軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

120:第二王子と奇妙な質問(リカルド視点)

ブリトニーが、セルーニャに面会する一日前。

境界の街に到着した初日に、俺――リカルドは、リュゼと立ち話をしていた。

リュゼは良い奴だが敵に回すと怖い。今回の旅で、それを痛感させられた。

「……というわけで、リカルド。僕はブリトニーに婚約の話を持ちかけたよ。本人は、君との関係を諦めてはいないようだけれど」

「そ、そうか」

微妙に牽制してくるリュゼは、いつもと違って大人気ない。

(余裕のある年上だと思っていたが、こんな一面もあるのか)

俺は無意識にリュゼに憧れ、彼を目標としていた。

しかし、今をときめく北の伯爵も人間なのだ。

(リュゼは、ああ言っているけれど、ブリトニーは心変わりせず俺を想ってくれている)

それがはっきりとわかり、少しだけ気持ちが穏やかになった。

気づかず、心がささくれだっていたようだ。

行きの馬車の中、なかなかブリトニーと話せず、悶々としていたからだろう。

話をしているタイミングで、南の国の第二王子であるセルーニャが現れた。

エミーリャの兄であるセルーニャは、今回俺たちを招待してくれた相手だ。

会うのは初めてだが、彼は親しみやすい微笑みを浮かべている。

「ようこそ、南の国へ。リュゼ殿にリカルド殿とお見受けしましたぞ。私は、ここの第二王子でセルーニャと申す者」

親しげに語りかけてくる王子に対し、こちらも笑顔で挨拶と自己紹介を返した。

セルーニャはメガネをかけていて、弟と同じく人懐っこそうだ。

行く前に調べた情報によると、マーロウ王太子やリュゼと同年代らしい。

「この度は、お招きいただきありがとうございます」

リュゼと共に、俺は彼に挨拶した。他国の王族なので、少しだけ緊張する。

「堅苦しいのはここまでにしましょう。せっかく会えたのです、仲良く楽しく過ごしたいですぞ」

そこで、俺たちは「仲良く」話し始めたわけだが、話題はやはり互いの国のことや、領地経営の新情報になってくる。

「ところで、リュゼ殿の従妹君は、面白い発明をたくさんしているらしいですな」

「ええ、ブリトニーには、いつも助けられています。自慢の従妹ですよ」

にっこりと笑うリュゼ。意味深だ。

「それは良いことですなあ。ただ……」

そこで、一度声を落としたセルーニャは、含みのある視線を俺たちに向けてきた。

「少し込み入った話になりますが、お二人は、彼女のことをどこまでご存知ですかな?」

彼の言っている意味がわからず、俺は首を傾げる。

リュゼも、片眉を上げてセルーニャに問い返した。表情は、あくまでも柔らかい。

「失礼ですが、おっしゃっている意味がよくわかりません。どこまで……と言われましても。なんの話か具体的に教えていただけますか?」

「申し訳ない、質問を変えましょう。あなた方は、彼女の前世――『過去の記憶』について何か聞き及んでおりますかな?」

相変わらず首をかしげる俺だが、この質問にリュゼが反応した。

自然体を装っているが、彼をよく知る俺の目には、わずかに王子を警戒しているように映る。

「過去の記憶、ですか?」

「ええ、弟から聞いた話を総合すると、彼女は私と同じでして。前世の知識があるようなのです」

リュゼは笑みを崩さない。

だが、セルーニャ王子の荒唐無稽な話について、何かを知っているように思える。

(……なんなんだ? セルーニャ王子には前世の記憶があるのか? そして、ブリトニーにも?)

自分だけが知らないということに、奇妙な焦りを覚える。

前世の記憶なんて本当かどうか怪しい話なのに、リュゼは何も突っ込まない。

(ブリトニーに、一体何があるというんだ?)

俺たちの様子を見ていたセルーニャは、小さく息を吐いて言葉を続けた。

「余計なことを申し上げましたが。ブリトニー嬢と親しいあなた方には、彼女のことを知っておいていただきたいと……その上で、彼女を助けて欲しいと思ったのですぞ」

正直言って、良い気分ではなかった。

なぜ、赤の他人であるセルーニャに、ブリトニーのことを色々言われなければならないのだという気持ちが強い。

(……あいつに直接会ったことだってないくせに)

まるで、全てを知っているかのような第二王子の余裕に、複雑な思いを抱いた。

(ブリトニーには、俺に言っていない何かがあるのか? そして、リュゼは知っているのか?)

その後、他に用事のあるセルーニャは去って行った。

一連の話は、ただの冗談にしか思えない。けれど……

なぜか、自分だけが取り残されたように思えて、説明のつかない焦りが募っていくのだった。