軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

229:未来の夫、ダイエットプランを提案する

そうして、真珠の件で責任者との話し合いが始まる。

彼らが日常的に使用する応接室へ呼ばれ、私はリカルドに相談していた話を切り出した。

最初はランク分けが細かいと文句を言っていた責任者だが、きちんと説明した甲斐あり、最後には折れてくれた。

真珠貝にはいろいろな種類があるが、アスタール産の真珠貝は「あこや真珠」と「淡水真珠」という二種類だそう。一つの貝からたくさん真珠の採れる「淡水真珠」よりも、「あこや真珠」の方が希少で価値が高い。

真珠は真ん中に核が存在し、周りを層が覆っている。

この層は、真珠が貝の中に長くいればいるほど厚くなり、中心の色が濃く見えるようになるのだ。光沢が強く、厚ければ厚いほど価値が上がる。

傷や突起がある真珠は、価値が下がる。

色つきの真珠は、色によっては希少で高価なものになる。

そういう基準を設けた。

(そして、形が悪く商品にならない品はより分け、アクセル様に売りつける……。侯爵家だし、お金は持っているだろうから、安売りはしない)

責任者やリカルドから許可が下りたので、屋敷に戻ってアクセルに手紙を書く。

こちらの窓口は、私がアクセルと会うことに断固反対したリカルドだ。

やってくれるのなら、彼に任せよう……

事務処理を終えたタイミングで、リカルドが部屋に来た。

「ブリトニー、運動の時間だ」

私のダイエットをサポートしてくれる彼は、運動や食事にも気を配るのだ。

とても心強い。

今は、苦しくなく手軽に続けられる体操や、無理のない範囲でのランニングが中心。もう少し痩せてきたら、激しい運動に移行できるけれど、まだ足に負担がかかるので。

運動をするのも、食事をするのも、一人ではないので耐えられる。

リカルドが痩せすぎにならないか心配だけれど、彼は食事を自分用に調整しているので今のところ大丈夫だった。

「ふぅ、今日のノルマ達成! 部屋に戻って黒豆茶でも飲もう」

農業が盛んなアスタール伯爵領は、黒豆まで採れてしまうのだ。黒豆は美容にいい。

血を補い、血行をよくしてくれるし、シミやソバカス予防にも効くのだ。気分を安定させる働きもあり、むくみを予防する漢方にもなる。

(西の国で栽培していなければ、売ってみようかな)

アスタール伯爵領では、まだまだ私の働きは評価されておらず、リカルドの婚約者にすぎない一令嬢だと思う人も多い。

リカルドが改善してくれているものの、ハークス伯爵領でのようにはいかない。

私自身、もっと領地の人から認められる必要があるのだ。

(そして、結婚式までに痩せなきゃ……しんどいな)

小さくため息をつくと、まるで私の心を読んだかのように、リカルドが話し始めた。

「どうした? 運動がきつかったか?」

「ううん、違うの。さっさと痩せなきゃと思うと気が重くて……また、リバウンドしないかも心配で」

長椅子に腰掛けたリカルドは、何かを考えるように目を細めた。

「ブリトニーが、何度もリバウンドを繰り返すのは、今までのダイエット方法に限界が来ているからだ。お前は完璧主義が過ぎる」

「私、適当だけど」

「毎回、自分の限度ギリギリの高い目標を設定しすぎていると言うべきか? だから、それを達成できない危機が訪れ、想定外のことが起きたとき、焦って混乱する心を静めようと過食に走る」

身に覚えがありすぎるぞ……

「その結果、自己嫌悪に陥り、ダイエットを投げ出して、ストレスから大量に食べてしまうんだ」

「リカルド、私の心が読めるの!?」

「読めないが、ブリトニーの行動は間近で見てきた」

確かに、彼はハークス伯爵家へ来ていたので、私の行動パターンを毎日目にしていたはず。

「俺はダイエットの目標値を下げることを勧める。挫折や、想定外の事件が起こる可能性を予め含め、無理がなく確実に成功できる範囲にするんだ。今のブリトニーに足りないものは自信だから」

「自信?」

確かに自信は持てない。もう、ずっと昔からない。

自分で決めたルールさえ守れず、すぐ太ってしまう意志の弱い私なんて大嫌いだ。

今までの私は、ストレスに耐え、急激に痩せる苦痛なダイエットを続け……そして、気が抜けたりストレスに晒されたりしては、リバウンドを繰り返してきた。

「複雑だな。俺はこんなにもブリトニーを頼りにしているのに、お前本人が誰よりも自分を認めていないなんて」

そう言われても、何度ダイエットに挑戦しても、白豚に戻っている事実は覆らないわけで……自分の惰弱さに、ほとほと嫌気がさす。

「今回のダイエット、全面的に俺に任せてもらおうか」

「で、でも……」

「とにかく、今までのような、心に負担のかかるダイエットは止めて欲しい」

「リカルド……」

わかったな、と言う彼は、私が反論する隙なく口づけてきた。

(喋れない~!)

まんまと彼にしてやられた私は、「了承だな」と笑うリカルドを前に、はくはくと声にならない声を上げることしかできなかった。