軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

51.佐渡島ダンジョン踏破の影響①

佐渡から帰ってきた翌日。快晴で空気も澄んでて、すがすがしい朝だ。

日課の墓地ダンジョンのお掃除を終わらせて食堂へ行くと、さっぱりした顔のAチームの面々がいた。

ジャージ姿で、ストレッチなんかしてる。

「あんたたち、ずいぶんはやくない?」

智もびっくりだ。

まだ6時前。いつもならまだお布団にいるはずだし、昨日は大変だったから今日はみんなでお休みにしたよね?

「おはようございまーす!」

「早く目が覚めちゃったんで!」

「ちょっと走ってきます!」

「海を見てきまーす!」

「いっくぜー!」

5人はそんなことを言って出て行った。昨晩のショックは後を引かないで済んだように見えるけど心配だ。このまま行方不明とか、ないよね? ね?

守の心配をよそに、Aチームの5人は畑を眺めながら農道を走っていく。地元のブランドである玉ねぎが土の上に顔を出しつつあり、収穫もすぐだ。

夜明けも近く、空は藍色から青に変わり始めていた。冷えた空気が火照った体を引き締めてくれる。

「昨日のあれって、夢じゃねえよなぁ?」

先頭を走る市原が声を上げる。車にひかれないように縦に並ぶのは鉄則だ。

「わかんねー!」

「実感がねー!」

千葉と野田が叫んだ。偽りなき叫びだ。

「誰も動じてねーんだよなー」

「それな!」

一宮と館山も叫んだ。ポニーの4人がフリーズしていたのは彼らも見ているので、これはギルドの中心メンバーについてだ。

「師匠は、謎ではあったけどさ!」

「よく『ガキの頃は』とか言うもんな!」

「四街道に聞くかー?」

「素直に答えるとは思えねー」

「それな!」

5人はそれなりの速さでジョギングしているが、余裕そうな顔で声を発している。たまにすれ違うトラクターのおじいさんが「せいがでるのー」と手を振ってくるので笑顔で「おはよーございまーす!」と返す余力すらある。

Aチームが毎日のようにジョギングする姿は集落で認知されており、実はパトロールにもなっていた。気の良い若い ハンター(暴力装置) が集団でうろうろしているような土地に悪意は来ないものだ。道で年寄りが倒れていたら救助もするだろう。そんな期待もある。

Aチームの存在が寺の評判を上げているのだが、彼らはそんなことは知らない。

「あのでたらめな強さがな!」

「那覇さんも敬語だし!」

「体がちっちゃくなるし」

「意味わかんねー」

「それな!」

館山は「それな!」しか言っていない。

5人は海岸の有料道路をくぐり、砂浜へ出る。太平洋からの風は強く波も荒い。

額に汗を輝かせながら、5人は浜辺に並ぶ。ちょうど太陽が昇ってきた。まぶしさに目を細める。

「まぁ、夢でもいいけど。昨夜のあれは忘れねー」

館山がつぶやく。

夢だとしても、あの長篠零士に褒められ慰められたのだ。彼は死んだはずなので、夢でもおかしくない。

「俺は、夢でも夢じゃなくってもどっちでもいいかな。とにかく、もっと鍛えてもらいてぇ」

千葉が声を上げる。

師匠の言いつけ通り鍛えたら彼女ができた。頑丈な鉄の扉を斬れた。人を助けることができた。やればできるんだと実感した。

努力はしたが、師匠の指導あってのものだ。

「それな。なんか社会に慣れるまでねって感じでクランにいるけどさ。俺、出ていく気はねーぞ?」

「出て行くとかいうやつ、いねーよなー?」

市原の決意に野田が茶化しを入れる。5人とも言葉には出さないが「ねーな」と思っていた。

「師匠が寺にいる理由がわかれば何かしたいけど、俺らじゃ足りねーかな……」

一宮が悔しそうに口を曲げる。

飛びぬけた素質があるわけでもない平凡な自分たちを鍛えてくれた恩を返せないのは悔しい。

「諦めねーでやれることやろーぜ。やる気が大事だって聞くしな」

「それな」

「で、俺らに何ができる?」

「それを探すんだろ?」

「「「「それな!」」」」

結論が出たらしい。5人の顔は賢者タイムのように晴れ晴れしている。

「頭がよろしくねー俺らが考えてもな!」

「なんとかなんだろ!の精神が大事だな!」

「為せば成るって叫んで佐倉は闘刃をぶった斬ったし!」

「ともかく努力するぜ!」

「「「「「しゃーッ!!」」」」」

5人は腕を突き上げた。

Aチームがそんな青春をしていたころ、その零士は美奈子と寺の本堂で座禅をしていた。心の平静を保つ毎日の鍛錬だ。最初はひとりでやっていたが、いつの間にやら美奈子も一緒にやるようになっていた。

無心だった零士だが、妙な体の疼きを覚えた。疼きは首から始まり背中とお腹を経由して腰に達した。

「む、なんだこれは」

零士が目を開いて腰をひねった瞬間、零士の上半身を構成していた甲冑が粉になって落ちた。ムキムキの雄っぱいと見事な腹筋が露わになる。

「ん?」

零士は自らの体を確認する。バッキバキの腹筋が見えていた。なお、中学生ほど形態である。

「何が起きた? っ美奈子!?」

零士が横にいるはずの美奈子を探すと、彼女は本堂に突っ伏して「師匠の裸……しゅごい」と鼻血を出して悶えていた。

「おい美奈子、大丈夫か!」

自身よりも美奈子が大事。零士は美奈子を抱き起す。

「ふぁぁぁぁぁ」

美奈子は満足げな笑みを浮かべたまま気を失った。あまりお見せできない顔だ。

だがそんな顔を見たことがない零士は焦るしかなかった。

「おい美奈子! チッ、俺じゃどうしようもねえ」

零士は美奈子を抱きかかえたまま寮へ走った。

寺が上へ下への大騒ぎになるまであと5分。