軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

779.邪神フォーレン

『ど、どういうことだよ。最後の保険で、世界を破壊するって!』

【しかし、これは……ふむ、なるほど、やられました。そういう狙いだったのですね。これでは私の権限を行使しても、世界の破壊を止めることはできません。】

ラプラスが口に手を当てて思案した後、俺へと顔を上げる。

【アイノスはかつて、神聖スキルを利用して、とにかく巨大な化け物を造りました。そしてそれを、地中の奥底へと封じ込めたのです。私はそれをただ神聖スキルの受容体を造るための実験の一環だと考えていましたが、それだけではなかった。】

『その魔物がなんだってんだよ?』

【地中深くで眠りについていたその化け物は、アイノスの死と同時に目覚めるようになっていました。アイノスは、この化け物を用いて、この世界を完全に滅亡させるつもりです。】

最後の最後に、なんて傍迷惑をしでかしてくれやがったんだ。

第一、そんなことして、アイツに何の得があるっつうんだ。

【アイノスは、自分が本物の人間で、この世界は理想郷イデアがそのまま封じられて形を変えた姿だと、そう信じていました。そして仮に生命が死に絶え、輪廻の循環が完全に停止したときに封印が解除されるのではないかと、恐らくはそう仮説を立てたのでしょう。】

……なるほど、ラプラス干渉権限の奪還による理想郷イデアの復活が不可能になったとき、次善の策として、電源ぶち切ってこの世界を終わらせることで、強引に理想郷イデアを呼び戻すつもりだったようだ。

現実には、この世界はあくまで精神の複製が送り込まれてるだけの全く別の世界で、地球にアイノスが存在できる場所なんて元々なかったっつうのに。

確かに疑似的な輪廻転生によって成り立っている世界。

全生物を死滅させることでその流れを完全に堰き止めれば、機能不全に陥って本来の目的が果たせなくなり、その結果封印が解かれることも有り得ない話ではない。

もっともアイノスにとっても確証のない仮説止まりだったようなので、本当にいざというときの最終手段だったのだろうが。

ラプラスが俺へと指先を向ける。

頭に情報が浮かび上がってきた。

【〖フォーレン〗:G(神話級)ランクモンスター】

【大きな瞳のついた球状の化け物。】

【人類に神罰を下すべく生まれた、自我のなき破壊の化身。】

な、なんだこりゃ……。

フォーレンっつうのは地球に落下する巨大隕石じゃなかったのか?

【アイノスが〚ラプラス干渉権限〛の付与ではなく、ただただ世界のリセットボタンとすべく育成してきた化け物です。無論、実際の『 墜ちるもの(THE FALLEN) 』ではなく、この世界のお伽噺……アイノスの妄執の中にだけいる邪神フォーレンを再現したもの。】

ラプラスが手を翳せば、俺の前にホログラムが浮かび上がる。

ゴツゴツとした球状の岩の塊に大きな瞳が付いており、岩塊の亀裂の狭間から太い触手が伸びている。

なるほどコイツは確かに、エルディアのいた遺跡や、リーアルム聖国の大聖堂地下に壁画として刻まれていた、邪神フォーレンそのものだ。

コイツが地面の中に眠ってやがるってことか。

『コイツをぶっ倒せば、今度こそ全て解決ってことか?』

だが、俺の言葉に、ラプラスは首を振る。

【いえ、フォーレンがあまりに巨大過ぎます。奴が封印から目覚めて地上に出て暴れた場合、それだけで世界は崩壊することになる。】

た、戦うことさえできねぇってことか……?

アイノスの最後の保険というだけのことはある。

フォーレンを地中に封じたのも、外に出た段階で世界が割れ、その時点で大量の死者が出ることを見込んでのものなのだったのかもしれない。

『い、いつそいつは目覚めるんだ!』

【今すぐにでも目覚めそうな勢いです。そうですね……十分後には目を覚まし、大地を割り、この世界の全てを呑み込もうとするでしょう。】

十分後……!?

まともに対策を練る余裕もねぇじゃねぇか!

『お、お前、この世界の神みてぇなもんなんだろ? なんか対抗策はねぇのかよ!』

冗談じゃねえぞ。

あんなムリゲーチート野郎のアイノスとの戦いを乗り越えて、その結末が邪神フォーレン復活による世界の破壊だなんて。

【選択肢は二つあります。】

アイノスが二本の指を立てる。

せ、選択肢、二つ……?

