軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

109 え? やっぱりこうなったって? うっさい!

ベクターさんに剣を打ち、その後はいつも通りに親方経由で大量の鋼材を購入して素材剣の大量作成をして過ごす事、数週間。

11月に入って直ぐ位の頃に冬の主の大規模討伐依頼が出されたらしい。参加条件が色々決まってるらしいけど、私は元々受けられないし正直詳細はどうでも良かったりするのでそちらは割愛。

ただ、いざそういう情報が出回り始めると段々と不安になって来る訳で。

私の造った剣で何とかなるのだろうか? いや、別にベクターさん一人で戦うわけでも無し、他にも大勢の冒険者も居るし、騎士団だって出るんだからなんとかなるとは思うんだけど……いや、でももしも倒せなかったら? 街の住人の避難とかどうなってるの?

色々情報を集めた所、オニールの住人は別に避難などはしてないらしい。親戚や知り合いがいる別の街に自主的に避難する人は居ても、行政側では特にそういった対応はしてないとの事だった。

討伐失敗した後に避難勧告を出しても、冬の真っ只中に主の影響で豪雪の中を逃げるとか、無茶すぎじゃない? 何考えてるの?

とは言え、頼る当てもない人だって大勢居るわけで、日々の暮らしもある。冬越えの用意でお金を使って蓄えも乏しい中、他所に移るなんて難しい。

そう言った諸々を考えるとこの対応も間違いじゃないと言うか、妥当と言うか……そう言う状況を考えれば、孤児達が逃げる先なんてあるはずも無く……

あああ、一体どうすれば……

情報を集めたら集めたで却って悶々とする羽目になり、鍛冶修行にも手が付かなくなって数日経った頃にトリエラ達女子メンバーが私を訪ねてきた。

「と言う訳で、レンちゃんも一緒に行こう!」

いや、どう言う訳? 意味が分からないよ?

詳しく話を聞いてみた所、冬の主討伐の話を聞いたトリエラ達は全員で孤児院の様子を見に一時帰省しようと言う事になったらしい。

更に色々聞いてみると、討伐が失敗した場合に皆を連れて逃げる為だとか何とか。

なるほど、その手があったか!

ちなみに私を連れて行く派はリコ、アルル、クロ。反対派はトリエラ、マリクル、リュー、ケイン。ボーマンはいつも通り、どっちでも良い派。

反対派が反対する理由は当然、私の事が出資者の商人にばれないようにする為。トリエラが言うには、孤児院の面々は私の事を洩らしたりはしないだろうけど街の人の噂になってそこから知られる可能性があるから、と言う事だった。

なんでも私はモテモテだったらしい……全然気づかなかったんだけど、マジで?

たとえ顔を隠していてもトリエラ達と一緒に帰ってくればそれだけで怪しいし、それで街の子供達に感づかれたらそこから親の方に話がいくかもしれない。

例の商人はオニールに小さい支店も出してるので、世間話などでそこまで話が回るかもしれないとか何とか……うん、確かにその通りになりそうな気がする。

でも非常時の避難の援護の為、と聞いて私はもう行く気満々になっていた。何か他に出来る事がないかって悶々としてた所に自分でもまだやれる事があったとなってはやらざるを得ない。要は街に入らなければ良いんだから、どうとでもなる。

と言う訳で、私も同行する事にした。

「本当にいいの? 見つかるかもしれないんだよ?」

「大丈夫です、トリエラ。対策はちゃんと考えてあります」

オニールの街から少し離れた所にそこそこ深い森があるので、その奥で自宅を出して野営すれば良い。それは野営とは言わない? いや街の外で寝泊りするんだから野営でしょ? とは言えそんな計画は今はトリエラには伝えない。

トリエラ達の準備はほぼ終わってるとの事なので、翌々日には王都を出る事になった。親方達は渋い顔をしてたけど、育った街が気になるし恩師の安否も心配だと言えば反対はされなかった。

色々と準備を整えて翌々日、各人西門前に集合し、合流。そのまま外に出て暫く徒歩移動。

トリエラ達は一旦大家さんに鍵を預けて来たとの事だった。家賃も先払いして家の維持管理をお願いし、食料品は全て持ってきて薪や日用品は置いたまま。毛布や毛皮など、最低限の防寒具や野営用の道具だけ持って来たそうだ。男子メンバー全員が大荷物を背負ってるのはそう言う理由らしい。

11月も半ばになっていて既に雪が降っており、例年通りならはっきりいって徒歩移動は自殺行為。

とは言え、今もオニールへ食料品等の資材搬入は続いており、街道の雪は踏み均されていて移動する分には例年に比べればまだマシ。いや、ぐちゃぐちゃになって泥道になってる所もあるから、考え物かもしれない?

