軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9.海④

「セットがまだだから、とりあえず海に足をつけてらっしゃい」

「うりゃー」

「いくぞー!」

「とっつげーき!」

佐倉ちゃん以外が海に突撃する。波打ち際でばしゃばしゃ気持ちよさそうだ。何人か転んでびしょぬれになってるけどそれも楽しんでる。

「おにーさん、車の鍵!」

「ロックありがとね。佐倉ちゃんも行ってきなよ」

「こっちの準備がまだでしょ? 手伝うよ。クーラボックスはどこに置くの?」

佐倉ちゃんが手伝ってくれる。ふむ、先ほどの不機嫌さは解消されたようだ。よかったよかった。

「食材関係はこっちのテーブルにまとめちゃおう」

「わかった」

収納してきたおやつなんかも積み上げていく。

「ふぅ、セット完了ーきゅうけーい」

炭酸飲料を開けてサマーベッドに寝っ転がる。海からの風が気持ちいい。ゴキュゴキュと勢いよく飲む。口からこぼれるけど海パンなので問題なし。「おつかれー」と佐倉ちゃんが隣のサマーベッドに座った。

「おにーさん、それちょうだい」

佐倉ちゃんが手を伸ばしてきて俺の飲料を奪いゴキュゴキュ飲んでしまった。口から漏れたのが胸元に垂れてエロすぎる。

「ぷはー、労働後のいっぱいはさいこー」

「俺の炭酸ーってそれ、勝浦さんのまね?」

「そう。一回やってみたくてー」

佐倉ちゃんがにぱっと笑う。

なんだ? 可愛いが過ぎるぞ?

俺を殺す気か?

「さーてと、あたしも海に行こうかなー」

佐倉ちゃんが立ち上がって俺に振り向く。なんかもじもじしてる。

「あああのおにーさん! 水着ほめてくれて、あありがと!」

さ、佐倉ちゃんがデレた!?なんて感動してたら佐倉ちゃんの顔が近付いてきて、ほっぺにチュされた。

「ファッ?」

俺の意識が三千世界に飛んでる一瞬の間に佐倉ちゃんは砂浜を走ってた。

「わーーーーんぎやっ!」

叫びながら海に駆け込んだ佐倉ちゃんに勝浦さんのドロップキックが炸裂した。倒れこむふたりに小湊先生がフライングボディアタックを敢行。3人でバシャバシャ暴れてる。

「宣戦布告ねー!」

「相手に不足なし」

「うにゃー!」

勝浦さんと小湊先生が佐倉ちゃんを担ぎ上げ、海に放り込んだ。だが佐倉ちゃんは空中で一回転し、足から着水。

「「「「「おーーー!」」」」」

ギャラリーからは拍手喝采だ。佐倉ちゃんは海につかりながら腰に手を当て胸を張る。

「若さなら負けません!」

「ぐはっ」

「うぐぐぐ」

効果はバツグンだ。

「みんなでやるわよー!」

「トモ、覚悟シヤガレ!」

「いええええい!」

みなが一斉に飛びかかり、波打ち際はイルカに追い詰められたイワシの群れ状態だ。

「さすがに、あそこにはいけないな」

静観してると砂だらけになった勝浦さんが走ってくる。

「ほらー、ひとりで黄昏てないのー!」

自慢の脚力であっという間に俺の前に来たかと思ったら、担がれた。

俺氏、おなごの肩に担がれたでござる。まさか。

「いっくわよー!」

「や、やめてー」

だだだと運ばれた挙句、力の限りに海に投げられた。

「ひどい目にあった……」

ドザエモンになりかけた守です。

ひとしきり遊んで休憩中なう。うら若き女子たちはみな砂だらけ。男が俺しかいないからか「ガハハ」「ゲラゲラ」と化粧も化けの皮もはがれまくってる。

俺は収納からスチロールの箱を取り出してかき氷の用意だ。でかいスチロールの箱にかき氷機で削った氷が5キロある。食い放題だぜ。

「ものども、かき氷ぞ!」

「「「待ってた!」」」

「氷をよそうのはセルフ! シロップはそこ!」

「「「ラジャー!」」」

JK達の一体感が凄い。大人はすでに飲んでいる。小湊先生は念のため運転できるようにと控えていたけど、そんな遠慮はいりません。「あとでご褒美ください」と言ったらコクコク飲み始めた。勝浦さんは速攻で飲んでたけど。

