軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8.首実検と佐倉無双③

そんなことがあってから1週間が経ったけど船橋からの連絡はない。そして、高校生は夏休みに突入して、柏ちゃんと四街道ちゃんが泊まりがけでやってきた。

「おにーさん、お願いがあります!」

「オナシャス」

「お願いします」

やってくるなり頼み事なのだが。

「夏休みの宿題で船橋ダンジョンでの活動、ねえ」

「毎年恒例の宿題ねー」

「知り合いのハンターに同行を頼むのが前提」

「まあ、そうだよね。学生だけは危ないよね。でも勝浦さんじゃないんだ」

俺よりも勝浦さんに頼みたいだろうに。頼んだら勝浦さんなら「まかせてー!」ってウケると思うけどな。

「ギルド職員はだめなのよー」

「手伝い始めるとギルドの手が足りなくなる」

「なるほど。でも俺って立場的にはギルド長なんだけど?」

「個人所有のダンジョンギルドは除外なのー」

「なんたる。まあいいけど」

佐倉ちゃんにはすごく助けてもらってる。体調悪くて起きられなかった時にひとりで掃除してくれたこともあった。しかも寺の墓地まで。働き者の可愛い妹だ。

「さっそく明日行きたい!」

「イクイク!」

「宿題は早く終わらせて勝浦先輩と遊びたい!」

「ソレナ!」

「海に行きたーい!」

欲望に正直な子たちだことで。叶えてやらねば。

と言うことで、東金でレンタカーを借りて船橋へ。朝は混みそうなので昼ちょい前くらいを選んだ。

ギルドの入り口を通り、受付を素通りする。お化粧バッチリのお局様ふたりはいたが先日の男はいなかった。

「ケバ」

「年を考えろって感じ」

「肌見るとばれるのにね」

ぼそっと聞こえた。いまどきの高校生は怖いよー。俺も影でぼろくそ言われてるんだろうなー。帰ったら小湊先生に甘えてやるんだ。

そういえば、彼女たちはうっすら化粧をしてる。問いただしたら勝浦さんと小湊先生に教えてもらってるんだとか。若さと色気が混在してて危うい感じ。

だべりながら地下へ向かい、ダンジョンの入り口がある待合所に到着。人がやたら多い。

「やっぱ考えることはみんな同じかー」

「市船のハンターコ-スばっかりじゃん」

「ウッザ」

待合所にいるのは夏休みに入ったすぐの市船の生徒だった。学校のジャージを着ているのがそうだろう。うちの3人もそうだ。俺はいつもの作務衣ぞ。

この時期は一斉にダンジョンに来るので学生だとわかるようにジャージ着用が義務とのこと。年上のハンターと打ち合わせをしているので、おそらく宿題だ。うちもそうなんだけどね。

「ゲッ」

「うわぁ」

「いやがる」

そんななか、うちの子たちがげんなりした顔になった。視線の先には、男子生徒の集団がいた。

「金髪にロン毛はまあいいとして、モヒカンがいるのは凄いな」

どこの部族だろう。

向こうも気がついたらしく、身体を揺らしながら歩いてくる。船橋のハンターはガラが悪すぎやしませんか?

「よぉ、お前らも来たのか」

「さえなさそうなオッサンだな」

「俺の方が頼りになるぜ?」

金髪くんが顔を傾けてヤンキーの如く俺を睨んできた。ほうほう、わかりやすく喧嘩を売られたぞ?

うちの子たちが嫌そうな顔してるから俺が護らねば。

「俺は二十歳なんで君らと大して変わらないし、むしろ君の方が年上に見えるくらい老けてるけど?」

「オメーには聞いてねえよ」

「日本語がわからないタイプかー」

「んだとゴルァ!」

あっさり胸ぐらに手を伸ばしてきたんで、身体を捻って避けて足払いをしてあげる。そしたら彼はすってんころりんしてべしゃって顔から床にダイブした。

「うわー、こわー! いまどきの高校生こわー」

「プッ」

「だっさ」

「プププ」

はい君たち、もう少し隠してあげなさい。

俺ってばレベルが上がってるので動体視力も上がってるっぽいんだよねー。視力も2.0になってたぜ。

「くっそがぁぁ!」

金髪君ががばっと起き上がった。額と鼻を打ったんだろう、赤くなってる。

「暴力はんたーい。ですよねー大多喜さん」

「騒がしいやつがいたと思ったらアンタかい」

「どーもお世話になってます」

いつの間にか大多喜さんが金髪君の背後にいた。見もしないで俺を見つけたりいつの間にか目の前にいたりと、この人も大概やべー人でしょ。

「はいはい学生諸君、よーくお聞き! ハンター同士のけんかはご法度だよ! 見つけたら学校へ報告するからね。こっちは君たちを 全(・) 員(・) 把(・) 握(・) し(・) て(・) る(・) からね。大人をなめたら痛い目に合うって覚えな!」

