軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

140 ゴブリンレギオン攻略戦 前編

なんだか微妙な空気になってしまったけど、話の続きに戻ろう。

「……リリーさん、戻って救援要請して、戦力が集まってから『 軍団(レギオン) 』攻略、と言うのは……時間的に無理ですよね?」

「そうですね、町からここまで片道2日かかってますし、急いで戻るとしても丸一日は掛かると思います。それから近くの都市に応援を要請してその戦力が来て……普通にレギオンの方が動いて町が無くなる方が先ですね。レンさんがノルンさんに乗って近くの都市まで……ううん、これも結局応援が到着するまで町が耐えられないでしょうし……」

ここでネルさんが提案してきた。

「町で迎え撃って防衛戦と言うのはどうかしら?」

「それは無理だよー。最低でも300以上のゴブリンレギオン相手に、あの町で活動してる冒険者の数じゃ3日も持たないと思うー」

「それもそうね、私も装備が無いし……」

こうして言葉にしてみると思った以上に手詰まりな気がする。

となると、後は現有戦力で『 軍団(レギオン) 』攻略。しかもなるべく早く。寧ろ今すぐに。

「……私達だけで攻略するしかありませんね。それも可及的速やかに」

「やっぱりそうなりますか……今までどおり奇襲と言うか搦め手ですよね?」

「それ以外に勝ち目が無いと思います。数的戦力差が有りすぎて正攻法じゃ無理です」

「やっぱりそうなるよねー」

「ちょ、ちょっと待って! 今から私達だけで『 軍団(レギオン) 』に挑むって言うの!? 私含めても4人しか居ないのに!? そこの従魔含めても6人分よ? 馬鹿な事言ってないで、もっと現実的な方法を考えてよ!」

うーん、確かに普通ならそうなんだけどねぇ……。

「んー、何とかなるんじゃないですかね? ……多分」

「多分って……この戦力差じゃ死にに行くようなものでしょ!? 自殺行為よ!」

「まあまあ、町に戻ってもどうせ負けるんだし、ここは取り敢えずやってみるという事でひとつ……」

「そうそう、やってみないと判らないよー?」

「ちょっと軽すぎるわよ貴女達!?」

気を張りすぎても仕方ないと思うけど、まあ実際軽いよねえ、私達……。でも実のところ、やりようは幾らでもあると思うんだよね、手間が掛かるとは思うけど。

……と、そんな訳でゴブリンレギオンが住み着いているという廃坑の近くまでやってまいりました! いや、近くって言ってもそこそこ離れてるんだけどね。少なくともここから巣の周辺は目視出来ないし、あっちからも気付かれない程度には距離がある。

とはいえここに来るまでに既に斥候と言うか見回りのゴブリンを10匹位倒してるんだけどね。

でもって現在木陰に隠れて作戦会議中。

「……どうですか、レンさん?」

「入り口は5ヵ所、それぞれに見張りが2匹ずつ居ます。その周辺には特に見張りは居ませんね」

んー、意外と少ない? となると巣の中にみっちり詰まってるのか……楽といえば楽だけど、面倒といえば面倒だなあ。

え? 巣が目視できないくらいに離れてるんじゃないかって? あー、そこはあれですよ。偵察を『飛ばしてる』んだよ。

具体的には『 飛行型偵察ゴーレム(ドローン) 』を。

魔導甲冑を作った時についでに偵察用に作って置いたんだよね、こんな事もあろうかと!

構造的にはローターと風魔法で揚力を得る感じになってて、ローターの回転音も風魔法で消して、機体全体を空色に塗る事で、ぱっと見は気付かれないような感じになってたりする。

で、その『 飛行型偵察ゴーレム(ドローン) 』にカメラっぽいものを取り付けて、ゴーレムに対して【ゴーレム同調】スキルを使う事でそのカメラの視界を私の脳内映像として認識する。

視界が2つあって慣れないと酔いそうなところだけど、そこは【マルチタスク】の効果で特に何も問題なく運用出来る。

問題があるとすれば燃費が悪すぎて『 飛行型偵察ゴーレム(ドローン) 』の長時間運用が出来無い事。大体30分で充填したMPが切れる。

やりすぎ? うん、さっきこのゴーレムを出した時、リリーさんに呆れられたよ。アリサさんはいつもの思考放棄してたし。ネルさんには変なものを見る目で見られた。一応口止めはしておいたけどね。

