軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

00:プロローグ

●ソフィア・クアン(24)

夫セルジュと結婚するも、夫の弟との不貞により追い出される。元、伯爵令嬢。

●セルジュ・ランドリー(26)

ソフィアの元夫。ランドリー侯爵家の現当主。

●レオン(3)

ソフィアの息子。

●ハリー(24)

宿屋の女将の息子。

●ロマーナ・ビューヘン(25)

公爵令嬢。セルジュの幼馴染み。帝国に嫁ぐ。

●ハインツ・ランドリー(25)

セルジュの弟。

●リザ(26)

ハインツの妻。

●ランドリー前侯爵(故50歳)

★ ★

その日、王室の中枢を担っていた宰相が亡くなった。

宰相──ランドリー侯爵は、アカデミーに通っていたころから優秀で、首席で卒業した後は当時の宰相の元でさらに多くのことを学びながら、今の地位を手に入れた。

性格は厳格で融通が利かないこともあったが、公平な人間であった。彼の残した功績は国の歴史を塗り替えるほど素晴らしく、至るところで彼の名が刻まれた。

宰相として、国王の右腕として、生きている限り未来は約束されたようなものだった。

しかし、そんな輝かしい人生を歩む彼にも、唯一の汚点があった。

──それは、息子の妻だった。

彼には二人の息子がおり、後継者となる長男のセルジュ・ランドリーは、侯爵に似て優秀だった。頑固な性格も受け継いでいたが、身内には優しい一面もあった。

次男のハインツ・ランドリーは、学力こそ平凡だが、母譲りの明るい性格で近寄りがたい侯爵家の潤滑油的な存在だった。はやり病で侯爵夫人を失ってからは、彼が邸宅の運営を引き受けていた。お人好しなのが玉に瑕だったが、温厚な性格で皆から愛されていた。

出来た二人の息子は侯爵の自慢だった。

だが、そんな彼らの関係を引き裂くような事件が起きてしまった。

長男セルジュの妻が不貞を働いたのだ。相手は次男のハインツだった。

セルジュの妻はどの派閥にも属していない伯爵家の娘で、頭から足まで平凡を絵に描いたような女だった。争いは好まず、侯爵家に嫁いでからも物静かで、物欲のない人間だった。

しかし、二人が一糸纏わぬ姿でベッドにいるところをセルジュたちが見つけ、女は侯爵家から追い出された。

同じく、ハインツも自ら侯爵家を出て行き、一瞬にして順風満帆に思えた家庭は崩壊した。

そして悪夢のような出来事から四年余り、今度はランドリー侯爵が齢五十歳という若さでこの世を去った。

あまりに突然の訃報に、皆は口を揃えて心労からくる過労死だろうと囁き合った。

セルジュは悲しむ間もなく父親の跡を継ぎ、ランドリー侯爵家の若き当主となった。世間では彼に対する同情が広まり、同時に元妻への非難は強まるばかりだった。

だが、侯爵が残した遺言には、セルジュが予想もしていなかったことが書かれていた。

あれほど公平で、自分にも厳しかった人が元妻にも財産の一部を譲ることが記されていたのである。

……最後の情けだろうか。

しかし、驚くことにそこには存在しないはずの孫の名が、元妻の隣に書かれていたのである。

「馬鹿な……」

まさに青天の霹靂だった。

なぜ今になって、それも遺言という形で知らされるのか。

忘れようとしていたのに。

セルジュは遺言の書かれた紙を握りしめ、唇を噛んだ。

「また私を苦しめるつもりか……ソフィア。それとも、父上はこのことを知らせることで、私に復讐しろとでも言うのだろうか」

生きている内は潔白な人間であり、恨みは買っても手を汚すような真似はしなかった人だ。

けれど、死んでしまえば誰も咎めることはできない。確認すれば、譲る遺産はそれほど多くはなかった。

「父上だって辛かったはずだ。私だって……」

今もあの日の出来事が浮かんできて、悪夢に魘されることがある。あれほどの裏切りを、忘れられるわけがない。

妻となってくれた彼女を、愛していたのに。

この復讐が許されるのなら……。

「今度は私が、君の幸せを奪ってやろう──」