軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33.日比谷ダンジョンでドロップ品勝負⑦

「俺が注意を引いている間にいろいろ試してくれ!」

零士さんが叫ぶ。京香さんが喜ぶかもしれないし、データを取ろうか。

ファイヤーボールを撃った。無視された。

カースを喰らわせた。アイツその場から動かねーからあまり効果はなさそう。

【説法】は届かない。

【フィアー】は全然だ。

ブレスなんて気にもされてない。

「さて八方ふさがりだ」

『ゴァァァァ!!!』

ふた首ドラゴンは元気いっぱいだ。

使いたくはなかったけど【鎮魂の鐘】だ。

「【鎮魂の鐘】」

合掌してスキルを使えばゴーンと厳かな鐘の音が響き渡る。ふた首ドラゴンのビタっと動きが止まる。

「よし効いた!ってあれ? なんかバチバチ火花が散ってる?」

ふた首ドラゴンの体に火花が飛んでて、ガギギギギと地獄の窯が開くような音が聞こえる。嫌な予感しかしない。

不穏さを感じたのか零士さんが戻ってきた。

「動きそうだな」

『ギャァァァァァ!!』

零士さんがつぶやくと、直後にふた首ドラゴンが首を天に伸ばして咆哮した。ビリビリと空気が揺れ、俺のお腹の底まで震わされた。

「物理攻撃しかねえか?」

「俺の物理攻撃って……網は無力だから金剛杖しかない」

「ぶん投げて突き刺せねえか?」

「あー。【袈裟】スキルでムッキムキになればワンチャン」

筋力5倍になるけど副作用もすごいって諸刃の剣スキルだ。

ノーコンかもしれないけどやれそうなのはそれくらいしかない。

「俺が引き付けるからその間にやってくれ」

零士さんは大蛇丸を掲げて駆けていった。光と闇のブレスを紙一重を装って器用に避けている。さすがだ。

「やるしかないか」

俺も負けられない。元はといえば踏破は俺のわがままだし。気合入れろ、俺!

金剛杖を10本出して地面に突き刺す。1本をやり投げみたいに持った。

「【袈裟】」

スキルを発動させれば作務衣の上に黄色の袈裟が現れる。そして俺の体がムッキムキのムチムチ逆三角形マッチョマンに変化した。肉体が強化されると精神にも影響があって、何でもできちゃう気がしてくる。

「俺はスーパーマン。やれるやれるやれる!」

不安で押しつぶされそうなときは暗示をかけるように何度もつぶやくんだ。太田ちゃんもこんな風にやってたな。

金剛杖を強く握って、体をねじって思いっきり振り絞る。筋肉が「やるぜやるぜ」と蠢いてる。

「あぁぁぁたぁぁぁれぇぇぇぇ!!」

金剛杖をぶん投げた。フボッって漫画でしか聞いたことがない空気を裂く効果音付きで金剛杖が飛んでいく。

『ギュアァァァ!!』

ちょうど逃げ回ってる零士さんを追いかけて首を回してるふた首ドラゴンの胸に突き刺さった。

「いける!」

次の金剛杖を握る。俺を思い出したふた首ドラゴンの片方の首が顔を向けてくる。構わず投げる。

「いけぇぇ!」

金剛杖はブレスを吐こうと開けた口に吸い込まれた。

『ギィヤァァァ!』

口に突入した金剛杖はその勢いでドラゴンの首をカチあげ、闇のブレスが空に向かって吐かれた。残った首が俺に向く。

「【一閃】!」

その隙を逃す零士さんじゃなかった。低い姿勢で突っ込み大蛇丸の一撃でドラゴンの首を落とした。

俺は金剛杖を手に地面を蹴る。

「【師走】【サンダー】!」

猛ダッシュしつつ【サンダー】の魔法を刺さったままの金剛杖にぶち込む。金剛杖が避雷針になって、ふた首ドラゴンに電撃が走る。

『グギャァァアアァァアアァア!!』

ふた首ドラゴンの動きが止まった。一瞬のスキがあればいい。

「ああぁぁぁああぁああ!!」

力の限りで金剛杖を突きさした。

強烈な抵抗感。

でも深さはいらない。俺のメインウエポンはこっちだ。

「【収納】!」

ふた首ドラゴンは目の前から消えた。

おしりから地面にへたり込む。【袈裟】のスキルが切れて反動がどっと押し寄せてるのがわかる。体が動かねえ。

そのまま地面に寝転んだ。

空が青い。どこまでも青いぞ。

「やったな」

零士さんが顔を覗かせる。

「零士さんがひきつけてくれてたから楽でした」

「俺は逃げ回ってただけだぞ?」

「あのブレスから逃げ回れるのはすごいと思いますけど」

なんて言葉を交わす。あぁ、俺もハンターなんだなって、改めて感じた。

「にしても、何も起こらねえな」

零士さんが辺りを見やる。そういえば、こんなのんびり寝っ転がってていいわけがない。

でも、ボスを収納したけど何も起こらない。

「ボスを倒したらダンジョンの入り口に戻されるんだがな」

零士さんが頭を掻いた。

「あ、収納しただけで経験値にしてないや」

経験値にしないと倒したことにならないんだよね。でも、踏破の時間は決めてるしなぁ。

「いま何時だろ」

「11時30分過ぎだな」

「ありゃ、時間が余っちゃった」

「ちょうどいい、休んでろ」

零士さんが少年のようにニカっと笑った。

10分くらい空を見てたら体に力が入るようになった。【袈裟】の反動はすごいなぁ。

「よっと」と体を起こす。零士さんは暇つぶしにボスエリアを探索してる。壁に手を当てたり殴ってみたり大蛇丸で切り裂いてみたり。切り取った壁を手に持ってた。

ダンジョンの壁って切り取れるんだね。そういや池袋で木を抜いて投げたな、俺。

「今の時間は。55分か」

少し早いけど、さくっと経験値にしてしまおう。

「踏破しますよー」

「おう、そっちに行く」

零士さんに声をかける。何が起こるかわからないから一緒にいた方がいい。

【→経験値と魔石にしますか?】

もちろんイエスだ。

『レベルがあがりました』

【ツインヘッドドラゴンの魔石×1】

【シャイニングブレスのスキル書×1】

【ダークネスブレスのスキル書×1】

【竜骨+×1】

【ツインヘッドドラゴンの鱗×1】

【日比谷ダンジョンマスターのスキル書×1】

「ダンジョンマスター!?」

んんん?

なんぞこれ?

「守、何が出たんだ?」

零士さんが聞いてくるけどダンジョンが大きく揺れ始めた。横揺れとかじゃなくって振動してる感じで不安になる。

「おぅ、無事に踏破になったな。俺は小さくなってるから、後は頼んだぞ」

零士さんが小さくなっていきキーホルダーになった。優しく拾っておく。足元に幾何学模様の何かが浮き上がって、激しく光った。