軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

668.スキルテスト

ディスペアの群れが襲い掛かってくる。

俺は〖自己再生〗でMPをHPへと回した。

現在はレベルが低い上に、ミーアとの戦いで消耗させられている。

〖絶望の散華〗なんて自爆スキルを受ければ、下手したら一気にHPがゼロになりかねねぇ。

少ないMPを使ってでも回復しておくべきだと判断した。

アロが黒羽を広げて宙へと飛び、トレントもその後に続くように飛んだ。

……とにかく一体でも仕留めれば、俺のステータスは大幅に上がるはずだ。

スキルテストも兼ねて、気を付けながらサクッと片付けちまいたい。

アポカリプスの新スキルは〖カースナイト〗、〖リンボ〗、〖ディーテ〗、〖コキュートス〗、〖終末の音色〗だ。

まずは……これから試してみるか。

【通常スキル〖カースナイト〗】

【魔力の塊より、強い呪いを帯びた騎士を生み出す。】

【騎士は衝撃を受けるか、対象の敵への攻撃に成功した際に爆ぜ、周囲に呪いを撒き散らす。】

【飢餓や狂乱状態を与える他、相手の魔法力が低い場合には死を、場合によっては対象の肉体を術者が操ることもできる。】

俺は前足を伸ばし、先端に魔力を溜めた。

指先に青白い光が灯る。

放たれた光は人型の輪郭を模していき、上半身は鎧を纏った人間で、下半身は馬の形となった。

槍を構えたかと思えば、真っ直ぐに宙を駆けてディスペアの群れへと突撃していく。

ディスペア達は各々に散らばって回避しようとしたが、〖カースナイト〗は逃げるディスペアを追い掛けるように軌道を逸らし、大きく槍を振るった。

槍がディスペアに触れた瞬間、〖カースナイト〗が青白い光を強く放って爆ぜた。

「ふろおっ!」

ディスペアが爆発に呑まれ、その身を崩していく。

【経験値を9288得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を9288得ました。】

【〖アポカリプス〗のLvが1から69へと上がりました。】

うしっ!

早速経験値をゲットした。

一気に低レベル帯を抜けることができた。

ステータスを確認すれば、【防御力:3731】になっていた。

上がり幅がえげつない。

既に最大レベルのオネイロスのステータスを魔法力以外は上回っている。

これでいよいよ、ディスペアの攻撃は〖絶望の散華〗以外は正面から受けてもほとんど問題なくなったはずだ。

しかし、〖カースナイト〗……状態異常特化かと思えば、しっかりそれなりの威力が出るようだ。

それにどうやらある程度は自律して行動してくれるらしい。

結局のところ使い勝手最強の〖次元爪〗先輩の劣化スキルなんじゃないかと思っていたが、自動追尾付きの爆弾だと思えば使い道は多そうだ。

〖次元爪〗と併用すれば、中距離での手数が一気に増えるだろう。

近づかなければ自爆攻撃も怖くはない。

アロとトレントも、距離を置いてスフィア系統の遠距離魔法スキルでディスペアを攻撃していた。

アロ達は間に俺を挟んで攻撃魔法を使っているため、ディスペアから不意を突かれる心配もなさそうだ。

自爆スキルには脅かされたが、これなら安定してディスペア狩りを行えそうだ。

他のスキルも実験させてもらうとしよう。

【通常スキル〖ディーテ〗】

【地獄の炎を呼び出し、球状に留めて放つ魔法スキル。】

【地獄の炎は、対象を焼き尽くすまで決して消えはしない。】

いくぞ、〖ディーテ〗!