てっきり手詰まりなのかと思ったが、二つも打開策があるのか。

【何度も説明したことですが、私は心無きスーパーコンピューター。故に、六大賢者達は、私に重要な決定を行う権限を与えなかった。心あるものが指揮を執らなければ、この世界は我々人類にとって酷く歪んだものになってしまう、と。だからきっと、この選択も、貴方が担うべきなのでしょう。】

『そりゃ結構だが……何を選べばいいんだ?』

なんとなく嫌な予感がしていた。

ラプラスの勿体振った婉曲な言葉は、俺が歪な二拓を押し付けられることを示唆しているかのように感じられた。

【貴方がアイノスの〚天道〛を手にして全ての神聖スキルが揃ったとき、貴方の〚最終進化者〛が取り払われ、次の進化が解放されました。貴方が選べる道は二つです。】

……ここからまだ進化できるっつうのかよ。

テュポーンの時点で、もう世界に戻っていい存在なのかどうか、既に相当危ういところまで来てるんだが。

【一つは破壊の竜です。その力を以てして、邪神フォーレンを復活直後に討伐する。私のシミュレーションでは、世界の一割の人間は貴方方の戦いの余波から逃れ、生き延びることができる。】

俺は言葉を失った。

それは打開策と呼ぶには、あまりに無情なものだった。

世界が崩壊し、九割の人間が死ぬことになる。

『却下だ! んなもん、打開策じゃねえよ!』

【もう一つは創造の竜です。こちらでは邪神フォーレンの早期討伐は不可能なため、生き残ることができるのは本当に極僅かな命でしょう。しかし、全てが終わった後、創造の竜ならば世界を自在に立て直すことができる。】

破壊の竜と、創造の竜。

そのどちらも、邪神フォーレンとの戦いで、この世界を滅亡寸前まで追い込むことが前提であった。

確かにこの世界の存続はできるだろう。

だが、しかし、どちらの道を選んだとしても、結局夥しい数の死者が出ることになる。

仮にこの世界が仮想世界で、そしてその命は廻るものだとしても、多くの人間が混乱と恐怖の中で虐殺されることに変わりはない。

命が廻るとはいえ、記憶は消され、複数の精神との融合によって全く新しい命への転生がなされる。

それは俺からしてみれば、死ぬことと全くの同義であった。

【進化先を表示しますか?】

頭にメッセージが浮かぶ。

俺はラプラスを睨み、頷いた。

【進化先を表示しますか?】

メッセージが浮かぶ。

俺は目を瞑り、頷いた。

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【未来】

〖破壊竜エンド〛:ランクG+(神話級上位)

〖創世竜ネイア〛:ランクG+(神話級上位)

〖世界竜アクパーラ〛:ランクG(神話級上位)

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【現在】

〖テュポーン〛:ランクG(神話級)

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【過去】

〖アポカリプス〛:ランクL+(伝説級上位)

〖オネイロス〛:ランクL(伝説級)

〖ウロボロス〗:ランクA

〖厄病竜〗:ランクB-

〖厄病子竜〗:ランクD+

〖ベビードラゴン〗:ランクD-

〖ドラゴンエッグ〗:ランクF

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〖破壊竜エンド〛、〖創世竜ネイア〛……そして〖世界竜アクパーラ〛……?

一体、聞いていなかった奴が混じっている。

コイツではフォーレンには太刀打ちできねぇ、ということか。

とにかく、順番に見ていってみよう。

【〖破壊竜エンド:ランクG+(神話級上位)〗】

【世界を終わらせる力を持った破壊の竜。】

【ただ爪の一振りで星を壊すことができる。】

……なるほどね、わかりやすくて結構だ。

エンドでフォーレンを葬った後、本当に世界は残ってるんだろうか。

【〖創世竜ネイア:ランクG+(神話級上位)〗】

【世界を創る力を持った創造の竜。】

【死の大地を蘇らせ、新たな命を芽吹かせることができる。】

そして、こっちが創世竜。

ラプラスの言葉以上の情報はほとんど得られなかった。

念のため、一応〚世界竜アクパーラ〛もチェックしてみた。

しかし世界で最も巨大な生物ということしかわからなかった。

それ以外の情報は何もない。

ラプラスも説明しなかったくらいだ。

こいつは考慮の範囲外ということだろう。

落ち着け、俺。

時間がもうない。

この最悪の二拓で、どちらか一つを選ばなければならねぇ。

なんでもいい……この二つの内、どちらかを選ぶ明確な理由がほしい。

大量の人命が懸かってるんだ。

無根拠に、当てずっぽうで選ぶことはできねぇ。

破壊竜と、創世竜。

どっちもやることは大差ねえ。

破壊竜ならフォーレンとの戦闘の余波で僅かに残った人類と世界の再興を目指すことになる。

創世竜なら全てをぶっ壊した後、ゼロから創り直すことになる。

恐らく、豊かな世界になるのは創世竜だ。

しかし、それは全部、俺の力で生み出した新しい命に過ぎない。

今この世界にいる人達は皆殺しにすることになる。

『なあ、ラプラス、破壊竜で地面を貫いて、復活前のフォーレンを倒すことはできねぇのか……?』

ラプラスは首を横へ振った。

【可能、不可能でいえば可能です。ただ、破壊竜で地中のフォーレンを倒そうとした場合、その余波で結局世界は滅亡寸前まで追い込まれるでしょう。下手すれば、その方が被害が大きいかもしれません。】

……それはそれでこの世界をぶっ壊すことになっちまう。

被害に大差はねえ……か。

フォーレンが地面に埋まってるのが厭らしい。

どう足掻いてもこの世界の大地は吹っ飛ぶことになる。

アイノスのクソ野郎は、なんとしてもこの世界を終わらせたくて仕方がなかったようだ。