軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

チンドン屋メアリー

「ええい。また、失敗しただと!」

「申訳ございません。チィナの奴ら失敗しました・・」

ワシはグルジア大公家の当主である。

失敗続きだ。暗殺、呪術さえ失敗した。対象はもちろん・・・

「・・もう、放っておきませんか?王妃殿下はそのうち亡くなります。暗【黙れ!】」

「どこに耳があるか分からないぞ!」

「失礼しました!」

王妃ローズマリーはダイア侯爵家の出のくせに陛下は愛しておられる。

ワシの娘、ミレーヌを側妃、いや、王妃にすえて見せる。

「ミレーヌはどうした?」

「旦那様・・・ミレーヌ様は庭園で散策をされております・・・」

「こんな大事な時に」

庭に行くとミレーヌが歩いていた。奇妙だ道が白い。

「何をしているか?」

「はい、小麦の道を歩いておりますわ。使用人達に蒔かせましたわ」

「・・・何故だ?」

「はい、散歩をするとどうしても靴に土がつきますわ。お父様から買って頂いたお気に入りの靴ですの」

「さすがミレーヌだ」

今年で18歳か、学園を首席で卒業した。婚約者は作らなかった。そろそろ納品の時だな。

「お父様、私、王妃になりたいですわ。いつ、なれますの?」

「もうすぐだ・・・次の手は何かないか?」

「そうですわ。ローズマリー様は民が好きな方ですわ。民に噂を流させましょう。民は愚かで怠け者。悪口には飛びつくでしょう。ローズマリー様は大好きな民に罵倒されるのですわ」

「吟遊詩人か?」

「すぐにバレますわ。もっと良い手がありますわ。民草に人気のウキヨエという醜悪な絵にローズマリー様を描かせて、如何に王妃に相応しくないか教えて差し上げますわ」

「うむ。さすがミレーヌ、手配しよう」

お抱えの絵師にウキヨエを真似させて風刺画を描かせた。

「これを王都中にはるのだ。夜のうちだ。必ず死んでも良い奴に頼め」

「「「畏まりました」」」

☆☆☆王都市中

・・・翌朝、王都中は大騒ぎになった。ここ、メアリーの所属するトーマス商会のシマも例外ではない。

「何なの~、この絵は~」

「・・・メアリー様、これは現王妃殿下を風刺しているようですわ」

「何じゃ、落書か?」

シマを見回りしていたら、変な絵が貼りつかられていた。ヨサブロウを護衛に、マリーさんが御者だ。

浮世絵だ。この国の絵師に描かせたな。

怪鳥が赤子の入った籠を掴んで飛んでいる。

王妃殿下らしいテアラを被った女性が舌を出している。笑っているようにも見える。悪趣味な内容だ。

そして、文には、聖女を産んだが、娘が自分よりも人気者になるのが嫌でメアリースチュアート様を・・・殺したとすれば納得できる。

それが本当なら聖女は貴重である。国の大損失である。と書かれている。典型的な怪文書だな。

聖女が貴重?メアリーちゃんも聖女っぽいな。

「ハニャ?マリーしゃん。冒険者でも聖女がいるの~」

「メアリー様、その聖女様は降ろすものです。精霊の力を借りています。女神様の加護を受けた聖女様は光輝いていると言いますよ」

「へえ、そうなの~」

「メアリー姫、どうしたらよいかのう」

割れ窓理論ではないが、このような絵があれば、悪口を言っても良いんだと、治安が悪化する恐れがある。

誰が貼ったのか?元貴族の料理人ヤンさんに聞いた。

困った顔をしているな。

「それは・・・反王妃殿下派閥でしょう。王妃殿下は赤子を怪鳥にさらわれて以来。伏せがちです。関わらない方が良いですね。私はそういうのが嫌で串焼き屋になりました・・・」

「なんなの~、王様に子供はいないの~」

「はい、それ以来、王妃殿下は・・・公務も出られないくらい焦燥しています。およそ七年前ですね」

ふむ。令嬢教育を受ける前に家を出たから、王族のことは分からない。

とにかく、これを放置したら・・・

「不敬罪で大勢が逮捕拘禁されるの~?」

「ええ、捜査は行われるでしょう・・」

分かった。マリーアントワネットは贅沢だとの張り紙がパリ中の路地の壁に貼られたが、その絵、印刷から見て、どうみても、市民が自発的にしたものではない。大金が掛かっていた。

