軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30.秋のハンター祭り 午前の部①

今日は抜けるような秋晴れで、風も穏やかな素晴らしい秋の日。とうとうハンター祭りの日になった。

ハンター祭りはハンターコースの3年生だけが参加する特別な祭りで、3年間の総決算の意味合いがある。

学校の校庭が会場となっており、基本的には生徒とその家族や知り合い、ハンターコース志望の中学生などで、招待券がないと入場できないようになっている。智が持ってきた去年のパンフレットはこぢんまりとしたものだった。

例年は普通の体育祭みたいな感じなはずが今年はコンサートでもやるのか、という規模になっていた。ひな壇のような観客席が設けられる、らしい。

今年はいろいろあった学年で強い生徒がいるという噂もあって転売サイトでプレミアムがついてる始末。金目当てに誰かが売ってしまったのだろう。転売よくない。

あと、何気に智と美奈子ちゃんと葉子ちゃんにもファンがいるらしい。あのシルクのモデルをやった時に発生したんだとか。ストーカーがいないことを願う。いたら俺が処すけど。

入れない見れないケシカラン、という声が上がり、ちょっと問題になっていた、らしい。詳しいことが決まった後に俺は聞いたからね。未だ子供でごめんよ。

こんなことがあり、船橋ギルド、勝浦ギルド、獄楽寺ギルド公式にてハンター祭りを配信することになった。カメラはひとつだけど回線を3つに分けて負荷の分散を図っている。うちのサーバーは京香さん肝いりらしく高負荷にも耐えるんだとか。頼もしい奥様である。

俺はギルド長として招待されてて、その他に5名分の招待券をもらってる。父さんと京香さんが観戦することに。おなかの大きくなってる瀬奈さんには留守番を頼んで、表に出れない零士くんとともにダンジョンを見てもらう。

余っている分は、以前ランドデートの際に出会った中学生ふたりに送った。約束してたからね。

智は母親が来なくて父親と兄が来るらしい。あの兄さんはハンターを嫌ってるから苦手なんだよなぁ。

美奈子ちゃんは父親と親友のシヅマさんを連れてくるようだ。それはそれで騒ぎになりそうな予感がする。

葉子ちゃんは葉介さんを呼んでる。

寄居ちゃんは両親とビッチさんと信号機トリオを招待したっぽい。ビッチさんが来た時に嬉しそうに自慢された。

ポニーもAチームも家族を呼んでいる様子。

「ダンジョン対応が手薄と思ってね」

黄金騎士団の那覇さんと奥さん3人が早朝の寺に来てくれていた。頼んだ覚えはないんだけど。

どうやら妊婦さん方――ビッチさん含め――が裏でいろいろ結託してて那覇さんを動かしたらしい。彼は彼で目的があって来てるっぽい。きっと零士くん目当てだ。

学校周辺から行列が形成されてたので最後尾に並ぶ。

「手荷物検査にご協力くださーい!」

生徒が声を張り上げてる。お手伝いの下級生なんだって。大変だね。

入り口にあたる校門ではハンターコースの下級生がチケットの確認と手荷物検査が行われた。その後ろで船橋ギルドと勝浦ギルドから派遣された【鑑定】スキルもちが人物チェックするダブル体制になっている。

「あ」

本来業務は受付だろう【鑑定】スキル持ちの女性が俺を見てそんな声を上げた。

「ギルド長がこっちから入らないでください」

「……すみません」

ダメだったらしい。

「ほっほっほ、守も偉くなったんだなぁ」

「ちっとも偉くなってないんだけどねー」

「組織を維持しているだけでも、よくやってるさ」

褒められたのか慰められたのか分からないことを父さんに言われた。褒められたとしておこう。

観客に扮したハンターがうろうろして警備にあたっているみたいで、明らかに一般人じゃない目つきの人がいる。

今年はすごいと噂が流れているのでひな壇の観客席はすでに満員御礼だ。

ギルド長とその付き添いは来賓席だ。ちょうど会場の真正面で、目立つ。

すでに船橋の大多喜さんと勝浦ギルドのおっちゃんが座ってた。足利さんだったっけね。

そして智と美奈子ちゃんが待ってた。

「守、遅い!」

「いやー、行列がすごくってさー」

「ギルド関係者は裏からってなってたじゃない!」

ここでも怒られた。サーセン。

「智美さん、すごい人だね」

手でひさしを作りながら父さんが会場を見渡してる。

「おとーさん、そうなんですよ。こんなに人が来るなんて想定外ですよー」

「去年の3倍くらいいるみたいです」

「それはすごいな」

智と美奈子ちゃんが父さんに答えてると、校門方向から制服姿の女の子が駆けてきた。

「ちょ、カエデ待てって!」

遅れて制服を着た男の子も走ってくる。タタタタっと軽い足取りで女の子が到着した。

「お久しぶりです佐倉さん! 貴重なチケットありがとうございます!」

「楓ちゃん来てくれたんだ、ありがとう!」

「来ますよー!」

楓ちゃんとハイタッチする智。

以前、熱中症になりかけていた圭太くんを助けたときに知り合った中学生だ。会ってはいないけどメッセージでのやり取りは続けてたみたい。

「友達に今日見に行くって言ったらすっごい羨ましがられました!」

「あはは、なんかすごい人気みたいだね」

「もうすごいですよ! 転売サイトで10万とかついてましたよ!」

「うわー、信じられない。チケットはただなのに」

智と楓ちゃんが話していると美奈子と今到着した葉子ちゃんが会話に入ってくる。

「その子が楓ちゃん?」

「カワイイ」

「あ、わたしは四街道っていうの。よろしくねー」

「アーシは柏。ヨロー」

「あああの稲毛楓と申します! シルクキャミの写真見ました! とっても綺麗でした! あ、こっちが、来年入学する予定の旭圭太です!」

楓ちゃんが圭太くんを前に出す。圭太くんはふたりを前に緊張気味だ。

「はは初めましてケイタです!」

「おー、新入生だ」

「ワンパク」

美奈子ちゃんと葉子ちゃんは圭太くんの頭をなでなでしてる。周囲から射殺すような視線を感じるけど、大丈夫かな。

「楓ちゃん、進学はどうなったの?」

「実は、市船の普通科を目指してます」

「すごーい! 圭太くんへの愛がすごい!」

すごい行動力の楓ちゃんだが、実際は智も負けてないけどね。

智が顔を寄せこそっと聞く。

「そんな熱いふたりはどこまでいったの?」

「あああの、その、ちゅーまでは……」

下を向く楓ちゃん。耳も真っ赤だ。

「やるねー」

「すすすでに旦那さんがいる佐倉さんには勝てません!」

「あははー、言われちゃったー」

『ご来場のお客様。入り口で立ち止まらずに観客席のほうへ移動をお願いします』

アナウンスがかかる。アナウンスは普通科の放送部の女子生徒だ。

「頑張ってください! ケイタいくよ!」

「おー、楽しみにしてます!」

楓ちゃんに引っ張られた圭太くんが人波に消えていく。

「じゃあたしたちは準備があるから行くね!」

「頑張ります!」

「ヤンゾー!」

智らは控室の校舎に消えてった。