軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43.札幌ダンジョンと四街道の課題⑧

「はー、メンドイやつはどこにでもいるのねー」

「相手するだけ智はヤサシーゾー」

愚痴をこぼす佐倉を柏が慰める。柏も成長しているのだ。そんな柏が眼鏡型カメラをつけている。

眼鏡があっけただけでちょっと賢そうに見えるし兄の葉介が「可愛いね可愛いね」と絶賛していたので柏は気に入っていた。

「性懲りもなく跡をつけてるわね」

四街道が横を向き視線だけ背後に向ける。遠くにあのラーメン3兄弟の姿がある。

「ほんっっっっとにしつこい!」

「燃やすカ?」

「それはまだ早いわ」

早い遅いだけで燃やすのは決定されていた。合掌。

だいたいこの手の迷惑野郎は安全地帯から手を出す卑怯者なのできっちり落とし前をつけないとつけあがるのだ。閻魔大王の気分で断罪すべし。

「雪ウサギがイタゾー」

柏がクロスボウを雪原に向けている。はるか先に赤い点が見えた。おおよそ300メート先だろうか。

「あんな遠くても見えるんだ」

「……見えるのはおかしくない?」

佐倉は平常運転だが四街道の本能が違和感を訴えている。あれは 極(・) 上(・) の(・) 獲(・) 物(・) だと。

『ギィィィィィ!!』

トイレの個室の扉がきしんだような音が雪原に響く。同時に巨大なかまくらが立ち上がった。その周囲では白い小さな何かが蠢いている。

「でっかい雪ウサギ!」

「オーーーデケー!」

「周りにいるのは雪ウサギかしら。狩り甲斐があるわね」

誰とは言わないが約一名が好戦的である。

「えっと、あの魔物は」

佐倉がメモを調べている。待合場で事前に調べていた資料だ。

「雪ウサキングだって! かなりレアな魔物!」

「サハギンダインみたいなやつかしらね」

「キングってことは、王様ダゼー!」

雪ウサキングとは体長が5メートルもある巨大な雪ウサギで、雪ウサギの群れを率いているレアな魔物だ。群れはおおよそ40~70体にもおよび、ランク1の魔物とはいえ数で圧倒する戦い方をする。そして【王】個体が指揮することで雪ウサギの能力も上がっていた。