さて、次はどうやってゴブリンレギオンを攻略するか、か。でもまずは……。

「周辺を巡回しているゴブリンは全部で20匹と言った所ですね。こっちはノルンとベルに行ってもらいましょう……ノルン、お願いしていい?」

無言で頷いて無音で走り去っていく2匹……草の擦れる音も無いとか、こっわ。

ともあれ、これで事前準備は良し、と。

「では、ノルン達が戻ってくる前に作戦を詰めましょう」

「そうだねー、……って言っても、いつも通りだよねー?」

「ええまあ、その通りなんですが……。今回は初参加の人も居ますので、説明は必要かと」

「なるほどー、確かにー」

アリサさんと話してると、なんか力抜けるなあ……。

「えーと、今までの巣の攻略の時と同じ様に、巣の中のゴブリンを全て無力化してから突入し、手作業でトドメを刺していく事になります。巣の中のゴブリンは全て無力化されてるので反撃はありませんが、兎に角時間が掛かりますので覚悟してください。特に今回はレギオンという事で文字通りに今までとは数が桁違いですし」

「ちょっと待って、無力化? 無力化ってなに? 巣の中のゴブリンを全部無力化する方法なんてあるの!?」

ここでまたしてもネルさんから声が上がった。

「あ、もう少し声は小さくお願いします。一応風魔法で遮音してはありますが、ここは巣の近くですので……で、質問の答えですが、いくつかあります。効果に関しては今までの巣の攻略成功率が100%と言う点を鑑みていただければ」

「……なるほど、流石ゴブリンスレイヤーズと言われるだけの事はある、と」

「その呼び方やめてください、割と本気で」

「あ、ごめんなさい」

本気でやめて欲しい! っていうかゴブリンスレイヤーズって、女子だらけのパーティーの呼び名じゃないから!

「でも、実際はどの方法で行くのー? 今までの方法はどれも無力化は出来ても他の問題が無かった訳じゃないでしょー?」

「そうですね。今までの火責め水責め氷責め電流責め、どれも寒いだの臭いだのと不評でしたし、なにより今回は捕まっている人達も居ますので、その人達に影響が出ない新しい責めを考えました」

「レンさん、いやな予感しかしません……」

「大丈夫、今回はとても自信があります! 問題はトドメを刺す手間と、死体の回収の手間だけです!」

「それって、全然大丈夫じゃないと思います……」

「体力的な問題なら大丈夫です。こちらに疲労回復ポーションを用意しました。1人10本あります! 無くなったら言ってください、追加支給します!」

ね、対策はばっちりだよ! やったねリリーさん! だからそんな遠くを見る目をしなくていいんだよ?

そうこうしているうちにノルン達が戻ってきた。死体はノルンが【アイテムボックス】に回収済みらしい。完璧だね!

ではゴブリンレギオンの巣の攻略と行きますか。

まずは廃坑への入り口の見張りを全て倒す。これは中に連絡されないようにタイミングを合わせて一瞬で終わらせないといけない。

ネルさんにはひとまずここで待機して貰って、5ヵ所の入り口に私、リリーさん、アリサさん、ノルン、ベルがそれぞれ向かい、同時に見張りを排除。

タイミングを合わせる為にリリーさんとアリサさんに懐中時計を渡しておいた。後々何かに使うこともあるだろうから懐中時計はそのまま持っていてもらう事にした。

ノルンとベルには私が【従魔同調】でタイミングを指示。

見張りの排除が済んだ後はノルンに大急ぎで私が担当した以外の3ヵ所の入り口を塞いで貰う。これはいつもなら私が土魔法でやってた事だけど、ノルンには今回氷魔法でやって貰った。ベルは出力に不安があるので今回は無し。そして残った1ヵ所はリリーさんの担当。

ノルンは流石フェンリルだけあって問題なく入り口を埋める事が出来、リリーさんの方もMP回復ポーションを渡しておいたし、私が以前作ってあげた指輪の効果もあって何とか埋められた模様。

