軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54:人間不信とダンスの達人

その後の私は、リカルドの友人に囲まれてワイワイしながら、数年ぶりに間食をした。

約二年越しのケーキの味は、非常に甘く美味しい。

(それにしても、露骨すぎるよね)

私は、リカルドの友人たちを見ながら、複雑な気分になっていた。

(なんか、痩せる前は散々な扱いだったのに……痩せた途端に手のひらを返すようなこの違い)

ダイエットをしたいと望んだのは自分だけれど、軽く人間不信になりそうだ。

気付けば、私は会場に置かれていた菓子を次々につまみ、無意識に口に運んでいた。

(ハッ……やばい、ついストレスを食べ物で発散しようと手が伸びてしまった!)

嫌なことがあった時、食べることで記憶を忘れようとするのは、ブリトニーの悪い癖なのだろう。

幼かったのでよく覚えていないが、両親が揃って消えた時の私は、辛い気持ちを慰めるように、たくさんのお菓子を食べまくっていたそうだ。

「ブリトニー、先ほどから立ちっぱなしだが、大丈夫か?」

「平気、お祖父様に鍛えられているから」

この中で、今まで通りに私に接してくれるリカルドだけが信用できる。

(あーあ、リカルドと婚約できたら楽なんだけどな。二度も断られているから難しいよね)

彼は次男だし、漫画ではマーロウ王太子の取り巻きだった。

お隣のアスタール伯爵領を継ぐかもしれないという噂はあるものの、真偽のほどは不透明。

もし、この先彼が王都で生活し続けるのなら、婚約者もいずれは王都で生活することになりそうである。こんな死亡フラグの多い場所で暮らすのは嫌だ。

しばらくすると、リカルドの友人たちも散っていって、私と彼は再び二人だけになった。

近くにいた給仕さんに頼んで、お茶を手配してもらい、たくさん置かれている椅子の一つに腰掛ける。

「なあ、ブリトニー」

少し俯き、ぶっきらぼうな調子でリカルドが口を開く。僅かに彼の耳が赤い。

「ん? 何?」

「その……なんだか、今日はいつもと違って見えるな。なんというか、美人だ」

なんということでしょう!

リカルドまで、化粧詐欺に引っかかってしまったようだ。

しかし、私は友人を化粧詐欺の犠牲にする気はないので、真実を話しておく。

「何を言っているの? 私が美少女に見えるのは、詐欺メイクの力のせいだよ」

それを聞いたリカルドは、思わず飲みかけた茶を吹き出しそうになった。

「……詐欺?」

「そう、本来の私のすっぴんは、リュゼに比べてパッとしないから。それを、メイクで最大限にカバーしているの」

「いや、だが……それは、化粧だけでなんとかなるものなのか?」

「信じられないなら、今度素顔を見せてあげようか?」

もはや、リカルドは言葉を失っていた。

「……ま、まあいい。この後、ダンスが始まるのだが、お前はどうする?」

「それなんだけど、私、ダンスはすごく苦手なんだ。昔より、少しはマシになったんだけど、自信がないんだよね。隅っこでじっとしていようかな」

なんせ、私は過去にダンス教師の足を骨折させた女だ。新たな犠牲者は出したくない。

「じっとしているのは難しいだろうな。お前、変に注目を集めているみたいだし、絶対に声をかけられるぞ」

「うへえ、化粧詐欺なんてするんじゃなかった」

婚約者候補を探しに来たので、注目されるのは助かるが……ダンスの酷さでフラれる可能性大だった。

「困っているなら、俺が一緒に踊ってやろうか? どちらかというと、ダンスは得意な方だ」

「えっ……? でも、私は本当にダンスが下手だし、足を踏んじゃうかもしれないよ?」

「お前程度に、足を踏まれたりしないから安心しろ。余裕で避けられる」

……そんなにダンスが得意なのだろうか?

彼の言葉を鵜呑みにした私は、助かったとばかりに素直に頷いた。