軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

724.仲間との合流

俺はハレナエへと飛んで戻った。

改めて見ると、饕餮の野郎が散々暴れたせいなのか、奴の陣取っていた国の中心へ向かう程、地割れや家屋の残骸が酷い。

情報収集でもできればと思ったんだが……。

「戻ってきたぞあの化け物!」

「潰し合ってくれればよかったのに!」

「余計おっかない化け物が残っただけじゃないか! 今度こそハレナエはお終いだ!」

ハレナエの民達は上空の俺を指差して、やいややいやと悲鳴の声を上げる。

怒鳴っている人もいれば、泣き崩れている人の姿もいた。

……まぁ、そらそうなるわな。

昔はいちいちセンチメンタルにもなってたが、最近すっかり慣れてきちまった。

仮に石とかぶつけられても、痛くもなんともねぇわけだし……。

饕餮と接触した際、一瞬ヴォルクの姿が見えていた。

恐らく饕餮を追ってこのハレナエまでやってきて、奴と戦っていたのだろう。

ヴォルクさえ見つければ、ここの人達との仲介を頼めるかもしれねぇ。

饕餮の陣取っていた辺りに戻ると、近辺に野外の避難所らしきものがあり、そこに人が集まっていた。

怪我人を集めて治療を行っているようだ。

そこにヴォルクの姿もあった。

すぐ近くにはアトラナート、そしてマギアタイト爺もいる。

ひとまずこっちの世界に残された連中と合流できたことに俺は安堵した。

あの場で神の声の〖スピリット・サーヴァント〗に全員殺されて全滅している可能性もあったのだ。

黒蜥蜴やウムカヒメの姿はないが、あいつらもこっちに来ているんだろうか?