1階を主な狩場とするレベルが低いハンターにとっては荷が重い相手だ。

「サハギンダインもレアなドロップ品があったからあいつも何か落とすかも!」

「ツカマエッカ?」

「魔物って気絶するのかしら」

3人に緊張感がない。倒すことは前提で、その上を検討していた。

「おい、お前ら。あれは雪ウサキングだ!」

「雪ウサギも50体はいるぞ!」

「早く逃げないと!」

ストーキングしていたラーメン3兄弟が駆けてきた。人の心のかけらくらいはあったようだ。

「ご親切はありがたいけど、こんな珍しい機会を見過ごすわけないでしょ!」

「ヤルゼー!」

「巻き添え食いたくなかったら逃げてなさい」

佐倉は金剛杖を。柏はクロスボウを。四街道は【裁き】と【白鶴】を。それぞれ構える。

「でかウサギは確保したい」

「じゃー【カース】で足止めすッカ」

佐倉の要望に柏が答え、クロスボウを雪ウサキングに向けた。

「おらイケー!」

クロスボウから放たれた矢は【増速】スキルで加速され、あっという間に雪ウサキングの頭上に到達する。その矢を追いかけるように佐倉と四街道が駆けた。

佐倉はステータスの暴力で、四街道は【健脚】スキルで雪の上を走っていく。【飛翔】スキルは忘れられているようだ。

「【カース】」

柏が叫ぶと矢から放たれた【カース】が雪ウサキングと周囲の雪ウサギに降りかかる。

『ギ・ィ・ィ・ィ・ィ』

咆哮すらも遅くなった雪ウサキングに佐倉が跳躍する。

「うりゃぁぁ!」

おおよそ乙女とはいいがたい雄たけびを上げた佐倉が雪ウサキングの背中に飛び乗った。すぐさま長い耳をつかみ振り落とされないようにした。

『ギ・ギ・ギ・ギ!』

雪ウサキングは緩慢な動きながら佐倉を振り落とそうと身をよじる。

「落とせるもんなら落としてみなさい!【カース】!」

追い打ちの【カース】をぶちこんだ佐倉は【盗人】スキルを繰り返し念じた。

【盗人】【盗人】【盗人】【盗人】【盗人】【盗人】【盗人】【盗人】【盗人】【盗人】…………

レアドロップ品だろうし、何回もチャレンジしないと落ちないよね!という理論である。昨日の教訓は生きていないようだ。

『ギ・・・・・・』

もはや首を振ることすらできないでいる雪ウサキング。その周囲では四街道が大暴れしていた。

「雪に足を取られる具合がちょうどいい訓練だわ!」

嬉しそうに【裁き】と【白鶴】を振るい雪ウサギを魔石に変えていく。柏も駆けつけながらぶん投げた ホーミングの矢(ファンネル) から放出する【サンダー】の魔法と【炎の息吹】で蹂躙していた。

「す、すげぇ……」

「カッコいい!」

「ボッコボコだ」

ラーメン3兄弟は遠くで繰り広げられている惨劇を呆然と眺めていた。自分たちの実力との差が歴然だったが悔しい思いはなく、ただただ見とれている。

「よっし落ちた! 拾って!」

ほぼ動けずにいる雪ウサキングの足元に真っ白で丸いふわふわが落ちた。間違いなくドロップ品だ。

「任セロー!」

到着した柏がさっと拾い上げる。これで用済みだ。

「美奈!」

叫んだ佐倉が雪ウサキングから飛び降りた。

「往生!」

突貫してきた四街道が2刀を振るう。雪ウサキングはバッテンに斬られて魔石に変わった。これで全滅だ。

「手ごたえがないわね」

「お、なんか落ちてるゼー」

何かを見つけた柏がわっしゃわっしゃと雪をかき分け、雪に埋もれた何かをつまみ上げた。

「ラビットフットじゃネ?」

「そうみたいね」

「もしかして、わたしたちがつけてるからドロップした?」

「よし、探そう!」

「ラジャー!」

3人で手分けして探すと、ラビットフットが5個見つかった。

「ドロップ品は初めてダゼ!」

「わたしも初めてかも」

雪ウサギを倒したのは柏と四街道なので、ふたりで間違いない。興奮で目が輝いている。

「墓地ダンジョンでもドロップするかしら?」

「アーシもポーションゲットできル?」

四街道と柏が持っていたラビットフットをポケットから取り出す。

「だとしたら、これから向かうダンジョンでもドロップ品がゲットできちゃうじゃん!」

「ヤッター!」

「ふふ、これでわたしもギルドに恩返しができそうね」

「恩返し! よーし、アーシもガンバルゾー!」

「「「おー!」」」

3人は元気よく腕を突き上げた。

ということを嬉しそうに報告した3人だったが。

「魔物に乗っかるのはちょっとーどうかと思うわよー」

「智が強いのはわかりますが迂闊すぎます」

瀬奈と京香にお小言をもらって正座していたのだった。

翌日、札幌観光をたっぷり楽しんだ3人は、またフェリーに乗って帰路に就いた。3人揃って甲板に出ていた。寒さで顔が凍りそうだ。

「楽しかったねー」

「ラーメンもおいしかったし」

「羊の肉は初めて食べたゼ!」

食の思い出しかないのか。お土産もお菓子がいっぱいだった。

「次はどこだっけ」

「仙台でしょ」

「このまま行かねーノ?」

「2週間に1回は登校しなきゃ、でしょ?」

「めんどクサー」

「師匠にお土産渡さないと」

「スケ兄に渡すゾ!」

この3人ならどこにでも行ける気がしてくる。

「よーし、次も頑張るぞ!」

「「「おー!」」」

ちょっと怒られたけど、実りある遠征だったと、甲板で風を受けながら、智はそう思った。