軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16.勝浦海底ダンジョン実習①

学生が船橋ダンジョンに入れなくなって半月以上たつ。ハンターは入れるようになっているが学生は立ち入り禁止のままだ。

新しくギルド長に昇進した大多喜ギルド長の意向らしく、実習が進まない学校側も困っている。

打開策として同じく千葉県内のダンジョン【勝浦海底ダンジョン】での実習が決まった。

『ハンターコース勝浦遠征』

期間:9/24(水)~9/27(土)(3泊4日)

場所:勝浦海底ダンジョン

宿泊先:弁天荘

費用負担:なし

9/24 AM6時50分集合

AM7時出発、バス移動で現地には10時ころ到着予定

15時まで授業(剣術)、宿泊

9/25 ダンジョンでの実習(終日)、宿泊

9/26 1日自由行動、宿泊

9/27 午前中授業、昼食後に現地出発。16時ころ学校到着、解散

9/29 振り替え休日

持ち物 学校指定ジャージ、着替えタオル類、武具

自由行動時の服装は学校制服とする

実習の様子は録画し保護者会で公開する予定

というパンフレットを智が持ち帰ってきた。夕食のときに見せられたけど。

「こーゆーのって、実家に見せるものじゃない?」

「もうこっちが家だし、お義父さんにも見てほしいし」

伴侶は保護者じゃないよね? あれ、いいのか? わからん。

父さんに渡す。

「ふーむ、父さんはよくわからないけど、これは瀬奈さんと京香さんが動いてたやつだね?」

「そうでーす。勝浦ギルドと交渉した結果、オッケーが出ましたー!」

「がめついギルド長にいろいろ要求されましたがこちらの要求も通しました」

瀬奈さんと京香さんが学校と協力して裏で動いてた案件だ。船橋ギルドも絡んでるとは聞いてる。費用が掛からないのはうちが全部負担したからだ。数百万ならよろこんで出しますよ。智には内緒だけど。

ちなみに、船橋ギルド長はハイエナたちとつながっていた疑惑で失脚したので大多喜さんが新しいギルド長に昇進した。現在悪い奴らを粛正してるけど反発が強いらしく、落ち着くまで学生は入れない方針のようだ。

「ふたりには苦労をかけてすまないね」

「久しぶりに勝浦ギルドの職員とも話ができて楽しかったでーす」

「かわいい後輩たちのためですし」

父さんのねぎらいにもまぶしい笑顔で返してる。俺の奥様たちが素敵すぎる件。

「向こうで何も起きなきゃいいけど。俺はダンジョンがあっていけないし、そうだ零士さんを連れてくとか」

「守、嬢ちゃんがいねえ分俺が巡回しねーとまずいだろ」

「それはそうなんだけど心配で」

何か起きる気がして。心配だなぁ。

「大丈夫だって。それよりも瀬奈おねーちゃんのつわりが始まったんでしょ? 守はおねーちゃんの心配なさい!」

「智ありがとねー。あまりひどくないから大丈夫よー」

そうなんだよ、瀬奈さんのつわりが始まって、何が食べやすいかとか手探り状態なんだ。

「ギルド員の補充も急がないと。心配が多すぎる」

「だいじょうーぶよー。 パ(・) パ(・) はダンジョンの掃除に専念してねー」

「ガンバリマス」

頑張るしかない。

遠征当日。早朝出発なので佐倉は朝の掃除は免除となり、また荷物も多いので車で学校まで送ってもらっていた。まだまだ夏ですでに気温は27℃を超えている。早朝だが普通科で朝練の生徒はもう活動していた。

制服姿の佐倉は汗だくになりながらスーツケースをごろごろ言わせて集合場所の校庭に向かう。

「おはー」

「おはー」

「オハー」

いつメンの四街道と柏はすでに来ていた。集合時刻前だがハンターコースの生徒の半数はいる。ちなみにクラスは全員で30名だが、未だ学校に来ない美浦ら3人を除くので27名の生徒だ。

男子12名、女子15名、担任引率の先生3人がついて総勢30名での遠征だ。

「よーし集合時間だ。みんないるかー?」

おっさん担任が点呼をとる。欠員なし。

「今日から遠征だが、本校初めてとなる遠征には 3(・) ギルドが協力してくださってる。宿舎費用他必要と思われる物資すべて提供を受けている。実習の模様は協力してくださったギルドにも報告されるぞ。無様な姿は見せるなよ。よし、バスに向かう」

