軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

083 運の悪いジェネラルオーク

「それで、家、借りれそうですか?」

「色々調べてみては居るけど、もうちょっと収入が増えて安定してからのほうがいいと思う。冬の間はどうしても収入が減るし、ある程度貯めてからじゃないと難しいかなって」

「薪代とかも掛かりますしね」

「あ!? 薪! 忘れてたぁ……うーん、もっと色々見直してみないとヤバイかも」

今の宿代が1部屋小銀貨5枚。2部屋で一晩銀貨1枚。前の宿の約2倍。果たして高いのか安いのか……安全面や設備を考えると圧倒的に安いとは思うんだけどね。

なんて話をしてるのはギルドの買い取り窓口の列だったり。早めに帰ってきた筈がこの混み様、流石都会は違う。

今までノルン達のご飯確保に狩りに行ってた時は昼過ぎには帰ってきてたんだよ。その時はスカスカだったんだけど……いやはや、今の時間だとノルンも居るから目立つ目立つ。でも逆にノルン達が居るから余計なちょっかいをかけてくる連中も居ないので、そういう意味でも流石のノルン様である。

ちなみに今回私が売るのは薬草のみ。ノルン達が獲ったと思われる獲物はこっそり私の【ストレージ】に移動済みで、売るつもりは無い。

トリエラ達は兎の角4本と薬草を売る予定。肉は今回は全部持って帰るらしい。8人分の晩御飯にする予定だとかなんとか。

とは言え先に肉を食べた4人は少なめにして、まだ肉を食べてない4人に多めに食べさせるんだって。三馬鹿の分なんて無視すればいいのに、相変わらずトリエラは人が良すぎる。

毛皮に関しては私に一つアイディアがあるので、売らない。アイディアがうまく行かなかったら半分売る。残った半分で自分達で練習させる感じで?

「結局、毛皮はどうするんだ?」

「窓口で、毛皮のなめしをしてくれる店を紹介してもらうんです。あとは、肉の保存食への加工もしてくれるところがあれば、そちらもですね」

「毛皮のなめし? 自分でやればいいんじゃないか?」

「マリクルは出来るんですか?」

「……いや、出来ない。でも、練習と思ってやってもいいんじゃないか?」

「確かに練習しないと【革加工】スキルは覚えられませんけど、今から覚えて冬までに量を集められます?」

「冬までに? なんでだ?」

「冬前までには家を借りる予定らしいですけど、そこで冬の防寒対策とか考えてますか?」

「なるほど、毛布代わりにするわけか。でも冬まではまだ時間があるし、手数料を考えると自分でできるようにしたほうが良くないか?」

「最終的には自分で出来る様になったほうがいいですけど、今は時間を考えると頼んだほうがいいと思います。毛皮はなめしが済んでるほうが高く売れますし、今から貯めていって余るようなら、冬近くになってから売れば今売るよりも高く売れますよ」

「なるほど……最終的には高く売れるわけか」

「それに加工してくれる店を知ってれば、材料持込で毛皮のマントを作ってもらうことも出来ます。寒い時に毛皮のマントがあれば防寒具としても使えますし、冬以外でも夜営する時にはあったほうがいいと思います」

「……確かに将来的なことを考えると、今から用意するにしてもそうしたほうが無駄は少なそうだな」

「ですがマリクルが言ったように、自分達で皮のなめしができて損はないですから、毎回1枚は持って帰って練習するのもありだと思います」

「……やり方が分からんのだが」

んー、ぶっちゃけ私も脳みそ使うってこと以外あんまりよく分からんのだけども。なんか他にも方法あるんだっけ? 樹液とか木の汁とか? うん、よく分からん。前世でこういうのネット検索すると、大体脳みそ使う方法が上のほうに出てきた記憶があるんだけど……いやほら、今の私の場合【創造魔法】で済んじゃうから……

ちょっと『脳みそ使ったなめし方について』をイメージしながら【革加工】スキルを意識して考えてみる。スキルを強く意識して実際にやるふりをする感じだ。こうするとなんとなーくわかったりする時があるのだ。これ、森に引き篭もってた時に発見した裏技ね。

あー……うん、何となく分かった。とは言え、こういう知識も色々貴重だろうから、マリクルとトリエラの耳を寄せて小さい声で耳打ち。

「脳みそを捨てないで使うんですけど、まずは……」

細かいところを省いて大雑把かつ適当に説明すると、剥いだ皮の裏の脂質を削って洗って脳みそ塗ったくって暫く置いてまた削って洗って搾って生乾きになったら伸ばして乾かして仕上げ。という感じ。脳みそはなめし剤として使うわけだから、他のなめし剤があればそれを使ってもいい。あー、その内、他のなめし剤とか作ってみようかなあ……ただ、何にせよぶっちゃけ普通に面倒くさい。お金を払ってやってもらえるなら私はそっちのほうを選ぶ位には面倒くさい。やはり【創造魔法】は便利だ。

