聖剣のように。

「油断したな!」

僕が土壁を迂回して四人に近づこうとした瞬間、地面から何者かが飛び出てくる。

蟻の蟲人だ。

ずっと潜んで最適な奇襲タイミングを待っていたのだろう。

「いいえ、していませんよ」

しかし残念なことに、蟲人さんには黒魔法を掛けてある。

地中にいる時から、魔力でどこにいるかは分かっていた。

空間認識力を『混乱』で乱された蟲人さんは、なんと僕と土壁を挟んで向こう側に飛び出してしまった。

同時、リリーによって柔らかい部分を的確に射抜かれて退場。

ニコラさんの蟲人擬態の時にアドバイスしてくれたし、彼女は森に住む種族には詳しいのだ。

「よォ」

魔法剣を元の長さに戻したアルバが、機嫌の悪そうな顔で言う。

「うん」

「……助かりました、レメ」

「いいんだ」

リリーの言葉に笑みを返す。

「アルバが叫んだ時は、馬鹿かと思ったけど」

「私もです。ただアルバ先輩と言えど協力体制に実況で触れられた後で、敵を背後から突かんと迫る救援に声を掛けるなんて愚を犯すわけがないと思い直し、作戦だと気づきました」

「テメェら……」

ラークとベーラさんの言葉に、アルバが青筋を立てる。

「しかしそう考えると上手いですね。アルバの喧嘩腰な態度もあって、敵はまさかレメがアルバをサポートするとは思いもしなかったでしょうし」

僅かではあるが敵パーティー優勢のあの状況は、少しでも早く変えてしまいたかった。

何かがあれば仲間の誰かが更なるダメージを負ったかもしれないし、それが退場に繋がるかもしれない。

あと少し遅かったら、僕の方から声を上げようと思っていたくらいだ。

【聖騎士】が僕に向かってきたことでフェニクスパーティー四人への圧力も減り、敵の残り三人も僕を意識せずにはいられなかっただろう。

実況は情報が得られる点で有用だが、それは相手にとっても同じ。

僕の接近はすぐにでもバレただろうし、アルバの発言は実に彼らしかった。

おかげで【聖騎士】は自分の身を守る方向に意識を注いでくれた。

「……でも、面白いね。アルバもレメも、互いの意を汲んで動いたってことでしょ?」

僕らは移動しながら会話を続ける。

「チッ」

「……まぁ、僕らは仲良しってわけじゃあないけど、勝つために真剣ってのは同じだと思うから」

以前のアルバならともかく、僕がパーティー在籍時にやっていたことをある程度知った彼ならば、上手くやってくれると思った。

ベーラさんの言葉だけでなく、魔王城戦後に僕がレメゲトンだと知ったことからも、無能疑惑は解かれているだろうし。

「……私が誰も落とせなかったのは悔しいですが」

ラークが一人、アルバが二人、リリーが一人に僕が一人で、計五人。

五人組との戦いでは、ベーラさんはポイントを稼げていない。

「ベーラはガロパーティーとの戦いで頑張ってくれましたし、先程もわたくし達を守ってくれたではないですか。ポイントでは計れない貢献です」

リリーがベーラさんをフォローする。

そのリリーは今、僕が背負っていた。

負傷していないラークやベーラさんでも良いのだが、二人にはすぐ動ける状態でいてほしいし。

背中から聞こえるリリーの言葉を微笑ましく思いながらも、そろそろ今後の話を……と思ったところで、アルバからズイッと拳を向けられた。

こう、あれだ。互いの拳を突き合わせるやつだ。

分かるけど、あまりに意外で固まってしまう。

「おい」

「あぁ、うん」

僕が自分の拳をこつんと当てると、アルバは「ふんっ」と鼻を鳴らして顔を逸らしてしまう。

彼の性格からして、過去のことをなかったことにしたりとか、あるいは清算したりだとか、そういうことは考えていないだろう。

そもそも僕自身実力を隠していたのだし、彼は彼の思うことを言っただけだ。

まぁその言い方がだいぶアレだったので、心にグサグサ来たのも事実だけれども。

今更「悪く言ってごめん」「力隠しててごめん」なんて言い合うより、この距離感の方が僕も楽だ。

僕らは仲良しじゃないし、きっとそんな関係にはならない。

けれどかつて仲間だった事実は変わらないし、今となってはアルバも僕の力をある程度認めてくれている。

今回のように協力することもあるかもしれないが、それは勝利のための協調で、馴れ合いではない。

それでいい。

人として好きではなくとも、共に戦うことは出来るし、実力を認めることは出来るし、信じることは出来るのだ。

「……レメの黒魔法が来ると信じて隙の出来る大振りを放ったくせして、『よくやったな』みたいな態度出せるのすごいね」

ラークがそう言い、リリーが「アルバにしては頑張った方でしょう」ベーラさんが「むしろかなりの進歩と言うべきではないでしょうか」と続く。

「うるせぇ! つーかラーク、テメェも同じだろうが!」

「レメを信じたこと? まぁそうだね。実力を知る機会はあったし、前みたいに『いてもいなくても変わらない』なんて、さすがに言えないかな。あぁ、そうだ。さっきは助かったよ、レメ」

ベーラさんも「感謝します」とぺこりと頭を傾けた。

当時から、ラークの意見はアルバと比べると悪意がないというか淡々としていた。

それはリリーも同じ。

リリーの方は脱退後に顔を合わせる機会もあり、前より打ち解けている気がする。

「……そろそろレメさんから状況を聞きましょう」

ベーラさんがそう言い、僕は本題に入る。

話しながら、考える。

フェニクスはガロさんを倒した後、残る四人を仲間に任せてレイスパーティーのいる方向へと向かった。

仲間全員で固まって動いていればガロパーティーの四人や先ほどの五人をもっと早く倒せたかもしれないが、レイスパーティーとアストレアパーティーの削り合いで獲得出来るポイントが減っていたかもしれない。

今のところ、ガロパーティーに関しては全員フェニクスパーティーが撃破、五人組についても僕との分割になってしまったが二十五ポイントは獲得している。

その上レイスパーティーと共闘することになり、五対五対五ではなく十対五へ持っていった。

仲間四人が負傷する事態にはなったものの、選択そのものが間違いとは言えない。

というより、選択の正しさは決めた瞬間ではなく、結果を見てから判断するものではないだろうか。

仲間四人が退場していたら、誤った先行と言われていただろうし。

ここからみんなで協力してアストレアパーティーを倒せたら、協力体制を整える鍵となったなんて言われるかも。

改めて四人の状態を確認し、実況と共に自らの目で戦況を確認。

『残り十五人となりました!!! レイスパーティーとフェニクスパーティーが手を組み、それを迎撃するのはアストレアパーティーです!』

『そしてそしてー、ついにレメ選手と残るフェニクスパーティーが合流しましたよー! これは戦況が大きく動くのではないでしょうかー!』

実況の言うように戦況を大きく動かすため、僕らは行動を開始する。