次はいつもの巣の攻略時にやってるのと同じ要領で【解析】を使って廃坑の構造と中に居るゴブリンの数を調べる。

おー、居るわ居るわ。

雑魚ゴブリンの数、実に470匹。

他には 魔法スキル持ち(スペルキャスター) が35、ホブゴブリンが同じく35。

更に上位種のゴブリンジェネラルが2、そして最後にゴブリンロードが1。しかもこのロード、より戦闘指揮向けのウォーロードだった。考えうる中で最悪の指揮個体だ。でも最悪の相手とは言っても、なんとかするしかないんだけどね。

総数は543匹。多めの予想の更に2倍近い数だったよ。食料の確保とかどうなってるんだ……。

廃坑の構造は思ったよりも複雑ではない感じかな? 割と規則的に掘り進めたというか、無計画に掘りまくったという感じではない。でも行き止まりだった所とか、幾つか坑道横を掘り広げて小部屋っぽくして居住スペースにしてるっぽいね。

一番奥まった所が一番広くなってて、そこがゴブリンロードの部屋。お宝っぽい反応もある。

捕虜が捕まってる部屋は2ヵ所で、それぞれ5人程度捕まっている。……いや、捕まって『いた』。

片方の部屋は生存者5人なんだけど、もう片方の部屋の方が生存者2人と……死体が3体。……やるせない気持ちで一杯になる。駄目だ、落ち着け、落ち着け、落ち着け……。

……ああ、何でこんなに簡単に落ち着くんだ。逆に嫌になる。いや、そうじゃない。今やる事を間違うな。

さて、情報は揃った。後はいつも通り私が敵の無力化をするだけだ。

という訳で取り出しましたのは上級の『睡眠ポーション』。以前、暴行未遂事件後に私が不眠症になった時に使っていたモノの超強力版になります。

で、これの蓋を開けて、中身に対して【創造魔法】を使って気化させまして、それを風魔法を使って洞窟内へと送っていく訳ですね。

こうする事で廃坑内のゴブリン共を全て深い眠りに落とす事ができる訳です。

ちなみにこの風魔法で毒を送る手法、恐らく以前の私への暴行未遂事件の時に犯人達が使ってた方法と同じだと思われる。

後々になってからあの時の状況を振り返ってみた時、犯人達が出てきた方向って風下だったんだよね。私、あの時ちゃんと風向きとか気をつけて行動してたんだよ。だけど連中は『風上から毒を流した』と言っていた。でもそれでは実際の風向きと矛盾する。

それで色々と考えて試してみた結果が、この方法だった。実際にやってみたら普通に出来たし、多分これで間違いないと思う。

私個人としては嫌な記憶しかない技術だけど、有用であれば使う事に躊躇はしないのだ。うん、私大分立ち直ってる。私、強い子!

睡眠ポーション改め睡眠ガスの効果は【解析】に【探知】と【気配探知】のあわせ技で確認できる。ゴブリン達の状態が変化していくのがわかるのだ!

あとは廃坑内の全てのゴブリンが睡眠状態になるまで延々ガスを流し込むだけ。いやあ、楽チン楽チン!

そんな事をしているとリリーさん達がネルさんを連れて合流してきた。

「……アリサ、レンさんがまた何か突飛な事をしている気がするよ」

「だいじょーぶだよリリー、いつもの事だよー!」

「そうだね、いつもの事だね……はぁ……」

うん、毎度恒例の酷い事を言われてる気がする!

「一体何をやってるの?」

「何をどうしてるのかは秘密ですが、中のゴブリンを全部眠らせてます」

「……全部?」

「はい、全部」

「全部……」

「ネルさん、この人のやる事を一々理解しようとしちゃ駄目だよー」

「そう……そういう人なのね……わかったわ……」

分かられた! 分かられちゃった、私!