引率の先生を先頭に生徒の列が続く。バスに乗り込んだら出発だ。席は自由なのでいつ面が固まる。

「智ー。さっき話があった3ギルドってー、船橋と勝浦とおにーさんとこ?」

「んー、詳しい話はしてくれないんだけど、たぶんそう」

「おにーさんのことだから智には伏せてるんでない? 裏でポーションとかポンポン出してそう」

「やりそうだなー、守ってムッツリだし」

「おーさすが奥様、性癖も把握済みと」

にひひひと笑う四街道。ムキに否定しないのでおちょくりもそこで終わった。

高速を走り渋滞にはまりながらも10時前に宿舎に到着。宿舎から浜辺が見える距離にあり、生徒は海しか見ていない。

「おらーちゅーもーく! 宿舎の方から注意事項があるから聞けー!」

「市船ハンターコースの皆さんこんにちは、弁天荘へようこそいらっしゃいました。管理の松戸といいます。何点か注意があります。毎年でるのですが、お風呂を覗く人がいます。従業員にもハンターがいて気配察知ができますので、発見されるとぼこぼこにされます。やらないように。売店と自動販売機はロビーにしかありません。目の前の海ですがくらげネットをしてありますので、その場所は遊泳可能です」

覗きの件では男子から笑いが、海の件では「おおお!」「水着ねーよ!」とどよめく。まだまだクソ暑いので海に入れれば入りたい。

佐倉は勝浦から聞いていたので水着持参である。企画を出しているのが獄楽寺ギルドなのだから当然だ。

「部屋に荷物を置いたら10時30分から剣術授業だ。遅れるなよー」

休憩したら授業だ。遠征であって遠足ではないのだ。宿舎の前に集合して浜辺へ。

「くじでペアを決めるぞー」

くじの結果、佐倉は寄居とペアになった。黒髪ロング正統派美少女という外見だが佐倉のことを使えないスキル持ちと馬鹿にしているクラスメイトだ。佐倉が落ち込んだのもこいつが原因だった。

運が悪いなーと思う佐倉だがペアは変わるのでそこまで気にしない。いまの佐倉は満ち足りているのだ。

「なんだ、使えないスキル持ちの佐倉さんじゃ訓練にならないじゃない」

寄居は鼻で笑ってわざわざケンカを売ってくる。彼氏が先輩ハンターなことを自慢しているので調子に乗っているのかもしれない。

「はいはい、よろしくね」

佐倉は軽くあしらった。「なにこいつ……」と聞こえてきたが無視だ。佐倉は木剣を手に取り寄居と向き合う。剣は扱いやすい武器なので生徒は全員使うことになっている。

「打ち合って鍔迫り合いだ。腕の力じゃなくて体で押しこめー。はじめ!」

先生の号令で佐倉と寄居は剣を振り回す。

「ハッ!」

気合とともに寄居が振るう剣を佐倉は軽々と受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。ただ、受けた一瞬だけ剣を引いて相手を配慮する。しないと相手が跳ね返されてしまうのだ。佐倉のレベルが突出しているので手を抜くのも大変だ。

手抜きの佐倉と寄居でぐいぐいと剣を押し合う。

「クッ……私に張り合おうなんてこしゃくね!」

「ん?」

寄居の押す圧が急に増した。スキルを使ったようだ。

この手の授業ではスキルの使用は禁止となっている。ケガの原因でもあるし、なにより基礎的な動作を身に着けるためだ。つまり、今の寄居はルール違反だった。

確かこいつのスキルは【怪力】だったはず。なんだかなー。

スキルを使われても佐倉は余裕だ。レベルによるフィジカルの差は大きかった。

「よっと」

「きゃっ」

佐倉が腰を落としてぐっと押し返すと寄居はたたらを踏んでしりもちをついた。寄居はキッと睨んでくる。

「ちゃんと体を鍛えないとスキルが腐るわよ」

佐倉は思わず言ってしまった。

「な、なによそれ!」

「いいから来なさい」

「な、生意気!」

再度剣を打ち合わせ鍔迫り合いに持ち込むが、その度に佐倉が押し返して寄居がしりもちつくの繰り返しだった。

「よーし相手を変えるぞー」

「さて次は誰かな」

佐倉はくじを引きに行く。

「なにあいつ、使えないスキルのくせに!」

佐倉の背中を睨み続ける寄居が憎々しげに呟いた。