軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102:令嬢たちの社交デビュー

この国の社交デビューとは、十六歳前後の令嬢が国王に拝謁する行事を指す。

国によって多少の違いはあるが、ここでは大規模なお披露目パーティーと国王への謁見がセットになっていた。

社交デビューする令嬢は、事前に王都に入りお披露目の準備をする。

その際に服装の指定はないが、必ず白い花を髪に飾った。

それが、社交デビューした令嬢の目印になるのだ。

元の世界と似た部分もあるけれど、やはりこの国独自の文化も混じっている。

一人ずつ名前を呼ばれ、国王陛下に拝謁。その後は、流れでパーティーに参加だ。

早くも拝謁を終えた私は、リュゼに付き添われて会場内を歩いていた。

この国の文化なのだが、こういう場では、身内の男性と一緒にいなければならない。

向こうでは、ノーラも父親と一緒に歩いている。

リリーも、親と一緒だ。彼女の傍には、リカルドも立っていた。

アスタール伯爵領の出身である三人は、アウェイな空気の中で居心地悪そうにしている。

移動して話しかけようとした瞬間、ダンスが始まった。

「ブリトニー」

従兄に促され、私は彼の手を取った。最初のダンスは身内と踊るルールなのだ。

そつなくダンスを踊るリュゼは、慣れた手つきで私をリードする。認めたくないが、彼のダンスは完璧だった。

一方、私はダンス音痴だが、不思議と従兄の足を踏んだことがない。

(踏んだら、後が怖いという理由もあるけど。リュゼお兄様、昔から上手なんだよね)

周囲からの視線を感じる。きっと、リュゼに向けられた令嬢たちからの強力な秋波だろう。

彼女たちは、私の次にリュゼと踊るため、様子を伺っているに違いない。

「お兄様、相変わらず人気者ですねえ。ご令嬢方が熱い視線を送っておられますよ」

「ふふ、なに? 嫉妬した?」

「は……? そんなわけないでしょう。ほら、もうすぐ曲が終わりますよ」

「ブリトニーは、次の相手に当てがあるのかな?」

「向こうにリカルドたちがいるので。踊るかどうかまでは決めていませんが、声をかけてみます。あんなことがあったけれど、ハークス伯爵領と彼らは良好な関係だって周囲に見せつけてやりたいので」

「うん、そうだね」

「あの戦いで受けた損失は大きいし、犠牲も出ました。北の国の首謀者やミラルドは、正直言って許せない……でも、リカルドたちは違う」

そう伝えると、従兄は優しく頷いてみせた。

「僕も、リリー嬢に声をかけるつもりだった。せっかくだから、一緒に行こうか」

「はい……」

ダンスを終えた私たちは、二人並んでリカルドたちの元を目指す。

私はともかく、リュゼ狙いの令嬢たちは、彼の行動を注意深く観察しているようだ。

声をかけられないかと自然な動きを装い、少し距離を置いて後をついてくる。

ちょっと、異様な集団に見えなくもない。

ものすごく可愛いリリーだが、現アスタール伯爵の娘ということで、父親とのダンスが終わっても、積極的に彼女に声をかける相手はいない。

声をかけたそうにしている男性は近くに数名いるが、アスタール伯爵領の評判を気にして様子を伺っているだけだ。

そんな中で、私は彼女に堂々と声をかける。

「リリー! 久しぶり」

こちらに気がついたリリーは、私に向かって手を振り、その後ろを歩くリュゼを見て頰を赤く染めた。彼女も、社交デビューしたてなのだ。

ふわふわした髪飾りと同色の白いドレスを身にまとい、緊張している。

(素直な反応も可愛いな……)

私より一つ年下のリリーだが、知り合いがいた方がいいだろうという理由で、私やノーラと同じ年にデビューした。

なにもこんな風当たりが強い時に、と思わなくもないが。

だからこそ、彼女の父親が娘の幸せを焦ってしまった模様。

一刻も早く可愛い我が子に結婚相手を……と、必死になっているようだ。

リリーの父親である現アスタール伯爵に挨拶をしたリュゼは、そつなく彼女をダンスに誘い、颯爽とその場を後にした。

周囲の目を気にして、リリーを見つめるだけだった男性陣が悔しげな顔をしている。

(やるなぁ、リュゼお兄様)

令嬢たちの視線は、まだリュゼを追っていた……って、ノーラ!?

(ちゃっかり令嬢軍団の中に混じっているー!?)

ノーラをエスコートするはずの父親はというと……

ああ、令嬢軍団の最後尾で静かに佇んでいた。

ちなみに、マーロウやアンジェラは、場が盛り上がった頃に登場するらしい。

おそらく、その際に主人公メリルも紹介されるのだろう。