軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.動画配信②

「うーん、うちに来るつもりなの?」

困惑しかないんだけど。迷惑系ハンターかよ。

ピンポーンとインターホンが鳴る。まさか。

外の画像を見ると、三十路前くらいのとんがり頭の青年の顔が映ってる。髪をツンツン逆立てて、学生服の襟がすごく高いバージョンで、漫画のキャラみたいだ。顔は、普通。

「勇者ですね」

俺の横から覗き込んでる京香さんがつぶやいた。ちょっと嫌そうな顔だ。

「勇者? そういえば書き込みだと勇者豊川ってアカウントだったね」

「最初のユニークスキルが物語の主人公でよくある勇者っぽいからそう名乗ってますね。強さはそこそこで、零士さんより遥かに弱いです」

『ったく、早く出ろよ』

「ガラわる。なんかイライラしてるっぽいから応答しようか。いま行きまーす」

京香さんと玄関に向かう。瀬奈さんは母屋の奥に避難してもらった。妊婦さんは安全第一で。

玄関を開ければ不貞腐れ顔の勇者と背後にはカメラを構えてる女性含めて3人の若い女性。若いといっても瀬奈さんよりは上な感じ。この人らが伴侶さんかな。

「どちら様でしょう」

「あ”? 僕を知らないの?」

「知りませんけど」

いきなりぶしつけすぎて、知りたくもない感じ。チッとか舌打ちしてるし。

「守君」

ちょいちょいと京香さんに肩を指でつんつんされたので振り向けば、スマホの画面を見せられた。勇者の後頭部と俺の横顔が映ってる。なるほど、あのカメラで配信してるのか。

『メイド!?』

『美人すぎる!』

『寺にメイド?』

画面にコメントが流れていく。みんなメイドさん好きだね。

「京香さんは美人だし」

「ふふ、ありがとうございます ご(・) 主(・) 人(・) 様(・) 」

なんてやり取りをすればすごい量の『ご主人様!』コメントが流れていく。京香さん、遊んでるでしょ。

「お前なんなんだよ!」

なんかしらんけど勇者がご立腹だ。いきなり来ていきなりイラついてて、子供か。

「坂場守です。ここ獄楽寺ギルドのギルド長兼ハンターです。今日はお墓のご相談ですか?」

「クソ、話が通じねえ! 僕のこと知らないし、話になんねーよ」

「あー、お帰りはあちらです」

さっさと帰ってどうぞ。

「この……おもてに出ろゴルァ!」

勇者が吠えた。配信の画面では『あしらわれてるw』『勇者の面目丸つぶれw』『メイドさん……キュン♡』というコメントが流れてる。

「面倒な人だね」

【説法】スキルで眠らせた。

玄関で崩れ落ちた勇者を肩に担いで墓地を歩く。女性3人は茫然とした顔で俺の後をついてくる。京香さんは俺の左腕を抱えてご満悦だ。

ダンジョンの階段を下りて勇者を地面に転がす。1階の階段付近なら電波が届くみたいで配信は続いてる。

『瞬殺w』『なにした?』的なコメントが流れ続けてる。『やはり返り討ちですわ』と、たぶんビッチさんだろうコメントもあった。

スキルを解除すると、勇者はすぐに目を覚ました。

「てめぇって、ここはどこだ?」

「うちの墓地ダンジョン。で、あっちにいるのがスケルトン系の魔物」

通路の奥にはゴブリン、ホブゴブ骨に混ざって熊骨とオーガ骨も見える。下の階であふれたのかもしれない。

「魔物! くらえ【ライトニング】!」

がばっと起き上がった勇者は右手を突き出してスキルを使うと、その名の通り青い稲妻が走りゴブリン骨を貫通し、その後ろのホブゴブ骨、熊骨も粉砕した。

電撃のスキルか。なるほど主人公っぽくはある。

勇者はそのあともダンジョンを走り雷撃を撃っては勝鬨を上げ、息を切らせて戻ってきた。

「どうだ、僕の力!」

「さすが私のダーリン!」

「勇者様サイコー!」

「すごーい!!」

勇者が腕を突き上げてどや顔をすると集まった伴侶さんらが黄色い声で囃し立てる。

「何の茶番?」

「彼女らはファンタジーマニアで、わりとガチ目に崇拝しているようです」

「ドン引きだね」

関わりあいたくないタイプだ。

「僕と勝負だ!」

ズビシィって効果音が付きそうなくらいの勢いで俺を指でさしてきた。

「いやです。面倒」

この手の人間は勝とうが負けようが面倒しかない。

「玄関先ですでに勝負はついていますしね、ご主人様」

京香さん、笑顔で煽らなくっても。

「なんだとゴルァ!」

「雑魚に用事はありません。お帰りくださいませ」

「雑魚……僕を雑魚だとぉぉぉ! だとぉぉぉぉ!」

京香さんの煽りに勇者が激高してる。短気だなぁ。

「ぼぼぼ僕にそんな口をきいたお前は、死刑だぁぁ!」

勇者は俺ではなく京香さんに手を向けた。京香さんを抱き寄せ、収納からビニール傘を取り出し開く。

「【ライトニング】!」

勇者が放った青い稲妻はビニール傘にあたって収納された。すごいぞビニール傘!