まあ、私はそんな道を歩いて行くつもりはないんだけど。体力無いしね? と言うか今もノルンに乗ってるし。

そんな訳なので王都から1時間ほど歩いた辺りで街道からやや離れた所に林でも無いか探す。うん、馬車を出そうかと思いまして。

「レン、何か探してるの?」

足を止めてきょろきょろと見回してたらアルルに声を掛けられた。

「ちょっと見晴らしの悪い林でもないかなと思いまして」

「……あ、もしかしてトイレ? 寒いもんね」

……違う! そうじゃない!

軽く否定しても信じてもらえなかったので説得するのは諦めた。でも代わりに他の女子の面々もトイレ休憩したいと言い出した為、全員で手頃な林を探す事に。

「めんどくさい、別にその辺ですればいいだろ」

「バッカ、ボーマン! こう言うのはそういうもんじゃねーんだって! 駄目だな、お前!」

「リューに馬鹿にされた……つらい。寒いしもう寝たい」

ボーマン……やはり駄目な子のままか。そしてリューが紳士っぽい事を言っててちょっと感心。でもこっちに聞こえないように声を小さくするともっと良かったと思うよ。

15分程進んだ所でいい感じの林を発見し、女子全員でこそこそと茂みの影に……男子は街道で待ちぼうけ。あっちも用を足したいらしいけど、女子優先である。野郎は女子より我慢できるでしょ? 頑張れ!

私以外の女子が順番で済ませてる間に【ストレージ】から馬車を取り出す。ちなみに工房に居る時にちまちまと改良を重ね、色々と高性能になってたりする。

そしてそんなものを取り出せば当然みんなに驚かれる。

「ちょ、なにそれ!?」

「馬車です」

「馬車って、どこから……って言うか馬!?」

「ゴーレムですよ。みんな終わりました? 寒いので早く乗りましょう」

「いやいやいやいや!?」

説明するのも面倒なのでさっさと押し込んで街道に戻ろうとしたけど、拒否反応が激しいので仕方なく私が一人御者席に乗って移動する事に……そして馬車を見た男子面々がトリエラ達と同じ反応を返してくる。その反応、流石にもう飽きたからさっさと移動しよう?

説明が面倒になったのでいいから早くしろと急かし、何とか馬車に乗せる事に成功。

ちなみに馬車に乗ってるのは女子のみ。野郎共は歩け歩け!

とは言え、背負ってた大荷物は馬車の収納スペースに格納してあげた。流石にそこまで鬼畜ではないのです。

馬車の搭乗箇所は中に座席三つ、御者ゴーレムは使わないので収納すれば御者席に二人。御者席の後部スペースはベルが丸くなってるし、屋根の上はノルンの指定席。

席決めは特に揉める事も無く、持ち主の私は常に中に座る事になり残りの4箇所は交代で女子が使用する事になった。

尚、改良によって馬車のサイズも若干大きくなってるので以前よりも余裕を持って座れるようになっており、快適さは向上してたりする。

野郎連中は背負い荷物が無くなったので毛布と毛皮のマントを二重に羽織って防寒対策。いや、馬車がもう一台あれば良かったんだけどね……無い物は無いので、仕方ない。

ちなみに私が女子に甘い事を知ってるので男性陣からは文句は出なかった。成長したではないか! とは言え馬車に乗れない分、休憩の時には温かい飲み物とかサービスするから、頑張れ!

雪中行軍は非常に体力を消耗するので休憩は小まめにとる。馬車の移動速度は徒歩の男子達に合わせてるのでそんなに速度を出せない。雪の中を走らせるほど鬼では無いです。

街道脇に馬車を移動させて停車し、馬車の横合いに骨組みを組んで簡易型のオーニングテントを張り、雪避けにして休憩。折りたたみテーブルと椅子も出し、男子にお茶と軽食を振舞う。

「くわー! あったけえ~!」

「寒すぎる……手と足が痛い……」

防寒仕様のブーツや厚手の手袋で対策はしててもやはりこの降雪の中の移動は堪える様で、マリクルとケインは無言でお茶を啜っている。ブツブツ文句を言えるリューとボーマンはまだ余裕ありそう? と言うか無駄に体力使わないようにした方がいいと思うよ、いや本当に。