大多喜さんの声が待合所にこだまする。スピーカーからも聞こえたから、どっかにマイクを仕込んでるな。

「チッ、命拾いしたな」

金髪君は捨て台詞を置いて戻っていった。戻っていった先にはロン毛とモヒカンがいる。船橋の先住民族かもしれない。九十九里の漁師みたいな感じの。

「おにーさんやるねー」

「パイセンの推しだけはある」

「ちょっと、カッコよかったです」

慰労の言葉をいただきました。思わず合掌。

そんなトラブルがあったのでさっさとダンジョンに入ってしまおう。手をつないでパーティを組む。

「リーダーは智ね」

「前衛が美奈、真ん中に葉子であたしが殿」

「警戒はアーシにマカセロー」

「で、俺が後からついていくと」

今日の俺の役目は監視だ。

船橋ダンジョンはダンジョンランクが2で1階が難易度2、2階が難易度4に相当するらしい。難易度がハンターランク内で収まっていれば対応可能だと判断する。夏休みの宿題は1階での活動なので、最低でもレベル9の3人にとって問題はない。

「「「増長しない!」」」

3人が唱和した。勝浦さんと小湊先生にこっぴどく言われていることだ。彼女たちは明らかにクラスメイトよりもレベルが高く、魔法まで覚えてしまっているので、大人として、先輩ハンターとしての教育である。

ちなみに、増長したら出禁らしく、勝浦さんに会いたい四街道ちゃんと小湊先生を神とあがめる柏ちゃんは必死だ。

俺も心に刻まねば。増長よくない。

「じゃあいくよ!」

「レッツゴー」

「おなかすいたなー」

増長はしてないけど緊張感が失われてるぞ?

ゲートを通り階段を下りると草原だ。ちらほらジャージ姿がいる。階段に近いほうが安全だからか。

「うちらは遠く行こうか」

「だね。このあたりじゃ魔物の取り合いになっちゃうし」

「イックゼー」

3人が話し合いで決めた。階段から離れる方へずんずか歩いていく。船橋ダンジョンは1フロアが広くて、遠いところだと階段から10キロくらいあるらしい。景色がずっと草原だから遭難しかねない。うちの墓場ダンジョンは安心設計だね。

のんびり歩いていくが魔物が出ない。

「なんか魔物が出ないけど、普通のダンジョンってこんな感じなの?」

うちの墓地ダンジョンは階段を下りたらまず骨が見えるからね。

「おにーさん、これが普通だよ。寺のダンジョンがあり得ないだけ」

「2階で絶望的な魔物が出るほうがオカシイ」

「だからレベルってなかなか上がらないんですよ、普通は」

「初めて知った事実! イヤーうちのダンジョンはひどいんだね」

俺だって何回か死にかけてるしね。

こんな会話をしてても魔物に遭遇しない。そして暇なので後ろからついてくる存在に気がつく。階段を下りてからずっとだから、偶然じゃない。

「佐倉ちゃん、後ろからつけてきてるのがいるけど、もしかしてあの金髪とかモヒカンとか?」

「あー、あの3バカがつけてきてるのか」

「キショ」

「うわー、クラスメイトにストーキングとかありえない」

散々な言われようだけど、俺も納得だ。

「まーたあたしにつっかかってくるつもりなんだろーなー」

「ボコすか」

「……じゃあもっと人気のないところに誘導しちゃおっか」

あれ、増長しないんじゃないの?

まぁでも放置したら犯罪を起こしそうなやつではあるな。死んだら餓鬼道にまっしぐらだろう。

ただし、この子たちに被害が及ぶなら別だ。護らねばならぬのだよ。子を守るのは地蔵菩薩だけど、実行のためなら明王にもなるぞ。

方針が決まったので、どんどん遠くを目指して歩く。