軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

皇帝の首

パトリックの髑髏の兜が突然、左に数センチ横にズレた。

カーンと甲高い音を立てて、放たれた矢が弾かれ、軌道を変えてザビーン兵士に刺さる。

「馬鹿な! 私の狙いを外しただと⁉︎」

リックが叫びながら次の矢を弓につがえようとする。

(冥界神、サンキュ)

と、パトリックは心の中で感謝しながら、這いつくばっていた体を起こすと、弓矢をつがえようとしていたリックに向かって走り出す。

右手に握ったククリナイフを、矢を弓につがえ終えて放とうしていたリックに投げつける。

ククリナイフがリックの胸に刺さり、放とうとしていた矢が、明後日の方に飛ぶ。

倒れたリックの顔に蹴りを入れて周りを見渡すと、そこにルドルフの顔を見つけたパトリックは、

「よう! 負け犬の第3皇子ルドルフじゃないか。久しぶりだな。幽閉されてるって聞いてたがまだ生きてたのか? わざわざ俺に殺されにきたのか?」

「うるさい! 皇位継承権を放棄して、兄のために働くと言って出してもらったのだ! 貴様に復讐するチャンスを得るためにな!」

「ほう! やれるもんならやってみろ!」

そう言って殺気を解放する。

パトリックの殺気を全身に浴びて、

「ヒッ……」

と、小さく声を漏らし腰を抜かしたルドルフ。

パトリックは歩いてルドルフに近づくと、腹に一発蹴り入れてから、左手に握っていた剣鉈を腹に投げつけた。

ルドルフの腹に刺さった剣鉈は、ルドルフが床を転げ回ることにより、さらに傷口を大きくし、血液が床を真紅に染めていく。

パトリックは、ルドルフに興味を無くし、近くにいる兵士を左腰から抜いた刀で、次々と斬り捨てながら、

「お初にお目にかかる、ザビーン皇帝陛下。スネークス王国国王、パトリック・フォン・スネークスだ。その命貰い受けに来た!」

そう言って、玉座から逃げようとする皇帝の背中に、右手に逆手に持ち替えた刀を、渾身の力で投げつけた。

刀が背中に刺さった皇帝が、叫び声を上げて床に倒れる。

「父上!」

その光景を見て、思わず声を上げたネルギス。

「父上? 貴様コイツの子か? ならば死ね!」

そう言って、ネルギスに近づこうとしたパトリックに、

「まて! 皇帝の位をお前に譲る! な! 頼むから殺さないでくれ!」

と、皇帝が息子の命乞いをする。

「それ、似たようなことをエルフやドワーフ、獣人達が言ったと思うが、お前はそれを聞き入れたのか?」

パトリックが皇帝に言うと、

「奴らは人ではなく、亜人だ、言う事を聞く必要はない。人族はこの大陸の覇者だ。数多き者が支配するのが、生物の摂理だ」

「なるほどな、一理ある」

「な! そうだろうそうだろう!」

と、少し安堵した顔の皇帝に、

「とでも言うと思ったかクソ野郎」

と、皇帝の顔面にドロップキックを入れるパトリック。

吹っ飛んだ皇帝の背中から刀が抜け落ちた。

ザビーン皇帝は、なんとか体を起こし這うようにパトリックに近づきながら、

「わ、私や息子を生かしておけば何かと有利だぞ。まだ支配していない国には、私から話を通してやるし、息子のネルギスは宰相としても、軍の指揮官としても優秀だぞ。今後の統治に無駄な作業が減るぞ」

鼻が潰れたのだろう、ダラダラと鼻から血を流して皇帝が言う。

「いつ裏切るか分からんやつを、手元に置くつもりは無い!」

そう言ってザビーン皇帝に近づくパトリック。

「まて! まってくれ! そうだ、娘を! 娘をやる! まだ歳は12だが年齢より幼くて見えて胸も無い! 聞いてるぞ! そういうのが好みなのだろ?」

そう言って、両手をパトリックの静止を促すように突き出した皇帝。

「人をロリコンみたいに言うな!」

そう言ってパトリックは、皇帝の首めがけて、右回し蹴りを喰らわせる。

ザビーン皇帝が吹っ飛び、ネルギスの目の前に倒れてきた。

ネルギスは地面に転がった父親を見て、

「ひぃぃいいっっ」

と、悲鳴を上げながら剣を抜き、パトリックめがけて走り寄る。

パトリックはネルギスが振り下ろした剣を、体を開いてかわす。

かわされたネルギスが、慌てて止まろうとしてつんのめる。

が、勢いを殺せずうつ伏せに倒れたネルギス。

パトリックは、倒れたネルギスの頭を、鉄板の入ったブーツで思いっきり蹴り飛ばした。

鈍い音がし、ピクピクと痙攣するネルギス。

「貴様っ! よくも息子をっ!」

倒れていた皇帝が起き上がり、怒りに我を忘れ自身の左腰にある、皇帝の証でもある短剣を抜いて切り掛かってくる。

パトリックはその短剣をかわすと、皇帝の腕を掴み手繰り寄せると、右肩に担ぎ柔道でいう一本背負いをかける。

ザビーン皇帝の体が、弧を描くように舞い、背中が床に叩きつけられる。その反動か皇帝の手から短剣が離れ床に転がる。

皇帝は衝撃でまだ動けない、いや気を失っているかもしれない。

パトリックはゆっくり歩いて、落ちた皇帝の短剣を拾うと、仰向けに倒れたままの皇帝の喉に、突き刺した。

喉から流れ出る皇帝の血液を見つめてパトリックは、

「だいたい側室とかソナにバレてみろ、俺は生きたいと願ったのに、すぐあの世に送られちまうわっ!」

誰も聞いていない呟きだった。

何故なら、その部屋で生きている者はパトリックだけなのだから。