尚、馬車の内部は私謹製の小型暖房魔道具により快適に過ごせる。御者席も背中側には温風が当たるようになってるのでそこまで辛くはない。

「うーん、せめて御者席の方は男連中もローテーションに入れてやれない? 中に同乗するのはレンが嫌がるだろうから諦めるとして」

「寒さできつくなるのはトリエラ達なので、トリエラ達が構わないというなら別にいいですよ」

「あれ? 反対されるかと思ったのに、いいの?」

「ちょっとこの寒さは洒落にならないので……目の前で死なれると私も流石に」

「それもそうだね。って言うか、前のあれですっきりしたから当たりきつくするのやめただけでしょ?」

「……はぁ、トリエラには敵いませんね。まあ、そんなところです。少しは手加減してあげようかと? リューも成長してますし」

ちょっと甘い気もするけど、気にしすぎるのも疲れるので肩の力を抜く事にしたんだよ。でも自分の性格を考えるとそれは逆に毒舌率が上がりそうなだけの気もするんだけど。

と言うかあの二人に関してはもうどうでもいいって気持ちが出始めてたりする。勝手にやってろ、私はもう知らん。

小休憩の後、トリエラの提案を私が受けた事を聞き、リューが大喜び。流石にきつかったらしい。

徒歩組も入れ替わり立ち替わりで交代するようになった事で移動速度が上がり、今日は思ったよりも移動距離が稼げた。とは言え、このままだとオニールに着くのに一週間近く掛かりそうな感じ? うーん……とは言え、地図がないから良く分からないなあ……

何度か小休憩を挟みながら移動して行くうちに日が落ち始め、丁度いいタイミングで野営地に着いたので今日はここで休む事になった。私が馬車で寝られると説明した所、やはり驚かれた。

ちなみにトリエラ達はまともなテントを持ってないので焚き火を囲んで固まって寝るつもりだったらしい。いや、それ死ぬでしょ!?

馬車を使えば五人は寝られるけど、四人は外で寝る事になる。まさかまともなテントを持ってないとは……そのテントとやらを見せてもらったけど、これをテントと呼ぶのは、流石にちょっと……

朝起きたら凍死してました、なんて事になったら流石に寝覚めが悪いので、即興で折りたたみテントを二張り作成し、男子に使わせる事に。

テントのサイズは二人が横になれるサイズなので、これで男子四人も何とかなる筈? 大層感謝され、後で買い取りたいとの事なので譲渡する方向で話が纏まった。

食事はトリエラ達がローテーションで作ると言ってきたんだけど、そこは私が譲らなかった。私一人だけ馬車の中でぬくぬくとしてたので、少々ばつが悪くてね……とは言っても女子は手伝いを申し出てきたのでそれは受ける事にした。

男子も手伝うと言って来たけど、余り人が多くても逆に邪魔なので薪拾いに行かせる事で役割分担。女子も手伝いは一人居れば後は邪魔になるだけなので、手の空いたメンバーは適当に設営させる。と言っても竈とかは私の土魔法で一発なんだけど……

設営自体は割りと直ぐ出来る。

馬車の御者席は開放されてる前面部になめし皮のシートを張って密閉する。小休憩の時と同じ様に雪避けに馬車の左側面にオーニングテントを立てて、その正面に焚き火用の石組みを作ってその更に向こうにテントを一つ。馬車から焚き火側を見た時の左側にももう一つテントを張り、なるべく密集する様にする。

調理用の竈は焚き火に併設。馬はゴーレムなので世話も雪避けの準備も必要ない。他の馬車の人達は大変だねえ……

ぼちぼち手を抜きつつ食事を用意し、さっさと食事を済ませる。お風呂に入りたいけど流石に無理なので、諦めてリリーさん達と旅してた時と同じ様に私の【洗浄】で済ませた。風邪を引かれても困るし、臭くなられても嫌なので男子も処理する。私の慈悲に感謝するがいい!

「……【洗浄】って、誤魔化し程度の効果しかないんじゃなかったっけ? ちょっと効果が凄すぎて、意味がわからない……」

あー、それ、私も疑問に思って色々研究してみたんだよね。

多分魔力が高いからとか、知識が無いから効果が弱いんじゃないかなとは思ってたんだけど、魔法ってかなりの部分が術者のイメージに頼ってるみたいでね?

色々試してみた結果、前世の知識があって想像力が豊かな現代日本人だった私は、凄まじく高い効果を得られるようになったのだ! そこに天人由来の高すぎる魔力! これもチートの一種じゃない?

でもやっぱり気分的にお湯で拭うとかはしたいなあ、って思うのは日本人だからでしょうかね?

不寝番はノルン達がやってくれるので、警戒もせずに早めに就寝。早く起きれたらそれはそれで早めに移動開始すればいいだけなので、特に反対意見も無くみんな寝る事になった。

テント組の男子には即興で湯たんぽを作って持たせた。最初は焚き火で石でも焼いて布に包んで持たせようかと思ったけど、直ぐ冷めるので長持ちしたほうがいいだろうと言う事で変更。

ちなみにこれも欲しがったのは言うまでもない。あー、はいはい。後で売ってあげるから、ちょっと落ち着け!

私達以外にも野営してる馬車が十数台あったけど、不審者が居ればノルンが噛むだろうから問題なく安眠である。

それじゃ、おやすみー……ぐう。