「弟子にしてくれ、竜狩り様! 俺様……いや、俺の名はディラン! 俺はっ、アンタに憧れて剣の旅に出たんだ!」

……妙な大男が、ヴォルクへと頭を下げていた。

ヴォルクは困惑したように、大男の連れらしい、隻腕の男へと目を向けていた。

「おい、なんだこの男は?」

「すまない、竜狩り殿。悪い奴ではないんだが……」

隻腕の男が頭を掻く。

『お~い、ヴォルク……!』

「ドラゴンがこっちに来たぞぉおおっ!」

俺が接近すると、避難所に悲鳴が巻き起こった。

一目散に、動ける人間が逃げて行く。

「い、いや、あの竜は……」

ヴォルクが弁解しようとするも、誰も聞く耳を持たない。

ヴォルクに弟子入りを懇願していた男は、頭を下げた姿勢のままその場から逃げ出そうとして、つんのめってその場でひっくり返っていた。

な、なんか、悪いことしちまったな……。

「まさか、もう一度この右腕を使うことになるとはな……! 竜狩り殿、悪いが俺は囮にしかなれんぞ!」

隻腕の男が俺へと剣を向け、それから表情を歪めた。

「む? もしや……」

隻腕の男は、俺を見て不思議そうに顔を歪める。

俺も隻腕の男の顔に覚えがあった。

『アドフ……?』

俺はひとまず、〖人化の術〗で地上へと降り立った。

〖ディメンション〗で衣を取り出し、身体に纏う。

「お、おお、人に化けたときのその顔付き……間違いない! まさかイルシアだったとは! また会えるとは思っていなかったぞ!」

アドフが手にしていた剣を下ろして、俺へと駆け寄ってくる。

「なんでハレナエにいるんだ? もう、この国は出るって言ってたんじゃ……」

「一度は出たんだが、外にいるとハレナエのちぐはぐな噂ばかり入ってきてな。どうしても様子を確認したくなってしまって、こうして戻ったらこの有様というわけだ」

アドフが苦笑いをして、腕のない左袖を振るう。

どうやら饕餮との戦いで失ったようだ。

「まぁ……これで今度こそ、ハレナエの騎士に復任しろなんて言われることはなくなるだろう。引退のはなむけには少しばかり重い戦いだったがな」

アドフは過去に、右腕が赤蟻との戦いで使い物にならなくなった、と言っていた。

これで両方の腕を失ったことになる。

ただ、俺には〖ウロボロス〗時代に得た、あるスキルがあった。

【通常スキル〖リグネ〗】

【欠損した身体の部位を再生させると共に、HPを回復させる。】

【〖レスト〗と比べ、MPの消耗が著しく激しい。】

これさえあれば、アドフの右腕も左腕も回復させられるはずだ。

「〖リグネ〗」

俺はアドフへと手を翳す。

「何を……」

アドフの身体に治癒の光が走り、失ったはずの左腕が元に戻っていた。

するりと、左腕を覆っていたらしい包帯が地面へと落ちる。

「そ、そんな馬鹿な。こんなことが……!」

アドフは目を見開き、自身の腕を見る。

信じられない、といったように動かしていた。

「右の肩も治ってるはずだぜ。まだ剣士は隠居できねぇな」

俺はアドフへと笑い掛けた。

「う、噂には聞いたことがあったが、イルシア、まさかお前が使えるようになっているとはな。は、はは、どうやらこりゃ、まだまだ剣の道を捨てるわけにはいかなさそうだ」

アドフは自身の右腕を、不思議そうにぺたぺたと手で触りながら、そう口にする。

「あの勇者の生み出していた化け物が消えたから、お前が勝ったのはわかっていたぞ、イルシア。神の声とやらに連れ去られてから、どうしていたんだ?」

ヴォルクが俺へと尋ねる。

「その辺りの話もしねぇとだが……まず、ハレナエの人達に誤解を解いてもらっていいか? 避難所荒らしたままじゃ申し訳がねぇよ。それに、重傷者が集まってたなら、俺の魔法で治して回った方がいいな」

俺は頭を掻きながら、ヴォルクへとそう伝えた。

ヴォルクとアドフに誤解を解いて回ってもらい、無事に避難所へと人が戻って来た。

警戒している人の方が多かったようだが、俺が〖リグネ〗を使えるという話が広まったのが大きかったようだ。

俺は寝かされている重傷者の許を回って〖リグネ〗を掛けていった。

「あの化け物を討伐していただいた上に、我々の治療まで行っていただけたなんて。ありがとうございます、ドラゴン様……!」

「ぜひこの地でおもてなしをさせていただきます!」

ハレナエの民達が、俺へと感謝の言葉を述べる。

「そ、そんなこと、いいってことよ。それに……悪いけど、ゆっくりしてる場合じゃねぇからよ」

「珍シク喜バレテ、照レテル」

アトラナートが横から口を挟んできた。

「仕方ねえだろ……な、慣れてねぇんだから、こういう扱い。それより、お前らの方は最東の異境地であれからどうなってたんだ?」

「最東の異境地であの四体がひとしきり暴れた後……別々の方へと向かって移動していったのだ。ウムカヒメの判断の許、手分けして奴らを追うことになった。空を飛べるレチェルタは女を追って、ウムカヒメは単独で蜘蛛の化け物を追ってアーデジア王国へと向かった」

俺の質問にヴォルクが答える。

女……とは、聖女ヨルネスのことだろう。

黒蜥蜴とは出会わなかったが、見つけられなかったか、行き違いになっちまっていたようだ。

蜘蛛の化け物は、魔王バエルのことのはずだ。

残る二体……恐らくはノアの森にいる魔獣王か、アーデジア王国の魔王バエルか。

ノアの森に向かった、アロとトレントの姿が頭に過ぎる。

俺の本音としては、彼らが向かった方を追い掛けたい。

だが、ハレナエまで来た以上、距離として近いアーデジア王国の方を優先せざるを得ない。

「頼むぞ……アロ、トレント。でも、絶対に無茶はすんじゃねぇぞ」

俺はそう呟き、唇を噛んだ。

時間稼ぎ……とはいえ、それが決して楽じゃねぇことは、聖女ヨルネスと勇者アーレスの力量からも明らかだ。