【収納:ライトニング×1】

やっぱり収納できちゃった。こんなの持っていたくないから返却だ。

「返すよー」

傘からライトニングを出してやれば一直線に勇者に向かう。

「あぎゃぁぁぁぁぁ!!」

勇者にヒット! バリバリバリっとすごい音がして、ピンピンに立たせている髪が煙を吐いてる。

コントかよ。

「クソクソクソクソ! なんでお前ごときが【ライトニング】を使えるんだ! 選ばれし僕だけが使えるはずのスキルだぞぉぉ! 【ライトニング】乱れうちぃぃ!」

勇者は【ライトニング】を打ちまくってくる。こっちは傘を盾に全部収納していく。京香さんは怖がるどころか、「キャーコワーイ(棒)」とかいいつつこれ幸いと笑顔で俺に抱き着いてきた。

「へー、スキルを連続で使えるんだ。これはすごいかも」

「守君、これを」

京香さんがスマホを見せてきた。ちょうど俺と京香さんの後ろ姿とすごい稲光と黒焦げ勇者が映ってる。伴侶の3人は後ろに逃げたらしい。

「傘は草」「ビニール傘最強w」「ライトニング使い現る!?」「京香おねーちゃんずるい!」「あの傘はどこに隠してた?」「配信ってことは加工なしか?」というコメントが流れていく。智らしきコメントもあった。授業はどうした。

「きゃぁぁ!」

「ダーリンやめてぇ!」

「あたしたちがいるのよー!」

どうやら俺の傘から外れたライトニングが後ろにいる伴侶さんらにかすっている様子。可哀そうに。

「勇者じゃなくて愚者の間違いじゃん」

怒りで周りが見えてないし。

「いいですねそれ、書き込みましょう」

京香さんがスマホをポチポチすると『勇者ではなく愚者』とコメントが流れ、『草』『愚者w』『wwww』『メイドさん煽りよるw』『愚者豊川』『ぷぷぷ』と大うけだ。

「なんにせよ、京香さんに悪意を向けた以上ただじゃ帰さない。閻魔様の前に引きずり出さないと」

それと茶番も終わらせよう。

京香さんを抱き寄せたまま勇者に向かって歩く。

「なんだよ、お前なんなんだよ!」

勇者が狂ったように稲妻を飛ばしてくるけどみんな収納する。すでに【収納:ライトニング×30】を超えた。

勇者の目の前に立って睨みつける。お前は許さん。

「ひっぐ、なんだよぼばえば……ふぐぅ……」

攻撃が全く通じないからか、勇者が泣き始めた。なんか俺がいじめてるみたいじゃん。

「こいつから攻撃してきたんだけど、ハンター同士でやりあうとか禁止じゃなかったっけ?」

「原則を言ってしまうと、いさかいがあってもギルドは関与しない立場なので、禁止ではありません」

「こいつのレベルは?」

「21です」

「俺と同じか」

じゃあ簡単には死なないね。

「心をバッキバキに折っても良くって?」

「 はい(イエス) 、 ご主人様(マイマスター) !」

とびっきりの笑顔を浮かべるメイドさんからGOが出ました。京香さんもオコだよね。

傘を放り出して代わりに投げ網を取り出して勇者を網にかける。グイっとひっぱって、そのまま振り上げてヨイショーって感じでドガーンと地面に叩きつける。

「ぐぇぇぇぇ!!」

勇者君の悲鳴が汚い件。

投げ網を収納して、逃げないように勇者の背中を踏みつける。手も足もおかしな方へは曲がってないのでご安心だ。

「俺は仏様のように慈悲深くはないんで」

今度は竹ぼうき(4代目)を取り出し、勇者のけつを叩いて学生服のズボンを収納する。

「いでぇぇぇぇ!!」

もう一回たたいてパンツもだ。

「あぎゃぁぁ!」

ばっちいお尻が丸見えだ。京香さんはすでにそっぽを向いている。

お仕置きだ。

スパンキング!

スパンキング!

「いで、やめ、いやぁぁぁ!!」

泣いてもやめません。

スパンキング!

スパンキング!

「悪い子にはお仕置きだ!」

最後にスパーンと叩く。

「うぎゃふぎゃはぎゃがが!」

なんかよくわからない悲鳴になってる。

お尻はたたかれて真っ赤だし、おちんちんは地面にこすられてこれまた痛いだろうね。容赦しないけど。

仕上げにはスケルトンナイトの剣を出して、うつ伏せ状態の勇者の顔の前に突き刺してあげる。

「うひぃぃ!」

「次に来たらこれを尻の穴にさしてやるぞ」

ザウザクザクと3本追加したらジョワワワって音がして足元からアンモニア臭が漂ってきた。可哀そうだけど見せしめになってもらおう。アホな奴がもう来ないように。

後ろで震えてる伴侶さんたちに振り向くと「ひぃぃぃ!」ってそろった悲鳴を上げた。でもカメラを離さないのは立派だ。

「ポーションあげるからコイツを持ち帰ってくれない?」

勇者の襟をつかんでぽいっと放った。