軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

52.ダンジョン踏破が流行り?②

四国のクラン【ガシャ髑髏】によるダンジョン踏破は夜のニュースでも流れた。 死(・) 傷(・) 者(・) 24名と女性アナウンサーが語る。

死者数を隠したな。

『ダンジョン踏破という名誉を求めた結果は惨憺たるものでした』

アナウンサーが悲痛な顔をする。

『名誉のためになんて馬鹿げてると思いますよ』

『ダンジョンは危険な場所なんですね』

『死んだらだめでしょ』

街頭インタビューが流される。みなマイクに向かって流ちょうに語っている。

『ダンジョンなんて海外の専門家に任せればいいんですよ』

『海外の方が進んでますからね』

『国内のハンターはだらしないですねぇ』

『政府の動きはいつも遅いですよね』

『ダンジョンは危険な場所です。ギルドが管理していないダンジョンを見つけた場合は、最寄りの警察に伝えましょう』

ダンジョンの危険性を強調してこのニュースは終わった。違和感が残る。

「海外の専門家に任せるって、要はダンジョンの利益を海外に売り払うってこと?」

魔石はもちろんだけど、メインはドロップ品だよね。ポーションばかりに目が行くけど、魔法書とスキル書。それに各種ドロップ品。二束三文だけど鉄も出るわけで。しかも精錬された後のがね。量があれば鉄鉱石の輸入も減るよね?

こんなのを外国に売ったら大損害じゃん。

「ダンジョンは危険だという印象を植え付けてる気もします。メディアに外国の手が入ってのかもしれませんね」

京香さんがささやく。

デッセン&リーファーカンパニーとか?

あそこのリストにあったコモンスキルの書が頭をちらつくんだよね。どうやって手に入れてるんだって。

雲行きが怪しいなと感じつつも何もすることはできない。悶々としつつ日々を過ごした。

その後も踏破を試みるパーティが出てきた。みなランク1のダンジョンばかりだけど、舐めちゃいけないんだ。

成功も失敗もあった。成功しても亡くなった人は出る。

踏破したダンジョンかは不明だけど、各地に新しいダンジョンが出現して問題になってて、さらにメディア本社の玄関前にダンジョンが出現した。

『ハンターが無秩序にダンジョンを踏破するからだ!』

怒るメディアはテレビや雑誌で吠えてる。ただ、ハンターを馬鹿にするような発言をしているのでダンジョン管理を助けるハンターは出てこない。

当たり前だよね。

自分たちで踏破を試みるも大失敗で社員に相当の犠牲を出して終わった。

『こんな状況を作り出したのは獄楽寺が踏破をしだしたからだ!』

『我々は被害者だ!』

『獄楽寺が責任をもって対処すべきだ!』

こんなことを言い出した。

なんかうちに喧嘩を売ってきたぞ?

坊主憎けりゃ袈裟まで憎いをリアルでやってきたぞ?

「うちに言われてもねぇ。俺が他のハンターに対してあれこれ言う権利なんてないし」

踏破するもしないも決めるのはハンターだ。それに、うちはハンターの育成してるんだけど?

【Aチーム】と【ポニー】ならランク1のダンジョンは踏破できちゃうと思うよ。

「守がやってるとこ見て目立っててうらやましいとか思ったんじゃない?」

一緒にテレビを見てた智に言われた。

「目立ってる? 俺が?」

まさかこんなモブが?

モブオブモブぞ?

「守が【作務衣】って呼ばれてるの、知らない?」

「ご存じありませんけど?」

作務衣て。俺がこれしか着てないかのようじゃん!

その通りだよ!

いいやろがい!

「俺ってインチキって言われてるじゃん?」

「日比谷ダンジョンを踏破して無くしたじゃない? あれから空気が変わってきてたわよ。佐渡での配信がとどめね」

そんなもんかなぁ。

「兄貴は結構リスペクトされてるぜ!」

タオルの山を持った京子ちゃんが走り際にそんなことを言う。長い金髪に三角巾が似合ってて、すっかりお手伝いさんが板についた。そのままうちに就職してほしい。

「遺体に向かって『遅れました。すみません』ってうなだれてたのが配信されてるからね。あたしはリアルタイムでは見れてないけど、作務衣は悪くないってコメントは多かったわよ」

「そっか……」

俺がやってたことがまっとうに見られてるならそれはうれしいことだ。でもうぬぼれは厳禁。増長しない、は大事。俺は俺のできることを頑張ろう。

「俺の真似でダンジョン踏破は目指さないでほしいかな。そこからダンジョンが消えるだけで無くなるわけじゃないから」

実際に各地で新しく出現しちゃってるし。個人宅にできちゃったらもう大変だよ。

『最近の無謀なダンジョンへの挑戦について、防衛省としては憂慮している』

『まだ総務省管轄であり、防衛省の意見はわが総務省への攻撃に他ならない』

政府は政府で揉め始めた。雲行きが怪しい。

俺たちはダンジョン譲受は続けるけど踏破についてはスルーを決めた。なんとなくだけど、巻き込まれてはいけないと感じたからね。

「世の中が騒々しいけど時間は経過するんだよねー」

5月に入り、世間様はゴールデンウィークでにぎやかだ。うちはというと。

瀬奈さんの出産日が決まった。5月15日だ。妊娠37週で理想の期間とのことなので即決したさ。

今日が5月の連休はじめなので2週間後になる。

「緊張してきたちゃったー」

ほわほわ奥様が頬に手を当ててそんなことを言う。表情は穏やかだけど不安だよね。明日から毎朝父さんが安産祈願の祈祷をする予定だ。俺も一緒にね。

性別はわかってて、両方とも男の子だ。名前もいくつか候補はある。

「市船のハンターコースの子たちが来る日と重なっちゃってごめんねー」

「瀬奈さんが最優先なので気にしないで」

そう。ハンターコースの獄楽寺遠征が5月の半ばに予定されてる。こっちも大事だけど、俺にとっては瀬奈さんが大事。

「大丈夫ですよ、俺らがいるし」

「わたしらもいますし」

ヒヨコたちの引率は【Aチーム】と【ポニー】が引き受けてくれた。博多から帰ってきて、よりたくましくなった気がする。

昨年のハン祭で大暴れしてるし、佐渡での活躍もあって後輩たちからは憧れの先輩になってるみたいだし。智らもみな寺にいてくれるので。安心だ。

明るい見通しでホッとしてるなか、佐渡島の件で防衛省から感謝状を贈りたいと連絡があった。