「手間が掛かるんだな」

「確かに今から練習して数をこなすって言うのは……」

「はい。ですから、今から練習するにしても1枚ずつ試す位で十分かと」

「なるほど、だから無駄にしない為にも店に頼むわけか」

「そのほうが確実ですから」

なんて話し込んでたら余り会話に混ざれないクロとアルルがいじけはじめた。やめて、マント引っ張らないで!

「レンちゃ、ひま」

「ねえレン、トリエラ達と話してばかりいないで、何かやってよー」

なにかって、こんなに人が大勢居るところで芸でも見せろとでも?

「レンちゃ、お歌うたって」

「ちょっとクロ、こんなところでレンに無理言わないの! 今だって大事な話してるんだから……」

「むー! トリエラ達ばっかりずるい!」

うーん、このままだと帰る時にクロが解放してくれそうも無い……仕方ないか。

「では、運の悪いジェネラルオークの歌でも、一つ」

「レン、いいの?」

「このままだと帰る時に離してくれそうも無いですから」

「うーん、それはそうなんだけど……ごめん」

「可愛いクロの為ですから、仕方ないです」

さて、そういう訳で一曲。あれだ。ハードラックなヒポポタマス的なサムシングだ。

るーる るーるる るーるるるーるーるー

るるるーる るーるる るーる るー……

うん、上手くまとめられなくて3番まで作ってしまったけど、別にいいよね? ついでに色々と教訓めいた事とか盛り込んでみた。

出る杭は打たれるとか証拠隠滅は大事とか因果応報とか、色々。著作権的なあれこれで歌詞は割愛させていただく。奴らは異世界まで取り立てに来そうで正直ちょっと怖い。

周囲の他の冒険者達も微妙な顔してるというかドン引きしてるけど、私は悪くない。

「レン……相変わらず酷い歌を作るね……」

そんなに褒めるなよ、照れるじゃないか。……うん、そうなんだ。記憶が戻って無くても孤児院に居た時からこういう微妙な歌を歌ったりしてたんだ。反省はしてない。

でもほら、クロとかアルルも喜んでるし、問題ないよね!

そんなこんなでトラブルもなく買い取りも終了。いや、ちょっとトラブルとも言いがたい事はあったんだけどね……商業ギルドでランクアップの処理があるから来て欲しいとか何とか連絡があったらしい、と窓口で言われましてね。

ともあれ、買い取り窓口で皮なめしをやってるギルド提携のお店を教えてもらったのでそちらに兎の毛皮を持ち込んで加工依頼も済ませた。なお、料金は前払いだった。ちなみに肉加工もここでやってくれるということなので、今後も持ち込みはまとめて出来る。手間が省けて楽ちんだね。ついでに肉を焼いてる時に考えてた通り、マリクルに塩を5kg程押し付けておいた。実に重そうである。え? 量が増えてるって? 気にしない気にしない。

「結局色々と世話になったな。この恩はいつか返す」

「そんなに気にしないでいいです。孤児院に居た時に色々助けて貰ってましたから。それに友達ですからね」

「それは……いや、そうだな。じゃあお前が困ってる時に手助けできるようなら、その時は助ける。それでいいか?」

「はい、それでお願いします。ああ、それとその角槍でゴブリンと戦おうとか思わないように」

「やっぱり無理か?」

「無理です。死にますよ。馬鹿共に言い聞かせるようにしてください。逆恨みされても困るので」

「わかった」

さて、今日はそろそろお別れだ。

「レンちゃ、いっちゃうの?」

「別に二度と会えなくなるわけじゃありませんよ。同じ街に居るんですから、また直ぐ会えます」

「うー」

「ほらクロ、あんまりレンのこと困らせない!」

「では、また」

あんまりだらだらと話し込んでると離れるのが辛くなるのでさっさと退散することにする。はあ……可能ならクロをお持ち帰りしたい。一晩中猫耳もふもふはむはむしたい。でも我慢なのだ。

あ、帰りに斜向かいの工房とやらでも覗いてこようかな? 魔力剣売ってるらしいし、何かの参考になるかも? 商業ギルドは面倒なので今日はパスの方向で。