軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71.グリシャ言語

洞穴の外に出る。

とりあえず事情をかいつまんで聞くため、ミリアからグリシャ言語を教えてもらうことにした。

会話は身振り手振りや表情、声の抑揚が重要だ。

それに俺は〖グリシャ言語:Lv1〗を既に持っている。

言語能力もスキル頼みならば、大まかな話を聞く分くらいなら、すぐに習得できる……はずだ。

〖グリシャ言語〗のスキルLv上げに成功すれば、今後人間との関わりがかなり楽になる。

この機会にある程度はわかるようになっておきたい。

「Αυτό είναι το δέντρο……」

ミリアが木を指差しながら言う。

俺はその言葉を必死に聞く。

この作業もすでに30分近く続けている。

聞く度、何かを掴んで行っている感覚はある。無駄ではないはずだ。

飽きずに付き合ってくれているミリアに感謝だ。

「Αυτή είναι η πέτρα……」

次に、ミリアは石を指差して言う。

む、段々わかってきたような気がするぞ。

【特性スキル〖グリシャ言語〗のLvが1から2へと上がりました。】

うし、来た。

感覚的にしかわからなかったミリアの言っていることが、段々くっきりと見えてくる。

「えっと……それで、**が、**で……」

単語単語は怪しいが、文の構成など、大まかなことはわかってくる。

今はこれだけで充分だろう。

後は話している間に、理解が進んで行くはずだ。

「ガアッ」

問題は、俺が言葉を発せないことだが。

「**に、私の言うことがわかるようになったんですか?」

頷くことで返事をする。

驚いた様子を見て、ちょっとだけ優越感に浸る。

ドラゴンだからって舐めてもらっちゃ困るぜ。

言葉がある程度解せるようになったところで、ミリアの事情を聞きだすことにするか。

彼女の様子を見るに急いでいる風ではないので、複数人ではなく単独で森に入ってきたようだが、目的もなくそんなことをするとは思えない。

「ガァァァッ?」

俺はミリアを見つめながら村の方を指差し、小さく首を傾ける。

ミリアは目をぱちりと瞬かせ、「えっと……」と前置きを挟む。

「どうして私が****に入ってきたのか、****の?」

俺は再び頷く。

「……人を、捜してて……。そのことで私、****の目を盗んで、何度か一人で****に来てたの。あの、ひょっとして、森の中で人を見たことって……」

なぜだか少し、ミリアは言い辛そうだった。

人? ひょっとしてこの前俺の洞穴に来た二人組のことか?

獣人娘と女剣士のことを思い出す。

犬耳を真似、頭に手を添えてみる。

「その人達は、街から来た****で……今はもう、街の方に帰ってるの。***がいるから、**のために一旦帰ったんだとかで……。その人達じゃなくて……あの、この前私が一緒にいた、ドーズっていう*の人で……」

ドーズ?

どこかで見た覚えがある……と思ったら、初めて会ったときにミリアと来ていた、軽そうな鎧を着ていた男だ。

ステータスを見たとき、名前を目にした記憶がある。

でもあの人は、リトルロックドラゴンに殺されて死んだはずだ。

死んだところを見たわけではないが、足が倒木に巻き込まれて動けなくなっていた。

あの状況から助かったとは考え辛い。

例えリトルロックドラゴンが見逃していたとして、あの怪我なら他のモンスターからも逃げられないだろう。

今もまだ生きているとはどうにも思えない。

「ガァッ」

ともかく、ミリアが一人で森に来たことは確認できた。

彼女はもう村に送り届けた方が良さそうだ。

ドーズの捜索に関しても、ミリアがそこまで急ぐことではないはずだ。

事情を浅くしか知らないが、どういう経緯があったにしろ、ドーズがまだ生きている可能性は限りなく低いだろう。

他の村人が捜索に出ていないことも、その裏付けであるような気がする。

そもそも、はっきりいって、ミリアのステータスで何とかできる問題ではない。

彼女では森中を自由に調べ回ることはできない。

ミリアを村に送り届けた後、俺がドーズを捜してみることにしよう。

ひょっとしたら……あのリトルロックドラゴンのいた周辺から、死体が出てくるかもしれない。

少々酷かもしれないが、そうなれば彼女とて無理に森へと足を踏み入れることはなくなるだろう。

黒蜥蜴、猩々と協力すれば、リトルロックドラゴンを倒すことができるかもしれない。

もっとも〖地鳴らし〗による範囲攻撃を堅実に突破するためには、回復魔法が足りないが。

ミリアを連れて行くわけにもいかないし、やっぱり俺が〖リトルアークドラゴン〗に進化するべきだろうか。

黒蜥蜴のことを考えると、先ほど突き放してきた形になってしまったことを否応なしに思い出す。

本当は〖グリシャ言語〗のスキルLv上げをしている場合ではなく、さっさとミリアを村へ送り届け、黒蜥蜴の元へ戻るべきだったのかもしれない。

どうにも怖くて、半ば無意識に後回しにしてしまっている気がする。

そこに人間との繋がりを作る機会が舞い込んで来たものだから、そのまま俺は逃げようとしているのだろうか。

深く考えていると泥沼に嵌りそうだ。

今はとにかくミリアを送って、早く洞穴へと戻るとしよう。

余計なことを考えるのは、目に見えている問題が全部片付いてからだ。

俺はミリアを背に乗せるため、身を屈める。

「あ、あの、ドラゴンさん、名前ってありますか?」

「ガァ?」

ミリアからの質問に、思わず間抜けな声が漏れる。

そもそも俺は名前を発せる口がない。

小さく首を振って、否定する。

「そ、そうですか……それじゃあ、その、なんと呼べばいいでしょうか?」

そんなこと、考えたこともなかった。

厄病子竜……は、ちょっと嫌だな。

っていうかこれ、ひょっとしてこの後何度か会ってくれるってことなのか?

嬉しいけど、危険じゃないのか?

それとも俺が村に入っていいってことなのか?

いや、でもそれ、ミリアが許してくれても他の村人が許してくれなさそうな気も……。

それにそうなったら、それこそ本格的に黒蜥蜴をどうしたらいいのか……。

村と森の往復生活か?

「そうだ! あの、私が名前を考えてもいいですか! あ、えっと、失礼だったら……」

「ガァッ!」

「きゃっ!」

つい一秒で飛びついちまった。

ぜひお願いします!

なんかこう、名前考えてもらうっていうのが凄くいい!

一気に距離が縮んだ気がする。

【特性スキル〖グリシャ言語〗のLvが2から3へと上がりました。】

お、話している間に言語のスキルLvも上がってきた。

やっぱり竜人進化で、洞穴と村往復アリなんじゃねぇかこれ。