軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

八歳で死ぬと予言されたそうで。28

「えっ、荒療治をするのならそれくらい衝撃がある方がいいと思ってのことですよ」

ニコニコするテネシスを見て、なるほど? と納得しかけているデフティール。伯爵の爵位を継いでいる割にチョロそうなのだがそれでいいのか。

「いやでも、王族を牢屋に入れるのはちょっと」

ハッとして、いかんいかんと首を振るデフティールは、辛うじてテネシスに丸め込まれなくて済んだ。

というか五歳児に丸め込まれかけている推定年齢二十歳の成人男性という図は有りなのか。

ビアス公爵家の執事が居たらお嬢様、と窘めているか嘆いているかもしれない。

「じゃあ……貴族牢とかいうのならいいんじゃないでしょうか」

物凄く不満そうな顔で渋々とテネシスが提案している。

なにがそんなに不満なの? 貴族牢がご不満? まさか牢屋でお泊り会が出来ないから?

と尋ねてみたい誘惑に駆られつつ、それを閉じ込めてデフティールはうーん、と曖昧な返事を溢す。

「それが果たして荒療治として正しいのかどうかも分からないし」

彼の曖昧な返事の理由はご尤もである。そんな方法を取ってみたからといって、荒療治として心の病が治るかどうかなど未知である。というか、抑々心の病なのか確定もしていない。

テネシスは小さな淑女のような振る舞いをしていた最初とは打って変わって、とてもとても不服そうな表情でデフティールを見る。

「それはそうですけど、やってみないとわからないことだってありますよね」

それはそう。

危うく、うん確かにと頷きそうになったデフティール。テネシスはもしかしたら人を丸め込む天才か。それともデフティールがそれだけチョロいのか。その辺りを追求しようとする者がその場に居ないのは幸いだったかもしれない。

咳払いをして国王が空気を引き締めると、荒療治の方法は後で考えるとして、先ずはノランが心の病であるかどうかを専門家を招いて診てもらう必要があるだろう、と話をまとめる。その際はデフティールがアドバイザーの立場を取り、影が薄くなっていてテネシスの中では存在が消えていたレッセルが協力することで話は着いた。

はずだった。

四人で話し合っていた部屋の外から響くドアのノック音と国王の返答の声に、ドア前で警護している護衛がノランの訪問を口にした。

誰も通すな、と護衛に命じていた通り、護衛は最初ノランの訪問を断っていたようだったが、全く引き下がらないノランに困惑したようで、国王に伺いを立てた、といったようである。

ノランが先触れも無く急に自分の元を訪れたことに驚き、ついでノランの友人である伯爵を呼んだことがノランの耳に入ったということなのかと首を捻りつつ、デフティールと公爵親子に目配せして入室を許可した。

同時に焦ったようにドアが開き急いたように入ってきたノランは、何故かドレスを着ていた。

国王もレッセルもデフティールも、その格好に無言となったが内心で驚きから思考が停止したのである。

おそらく護衛がノランを退けきれなかったのもその姿に驚いたからではないか。

さておき。

ノランはそんな周囲の様子など気にも止めず真っ直ぐにテネシスの前へ足を進めて、テネシスを見下ろすようにして、ニコリと笑った。

テネシスはなんとなく、この人はノランの姿だけれどノランでは無い気がした。

「はじめまして、お姉さん。あなたはどなたでございますか」

テネシスが公爵令嬢という肩書きの猫、いや着ぐるみを被って見た目はノランに挨拶をする。その人は、目を丸くしてから今度はニヤリと笑んだ。

「賢い子ね。私をノランじゃない、と判断するなんて」

その返事に室内の大人三人が我に返る。姿がノランだというのに、ノランじゃない、とはどういうことなのか。ちなみに三人はノランに姉妹が居ないことは当然知っている。ということは、女性姿のノラン本人ということになる。

「ノラン様は優しそうな微笑みを浮かべていらして、冷たい笑顔では無かったので」

あとは勘です。と満面の笑みで言い切ったテネシスに大声で笑い出した見た目ノランの女性姿の人。その笑い声は女性のものに聞こえた。