「うぁぁぁ頭痛きたぁぁ!」

「いったーい! でも食べる!」

「かき氷は つゆ(シロップ) だくで食べるのがいいのよー!」

「パイセン、あーん」

「んむ、冷たくて美味しい」

クソ暑いからかき氷がバカ売れだ。俺も食ってる。サマーベッドに寝転んで贅沢に寝かき氷だ。

「夏はかき氷だな」

口の中で溶かすもよし。ガリガリかみ砕くもよし。溶けるのを待って飲むのもよし。楽しみ方は色々だ。

「はいはいおにーさん、質問です!」

ツインテールの品川さんがかき氷片手に立ち上がる。何だろう。

「おにーさんは三股で女の敵なんですか?」

「ぶっふぉ!」

「もしくは選ぶのは誰なんですか?」

おおう、ブッコンで来たな。俺的には三股の自覚はというか、佐倉ちゃんが参戦してきたのはついさっきぞ。佐倉ちゃん、睨まないで。

「それについては我々が説明しまーす。では講師の小湊先生から説明がありまーす」

「はい、講師の小湊です。気軽に小湊先生とよんでください」

小湊先生が立ち上がるとパチパチと拍手が起きる。なんぞこれ。

「さて、この彼坂場守君ですが、ユニークスキルを持っています。日本には10人のユニークスキル持ちがいますが、守君はその中には入っていません。まだ知られていない逸材です」

説明しながら小湊先生は俺の横に来た。

「ハンターが得るスキルはほとんどがコモンスキルで、まれにレアスキルを覚えます。ではユニークスキルはなぜ存在するのか。ギルドは日々研究をしています」

小湊先生が俺のお腹にもにゅっと乗ってきた。うぉぉぉ、うすうすの水着越しのお尻の柔らかさがあああ。成仏しそうだ。

「スキルは人によって異なりますが、なぜ異なるのか。その人の性格なのか環境なのか考え方なのか。コモンスキルに関しては多すぎるために共通の法則はまだ見つかっていませんが、ユニークスキルに関しては、これではないかという答えをみつけつつあります」

小湊先生が俺を見つめてくる。ドキドキで心臓が分裂しそうだ。

「その答えから導かれたのが、スキルは遺伝するのではないか、という恐ろしい考えです」

小湊先生が俺の胸をつんつんしてくる、俺のどきどきを看破したがごとくピンポイントに。

「守君のスキルは仏教に関するものばかりです。それは、獄楽寺の歴史が関わっているからかと思い、調べました」

うちの寺の歴史?

それなりに古いってことしか知らないなぁ。

「獄楽寺の創建は900年前、平安時代とかなり古いお寺でした」

「そこまで古いの? 古いとは聞いてたけど」

「津波のたびに崩壊しては立て直され、その際にすこしずつ陸側に移動していったらしいです。元々は海を鎮めるための寺だったそうです」

「知らなかった……」

「なんでおにーさんが知らないのよ」

佐倉ちゃんが寄ってきてほっぺを突っついた。

「獄楽とは、良きも悪きも交互にやってくるという意味らしいです。漁は天候に左右されることが多いからと思われます」

「あ、それは聞いてた。漁のこととは知らなかったけど」

そんな歴史が……。

「そんな歴史ある寺の跡継ぎだから、ユニークスキルを得たと考えました」

「うーん、そうすると父さんが【速読】を得たのはなんでだろ」

「お義父さまは入り婿でしたので、代々の血統ではありません」

「あーそうだった。一人娘の母さんが継げないからって父さんが継いだんだった」

「というか、ほとんどの世代で入り婿なようでした。女系な一族のようで、一人息子はかなりレアケースです」

「スキルだけじゃなくて生まれもレアだったのか」

この説があってるかは知らんけど。

「さて、ここまで守君がユニークスキルを得た原因を考察しましたが、本題はここからです」

「ここからの話は、他言無用よー。まだ水面下の話だからねー」

勝浦さんもビール片手に俺の近くに来て、密接するようにサマーベッドを置いた。

「あ、ずるい」

佐倉ちゃんも負けじと反対側にサマーベッドを置いた。

「……トロフィーっすか、俺」

「うーん、どっちかっていうと生贄か実験動物かなー」

「扱いがひどい!」

「ここで先ほどの、ユニークスキルは遺伝するのでは、という話につながります」

「……もしかして、俺って種馬?」

「すでに、モラルの薄いとある大国が体外受精で実験しています」

「うわぁ……」

あそことかあっちとかやりかねないのがもうね。

「ちょ、先輩たちはそれを認めちゃうんですか!」

「そんなわけないでしょー」

「認めない」

突然、勝浦さんのおっぱいで俺の顔がふさがれた。こ、これが伝説のぱふぱふ……あぁ、マシュマロが万華鏡だぁ……

「瀬奈先輩、後輩の前でアウト。佐倉、先輩を引きはがして。あと最後まで話を聞きなさい」

「わかりました、えい!」

勝浦さんがぺりっと引きはがされて隣のサマーベッドにポテンと置かれた。