俺の上方に、赤黒い炎の塊が現れ、それが球状に圧縮されていく。

お、思ったより、魔力をがっつり消耗させられる感覚がある。

ディーテの炎も、思っていたよりも大きい。

直径五メートルくらいはあるんじゃなかろうか。

『あ、主殿……少々その魔法は、やり過ぎなのでは……?』

トレントが俺の背後から不安げな声を漏らす。

「グゥォオオオオオッ!」

俺は首を下ろしながら、〖ディーテ〗の炎を力任せに放った。

〖ディーテ〗の炎球が地面へと叩き落とされ、周囲が大きく揺れた。

一気に赤黒い炎が周囲へ燃え広がっていく。

「ミギギギギギギギギギィ!」

俺もこのスキルは不慣れであり、動作が大きすぎたためディスペア達は散らばって避けたが、如何せん範囲が広かった。

炎に呑まれた二体のディスペアが、黒焦げになるのが目に見えた。

【経験値を16308得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を16308得ました。】

【〖アポカリプス〗のLvが69から86へと上がりました。】

た、確かに、威力と範囲は申し分なさそうだ。

だが、〖ディーテ〗の赤黒い炎は収まるところを知らない。

地に落ちてなお、更にどんどんと燃え広がろうとしていた。

「りゅっ、竜神さま! あれ、まずくないですか……?」

アロが不安げに叫んだ。

……確かに、このままではまるで収まりそうにない。

いずれこのンガイの森を全部焼き尽くしちまいかねない様子だった。

対象を焼き尽くすまで消えはしねぇって触れ込みだったが、ディスペアを焼いてもまだ消える気配がない。

このままだとどれだけ広がるのかわかったもんじゃねぇ。

い、一応、消しておくか。

それならこっちのスキルを使ってみるとしよう。

【通常スキル〖コキュートス〗】

【地獄の氷を呼び出し、自在に展開する魔法スキル。】

【万物を凍てつかせる氷は、決して溶けることがない。】

【周囲の熱を急速に奪うため、思わぬ被害が出ることもある。】

【一度展開した氷を消すことはほぼ不可能なので注意が必要。】

アポカリプスの氷の魔法スキル、〖コキュートス〗。

俺を中心に青白い魔法陣が展開される。

炎に意識を向ければ、段々と赤黒い炎が、青白い氷に包まれて行った。

よ、よし、これでこれ以上は燃え広がらずに済む。

〖ディーテ〗の炎は、〖コキュートス〗で凍てつかせられることがわかった。

地獄の炎より、地獄の氷の方が強力なのかもしれない。

いや、それは単に、先に使った分〖ディーテ〗の炎が弱まっていただけかもしれないが。

〖コキュートス〗の氷も〖ディーテ〗の炎で溶かせられそうだ。

「竜神さま! 死角から一体、飛んできてます!」

と、飛んでいる!?

アロの叫び声で振り返る。

すぐ傍まで一体のディスペアが、空を飛んで迫ってきていることに気が付いた。

「ふろっ、ふろぉっ!」

ディスペアの一体が、絡めた根っこを持ち上げて伸ばし、翼のようにして空を飛んでいた。

お前、飛べたのかよ!?

そういえば、ちゃっかり〖飛行〗のスキルを有していやがった!

〖ディーテ〗に意識を取られ過ぎていた。

すぐさま爪で叩き潰そうとしたが、ディスペアの身体が膨らみ始めていることに気が付いた。

身体の膨張によって、円らな瞳が上へと押し上げられて見えなくなり、口が大きく押し広げられた。

いや、口だと思っていたものが、大きな単眼へと変わった。

しょ、正体現しやがったな!

あの気の抜けた顔付きは、ただの擬態のようなものだったらしい。

このンガイの森に可愛らしい魔物などいるわけがなかったのだ。

直感的にわかる。

こいつは既に自爆モードに入っている。

今更どうこうしようが、〖絶望の散華〗を止めることはできねぇ。

〖竜の鏡〗で姿を消してやり過ごすか?

いや、〖絶望の散華〗の射程がわからねぇ。

俺という遮蔽物がここで突然消えれば、下手したらアロ達が爆発に巻き込まれかねない。

だったら、こいつを使うしかねえ!

【通常スキル〖リンボ〗】

【聖神教において、教神、及びそれに準ずる存在が、生きることも死ぬことも許されないものを救うために行使する魔法だとされている。】

【かつて一人だけ〖リンボ〗の習得に至った聖女が存在したという。】

【対象を時間や空間の概念の存在しない次元の狭間へと落とす魔法スキル。】

【射程は短く、発動も遅い。ただ、当たれば外敵を永劫に異次元へ閉じ込めることができる。】

俺は目前のディスペアへと意識を向ける。

神々しい白の輝きを放つ魔法陣がディスペアを中心に展開される。

ディスペアが魔法陣から逃れようとしたが、俺は前足で掴んで宙に固定した。

『〖リンボ〗!』

光が弾け、ディスペアは消え去った。

ディスペアを掴んでいた手が宙を握る。

成功した……。

け、経験値は入らねぇんだな。

【対象を時間や空間の概念の存在しない次元の狭間へと落とす魔法スキル。】

咄嗟に使ったが、〖リンボ〗の説明文を思い返して何となく後味の悪さを覚えた。

……〖リンボ〗のお陰で〖絶望の散華〗はどうにか防げたが、極力使わねえことにした方がよさそうだ。

まだ試していないスキルはもう一つあるが……。

【通常スキル〖終末の音色〗】

【自身の生命力・魔力を溶かして膂力・速さへと変換する。】

【ただし、理性も溶かすため、狂乱状態へと陥る。】

【その激情は、視界に入るもの全てを無に帰すまで収まらない。】

【収まった後も、精神が変異する危険性が高い。】

【発動時には、身体から漏れ出た魔力の勢いで、奇妙な音が遠くまで響き渡る。】

【聖神教では、神の使いが楽器を用いて世界の終わりを告げるといわれており、この音はそれと同一視されている。】

……このスキルは試さねぇ方がよさそうだな。

強制〖バーサーク〗状態になる上に、その後の精神にまで影響を及ぼしかねない。