軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キレる

「メンタル王国を乗っ取ったのか?」

プラム王城で、部下からスネークス王国建国の報告を聞き、書物を見ていたアントニー・ディス・プラムが、頭を上げて問い返した。

揺れる金色の頭髪は、獅子族の王家特有の色である。

「いえ、他領を巻き込んで独立したようです」

と、部下が答えると、

「まあ、言いなりで終わるようなタマじゃないのは解ってた事だしな」

「はい、問題は我が国に対してどう言ってくるかです」

そう言い、心配顔の部下。

「どう思う?」

「スネークス王国にとって、我が国を取り込む利点が有るとするならば、食糧が豊富という一点かと。ですがスネークス王国も麦の産地ですので、食糧事情は悪くないはずですから、ここは友好条約を結んで、互いに交易して、揉めないようにするのが得策かと」

「だな、取り込まれたら何言われるか分かったもんじゃないからな! とりあえず外交大使を遣わせて、なんとか友好条約の締結をさせろ! かなり譲歩しても構わん! 殺されるよりマシだ!」

「はっ!」

という事で、スネークス王国に派遣された、狐獣人のエリオ大使は、スネークス王国大使とメンタル王国にある、スネークス王国大使館で会談する事になる。そしてよせば良いのに、早く締結して帰りたいがために、余計な事を言ってしまう。

エリオはパトリックに会った事がないし、翼竜も見ていない。

噂話に聞いただけだ。騒動の時は他国に居たからだ。

運が悪かったとしか言いようがない。

あの騒動の時に国に居たなら、

「新興国だが、対等な条件で友好条約を締結してあげましょう。そちらにとっても良い話でしょう?」

などと言わなかっただろう。

その言葉を聞いたスネークス王国の子爵であり、外交官でもあるモルダー・フォン・レイブン大使は、

「ほう。その言葉、我が陛下にお伝えしてもよいので?」

と、問い返した。

それを聞いたエリオ大使は、プラム王国は新興国に対して友好的な国だと伝えてくれるのだと思い、

「もちろんです」

と、返した。

〈エリオの悲劇〉の幕開けである。

以後、エリオ大使は常にスネークス王国から無理難題を押し付けられ、本国から怒られる人生を歩む事となる。

後に〈エリオの悲劇〉は、とある者が書籍化して大ベストセラーとなり、各国で劇まで上演される。

取り返しのつかないミスの怖さを伝える物語として。

なお、この物語では、パトリックは極悪な王として描かれており、この小説や劇を観た他国の国民から、極悪非道な人物と認識されることになる。

まあ、間違ってはいないか。

そして、失言を失言と認識しないまま、本国に帰ったエリオ。

王城には[手応えアリ]と、報告して、普通に生活していたのだが、突如王城より来た兵士達に連行されることになる。

時はエリオが呼び出される少し前。

プラム城の廊下を、慌ただしく走る男が1人。王の執務室のドアをノックもせずに開けると、

「陛下! 上空より漆黒の翼竜が接近中です!」

「何っ? 奴が来たのか? いったい何の用だろう? 友好条約締結のために、わざわざ王自ら来るとは考えにくいが?」

「何かは分かりませんが、自らというのが気になります、良からぬ予感すらします」

「よせ、そんな事を言ったら、本当に良からぬ事を招くぞ?」

などと言い合っていると、

ドーンッ!

と、大きな音と共に、城全体に揺れを感じた。

同時に凄まじい殺気も。

「アントニー! 出てこい! 貴様ウチと対等な友好条約だぁ? ふざけた事言いやがって! この城潰してやろうか! さっさと出てきやがれっ!」

と、大声で叫んだパトリックの声が、城に響く。

「ほらみたことか! お前があんな事言うから! マズいぞ! めちゃくちゃ怒ってる!」

と、アントニーが少し怯えた表情で言う。

「私のせいにしないでください! しかし、対等ってどういう事でしょう? 譲歩しても良いと陛下はおっしゃいましたよね?」

と、部下も困り顔で言う。

「ああ言った! エリオ大使にも譲歩して構わないから早く締結しろと、直接言った! とりあえず至急エリオ大使を連れてこい! 私はとりあえず奴の機嫌をとっておく! 急げ!」

慌てて走るアントニーに、

「はいぃぃ!」

と、走りながら返事をした部下であった。