「それで、あとは眠っているゴブリン共にトドメを刺していくのよね? 私、武器がないんだけど……」

あー、そうだったね。

なら何か貸してあげようか。

「それでしたらこちらをお貸ししますので、どうぞ使ってください。リリーさんとアリサさんにも、はい」

という訳で鞄から出す振りで【ストレージ】から剣を3本取り出す。いや、ネルさんが居るからね。念の為に注意しておかないとね。

「あれー? リリーはまだしも、私にもー?」

「はい。寝てるゴブリンのトドメを刺すだけで『フェザー』を汚すのも嫌でしょう?」

「あー、それもたしかにそうだねー」

「それにこれは切れ味が落ちないようになってますので、血糊とか気にしないでも大丈夫です」

うん、実はこの3本の剣、水魔法の掛かった魔剣なんだよ。属性剣じゃないんだよ。

具体的には魔鋼製の名剣をベースに【水属性LV2】【風属性LV1】【氷属性LV1】【攻撃強化LV2】【耐久強化LV5】、そして常時発動型のウェポンスキル【村雨】が付いてるのだ。【村雨】の効果は『常に刀身が水気を帯びていて血糊で切れ味が落ちなくなる』と言うもの。いや、今までのゴブリンの巣の攻略でトドメさして回るのが大変だったから、専用に作ってみたんだよ。念の為予備も含めて4本作って置いて助かったね。

「あと、こちらの布で口元を覆ってください」

んで、最後がこれ。【毒耐性LV5】が付いたスカーフ。これで口元を覆っておく事で睡眠ガスを無効化して廃坑内で行動できるという寸法。実際には身体の何処かに結び付けておくだけでも効果はあるんだけど、一応口元覆っておいた方が効果が高くなる。

え? ノルン達? 大丈夫大丈夫! ノルン達は既に【毒耐性】持ってるから! と言うか、私が持ってる【毒耐性】スキルを【技能付与】スキルを使って貼り付けた!

……いや、魔導甲冑を作ってる時にノルン達の毒への対策何とかできないかなーって考えて作ったのがさっきの対毒スカーフなんだけど、ノルン達が身につけるの嫌がったんだよね。

あんまりにも嫌がるものだから私キレちゃってね……ノルン達の為を思ってるのにー! って。

で、勢いでノルン達自身に対して【技能付与】使ったら何事も無く【毒耐性】スキルがくっつきましてね……。

愕然としましたよ。

『任意の対象に自身が持つスキルを付与する』って、生物にも使えるのかよ! ってね。

いや、流石 固有(ユニーク) スキル。【創造魔法】があまりにもトンでもない効果だったから忘れがちだけど【技能付与】も【魔法付与】も【創造魔法】と同じレアリティなんだって事を忘れてたというか、それに気付かないで効果が下だと思ってたというか……。

うん、これはばれたら色々不味い奴その2だ!

でも有用性が恐ろしく高い事だけは確かだったので、取り敢えず魔力制御系のスキルを一通りノルンとベルにコピーしておいた。

ベルは色々加減とか利かなくなったりしても困るので、低レベルで。ノルンは程ほどな感じで。ノルンは流石にすぐに慣れてたのでやはり私の女神は凄いのであった。でもベルはかなり手こずっていて、今でもまだ完全には使いこなせていないので【技能付与】を使った促成育成はあんまり宜しくないっぽい。

それとこっちはまだ試してないんだけど、多分【魔法付与】を使えば適性を持ってない相手にも属性魔法を習得させる事が出来ると思うんだけど……私、属性魔法って全部LV10なんだよね……。

ちなみに【創造魔法】とかの 固有(ユニーク) スキルは流石にコピーは無理でした。あと、【ストレージ】も無理。ただ【ストレージ】はコピーできなかったけど代わりに【アイテムボックス】が貼り付け出来た。つまり【ストレージ】は何らかの方法で進化した【アイテムボックス】だった……? と言うか私って【アイテムボックス】持ちを量産できるの……? ちょっと不味すぎない……?

よし、これはリリーさん達にも秘密にしよう! 絶対に! 私はあの日、そう固く誓ったのさ……。

って斜めに逸れまくったね。

「なにこの剣……魔剣……?」

おっと危ない、またネルさんに釘刺しておかないと。

「入手経路は秘密です」

「そう……分かったわ。ちなみに、譲ってもらえたりは……?」

「代金、払えます?」

「……無理ね。……ああー! もう!」

まあ売る気は無いけどね。なんてやっているうちに廃坑内のゴブリンが全て眠りについたみたい。

さて、ゴブリンレギオン攻略と行きますか!