軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

252:白豚令嬢の帰還

東の国の現場はと言うと、リカルドとグレイソン殿下のおかげで、主要な用事はほぼ終わっていた。

私もやれる仕事はやったので、もうそろそろ帰れる。

アクセルの件は、リカルドがきっちりグレイソンに伝えてくれた。

私は西の国の王子から謝罪を受け、アクセルにはグレイソンが中央の国へ戻り次第、処分が下されることが決まる。

グレイソンが、「私のヴァンベルガー領に対しての配慮が欠けていた部分もある。ブリトニー嬢には申し訳ないことをした」と申し訳なさそうに話していた。

こちらもただで転んだわけではない。

苦情はリカルドがしっかり申し立ててくれたので、騒ぐ必要もないだろう。

東の国の人々に回復の兆しが見えたため、医師たちを残し、私たちは先に帰還する予定になっていた。

「リカルド、中央の国へ戻ったら、お母様のところへ寄ってもいい?」

「もちろんだ」

母に情があるわけではないけれど、公爵が病気だとを知っていて見殺しにするのは後味が悪い。助けられるなら、助けてあげたい。

「公爵に渡す薬を用意しよう」

リカルドにも私の意図は伝わっているようだ。

東の国の人々に感謝されつつ、私とリカルドは数日後に中央の国へ発った。

拡張された川は元の位置で防がれ、これ以上の工事は行われないことになった。

水田も徐々に畑へ戻していく予定らしい。帰ったら、防水長靴の開発でもしようと思う。

何度目かの公爵邸を訪れると、母は相変わらずの偉そうな態度で私たちを出迎えた。

「事前に手紙を送りましたが、改めて……アクセル様との結婚のお話は完全になくなりました」

母は、内心を読ませない無表情で答える。

「ええ、そのようね」

「そして、手紙に書きましたが、公爵様にこちらを……」

私は用意していた薬を母に渡す。すると、初めて母の瞳が揺らいだ。

おそらくだが、母は公爵を心の底から大切に想っている。

「まあ、これが」

「あなたの求めていた薬です。進行度合いにもよりますが、東の国の人々の症状はこの薬で緩和されました」

本来なら、東の国の人々に合う薬が見つかるまで、もっとかかる可能性も高かった。

だが、運良く早い段階で症状を治す薬が発見されたのだ。

母は急ぎ傍にいたメイドに指示を出す。

「これをあの人に飲ませてちょうだい」

「かしこまりました、奥様」

メイドは薬を持って部屋の外に出て行った。

「ブリトニー……」

母が何か言いたげにこちらを目を向ける。

「あなた、見るたびに細くなっていない?」

「……」

余計なお世話である。

最初に会ったとき、散々こちらを貶めていた件は忘れない。

実の母だが、私には彼女と親子だという認識は薄かった。話せば話すほど……合わない。

だがここで、なぜかリカルドが口を挟んだ。

「公爵夫人、まだブリトニーに言い足りないことがあるのではないですか?」

私はびっくりして彼を見つめる。リカルドは何を話しているのだろう。

(言い足りないって、さらに私への文句を公爵夫人に言わせるつもり?)

リカルドは私を傷つけるような人ではない。だから彼の意図がわからず、私は困惑する。

「俺たちはアスタール領へ戻る予定です。このままだと後悔なさいませんか?」

「えっ……」

意図が読めない私とは異なり、母はリカルドの言葉を正確に理解した様子だ。