軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43.札幌ダンジョンと四街道の課題⑤

案内役の6人をゲットした3人はゲートを通りダンジョンに入った。階段を駆け上がる冷気の中を進む。

「おーーーー!」

「真っ白ダゼー!」

「きれいねー!」

階段を降りた先は雪原になっていて、しかも足跡が一つもない新雪だ。3人の前に多数のハンターが入ったはずだが痕跡はない。空は快晴だがびゅおおおおという寂し気な風の音がこだまする雪原が広がっていた。

「札幌ダンジョンは雪ダンジョンなんだけど、足跡とか1分で復旧されちゃうんだ」

名寄が説明する。

「足跡が消えちゃうのは怖いね。何かあってもわからないってことでしょ?」

四街道が周囲を見渡すが足跡はどこにも見られない。ちなみの彼女はいまカメラ付き眼鏡をつけている。正統派爆乳優等生の装いだ。

ダンジョン内で襲われても犯人の痕跡がわからないばかりか、待ち伏せもわからない。始末した亡骸は雪に埋めてしまえばいい。犯罪にはもってこいだ。

「こっそり死刑執行場になってるって噂もあってね」

「そんな怖いうわさは聞きたくなかったー」

佐倉はうえーと舌を出す。十分あり得るのだ。

船橋で佐倉らを襲った輩の消息は不明だ。同級生の3馬鹿は特別少年院に送られたと風のうわさで聞いたが真実かは定かではない。

「まー噂だしねーってあ、雪玉だ!」

名寄が空を指さした。釣られた佐倉が指の先を探せば、快晴にふわふわ浮かぶ雪の玉を見つけた。空に浮かぶ飴玉のようだ。

「おいしそう」

「いや魔物だし」

佐倉がふっとしたつぶやきに突っ込みが入る。名寄はノリがいい。

「雪玉っていうのは空中を漂う雪をまとったクラゲで、魔物のくせに繊細過ぎて近くを剣で振るうだけで死んじゃう」

「箱入り娘すぎん?」

佐倉の突っ込みも「だってそうなんだから」と突き返された。

「勝浦の空クラゲと同じカー?」

柏がクロスボウを構えていた。シュパっと放たれた矢は急角度で上昇し、雪玉の隣で静止した。

「コレクライ?」

柏は矢を操り、雪玉つんつんさせている。これ位なら壊れないようだと理解した柏はそのまま雪玉が手元に来るように矢で突っつき続ける。

「なんだあれ……」

「さすがトリックスターだ」

もはや突っ込みもない。柏は手元まで運ばれてきた雪玉をそっとつかんだ。

「トッタドー!」

ニパっと笑顔になる。「おいおいまじかよ」とどよめく札幌東の生徒。もちろんその様子は四街道によって録画されていた。

「葉子すごい」

「魔物を触るのはコケケケ以来ね」

佐倉も四街道も柏が持っている雪玉にそっと触れる。雪なので指先が冷たい。

「雪の中はどうなっテル?」

柏が優しく雪を払っていくと、カチコチに固まったクラゲが出てきた。クラゲだが色合いはさながら冷凍イカだ。

「すげぇ、初めて見た」

「本当にクラゲじゃん」

「ギルドの記録にもなかったよね」

そうらしい。

わざわざ魔物を捕まえて調べようとするハンターがいないのだ。その時間で魔物を倒したほうが儲かるまである。時間がある 学(・) 生(・) だ(・) か(・) ら(・) できることだ。

「へー。じゃいろいろ調べたら課題に書けるじゃん」

「早速測りましょ」

佐倉の提案に四街道がメジャーで大きさを測る。

「縦横同じで15センチね。直径も15センチだ」

「胴回りって言っていいのかな。周囲が47センチと」

佐倉と四街道がメジャーで計測する数値を、札幌東の生徒もメモっていく。

「このままで浮くカナ?」

柏が手を離すと雪玉ならぬクラゲは逃げるように雪原に飛び込み、雪を体につけて浮かび上がる。そしてまた柏につかまった。

「雪をつけてないと落ち着かないのかな?」

「身を守る鎧にしてはもろいわね」

「雪をつけてないと死んじゃうとか?」

「どう思う?」

四街道は札幌東の6人に水を向けた。彼らも巻き込んでしまえ。

みなであーでもないこーでもないと意見を出していく。日頃見ている 地元勢(ジモティ) は『寒いから説』を提唱している。そんな馬鹿なという意見でもありうるのが魔物という存在だ。馬鹿にしてはいけない。

柏は議論には加わらず、雪玉の雪を除去していた。

「ア」

そんな議論をしている間に、雪玉は魔石になって消えてしまった。柏は強くたたいたりつかんだりしていない。優しくつかんで雪を払っていただけだ。

「このデータを京香さんに伝えましょ」

「うん。パイセンならわかってくれるハズ」

やれるだけはやるが追加で調べるのは大人に丸投げである。

「先へ行こうかー」

「あっちが割と平坦で歩きやすいよ!」

ジモティのお勧めに従う。実はこの雪原は緩やかな斜面が多く、歩く距離以上に疲労するのだ。

雪原を歩き始めた一行だが、雪の経験の薄い3人は歩きにくそうだ。それでもジモティに遅れることなくついていくのはレベルによるフィジカルブーストだ。

「雪ウサギだ」

ジモティ男子が指さす先の雪原に赤いボッチが見える。

「あの赤いのは雪ウサギの目だから」

「あいつを倒すとたまーにラビットフットを落とすんだ」

別なジモティ男子が教えてくれる。先ほど自己紹介されたが名前は、憶えていない。

雪ウサギとは真っ赤なお目目の角ウサギでランク1の魔物である。実際の大型ウサギほどの大きさで飛び跳ねての角で体当たりしか攻撃方法がない。ウサギなので数が多いのが特徴だ。

「ラビットフット?」

「幸運のお守りってやつだね。ドロップ品が出やすくなるって有名で、1個50万円以上って聞いたぜ」

へー、と佐倉は感嘆するが、ふと考えてしまう。自分の【盗人】スキルで奪えないものかと。

彼女自身が倒すことが前提ではあるが、しょせんはランク1の魔物で今の佐倉なら素手でも倒せるはずだ。

「あれ、捕まえてもいい?」

「智、何考えてるの?」

「コケケケみたいに増やせないかなーって」

「もしかしてラビットフット目当てで?」

「せいかーい」

「まったく」

佐倉の考えに四街道はあきれて肩を落とした。雪玉を捕まえられたのなら雪ウサギでもワンチャン。

「よーし、いくぞー」

佐倉は両腕を広げて雪ウサギに近づく。赤い目は動かない。ズボ、ズボっと一歩一歩ゆっくり迫る。

雪ウサギまであと5メートルというあたりで赤い目がぶれた。赤い光が急速に迫る。

白い塊が当たる寸前、体を横に逃がし、そして通過する雪ウサギをがっちり腕で固定する。

「捕まえたぁぁ!」

『ギューギュー』

あまりかわいげのない悲鳴を上げる雪ウサギ。が、佐倉のパワーに勝てず、バタつく足は空を切るだけだ。

「どれどれ」

佐倉は【盗人】スキルを試してみた。えいえいえいと何度も何度も。

【盗品:ラビットフット×1】

足元に、中指くらいの細長いモフモフが落ちた。

やった!

声に出さずに佐倉は喜ぶ。

【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

暴れる雪ウサギを完璧にホールドしている佐倉が困惑した。

【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

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【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

【盗品:ラビットフット×1】

「ちょ、ちょっと待って!」

チャリンチャリンチャリンと古のゲームであった無限1UPのようである。