派閥抗争だな。ナポレオンの奥さんの方が沢山国費を使ったのに・・・

「決めたの~、張り紙を剥がすの~」

「「「「おう」」」

「はい!」

更にヨサブロウさんが犯人を捕まえた。

「知らないおじさんがはったら、お小遣いをあげるからと・・」

「悪いことはしてはいけないの~、不敬罪は死刑まであるの~、次やったらメアリー泣くの、泣いて泣いて泣きまくるの~」

「ヒィ、やめて下さい!メアリー様が泣いたら、子分千人とドラゴンが襲ってくるとの噂です!」

失礼な。どんな噂が流れているのか?

少なくても、トーマス商会のシマ内では誹謗中傷する張り紙は厳禁として事前の審査が必要な許可制にした。

「メアリー様、大安売りの張り紙です」

「掲示板にはるのを許可するの~」

敵が見えない。嫌な予感がするな。

なら、撃って出るか。浮世絵を誹謗中傷の道具に使うのも頂けない。

☆☆☆王宮

ワシは王宮で上奏する。当家は5代前に別れた大公家だ。

ノース王家とは遠い親戚に当たる。

「陛下、上奏します。民の間で不穏な噂が流れています」

「放って置くがよかろう・・・」

直接、王妃殿下を批判しない。王妃に対する不敬罪で大勢の民を捕縛して、評判を悪くするのだ。

さすがミレーヌだ。

「それが王妃殿下ローズマリー様の事です。王妃に相応しくない。聖女をミスミス怪鳥にさらわれた・・・いや、失礼、民ごときが申しております。王妃殿下に対する不敬罪で逮捕いたしましょう」

王の顔が変わった。

この男、王妃を溺愛している。側妃を取らない。

「まずは調査だ」

しかし・・・

「グルジア卿よ。そのような噂は一切ないが、民政官の報告だと、それどころか奇怪な馬車に乗る幼女の噂で持ちきりだぞ。卿は耳が老いたか?」

「え、そんなはずでは、確かに・・・」

「確かに?」

気づかれたか。

「確かに、私は老いましたな・・・」

また、部下を叱責した。

「貴様らは無能を絵に描いたようなものだ!」

「それが、剥がす者たちがいます・・・」

「そして、それを打ち消すように、変な馬車に乗った幼女がビラをばらまいています」

「民はこぞって幼女のビラを、ウキヨエの上にはり付けております・・・」

「何だと!王妃派か?」

☆☆☆王都市街

ピ~ヒャラララ~♩ドンドンドン!ドンドン!

「ヒン、ヒヒン~ン」(人がいっぱい)

「串焼きストリート!大バーゲンなの~、お得なの~!」

ドン!ドン!

ふう。チンドン屋をやった。正しく騒ぎを起すのだ。今、チューリップ型の馬車で人を引き連れて王都を回っている。各シマのドンの了解は取ったぜ。

チンドン屋の芸人は冒険者達に依頼した。

「ヘイヘイ、お嬢様たち来て下さい!」

東方諸国のチィナ服、ワアク国のキモノを着せている。正にチンドン屋だ。

そう言えば、最後のチンドン屋は何年前なのだろうか?

そして、ばらまくビラには、招きネコとか、ドラゴンの絵とか縁起の良い物にした。

「縁起が良いよ~、これを不吉な絵の上にはると幸運が舞い込むよ!」

シマ内は全て撤去した。しかし、他の所はまだだ。だから上書きするように宣伝している。

まあ、これは対処療法に違いない。

これで少しは優しい世界になったか?

私はジ〇リヒロインか?両手で顔を覆って泣くのか?

・・・一方、幸か不幸かメアリーの名は権力者の耳には届かなかった。

☆☆☆王宮

「失われた王女メアリースチュアートの捜索を強化せよ。戸籍を全て当たれ。戸籍のない子も7歳になる子を探すのだ・・・」

「陛下、王都以外には全て捜索は完了しました・・・先日のゼークト領が最後です」

「もう一度だ・・・」

「陛下、王都でちょっとした騒ぎになっている幼女がいますが・・・」

「王都にいるわけがなかろう・・」

・・・まだ、メアリーは王都の一裏社会の幹部幼女に過ぎなかった。