軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

583.謎の森

俺はアロ、トレントと顔を突き合わせ、今後の動き方について会議を行った。

ヴォルクや黒蜥蜴達のいる世界が大混乱になっているであろうこと、そして神の声の意図の憶測について簡単に説明した。

『……どうにか力をつけながら、ここから出る術を模索するしかねえんだ。神の声は元々、何千万人……いや、何百億人殺してるか、わからねぇ奴だ。アイツは世界を滅茶苦茶にすると言ったなら、本気でそれを実行しかねねえ』

元々一代前のミーアの時代でも、大国を中心に神聖スキル持ちを散々いいように操って、戦争を繰り返させていたような奴だった。

一刻も早く戻りてぇが、今の俺の力では神の声の〖スピリット・サーヴァント〗達には敵わねえ。

レベルを上げて……できれば進化の術をどうにか身に着けて、それからこの世界を脱出する必要がある。

……そしてどこかで、余裕振ってやがる神の声の油断を突いて、奴の思惑から外れなければならない。

そうしなければ、結局はアイツにいいように利用され、それから処分されることは明白だからだ。

これが最大の課題だが、今は情報が少なすぎるし、何より余裕もなさすぎる。

目の前の目的から片付けていくしかねえ。

『きっと、外に出る手段はあるはずだ。俺がレベルを上げてここを出るなら、あの忌まわしい奴の想定通りのはずだからよ』

俺は巨大な木が並ぶ地を見回す。

果てしなく、一定間隔で巨大な歪んだ木が並んでいる。

その奇怪な光景を、月が怪しげな青色で照らす。

じっと眺めていたら気が狂いそうになってくる。

「でしたら、とにかく探索してみるしかありませんね。ここを出る術を探すにも、力を手に入れるにも……」

アロが怪しい森を眺めながら言う。

アロの提案に、トレントがぶるりとその巨体を震わせた。

『こ、この森を、探索……ですか』

『ビビる気持ちはわかるが、じっとしてたら、元の世界がどうされてんのかわかったもんじゃねえ。とにかく調べてみるしかねえんだ』

『わわ、わかっておりますぞ……』

トレントからちょっと頼りない反応が返ってくる。

……だ、大丈夫なのだろうか。

今の様子を見ていると、前の戦いでアルアネ相手に一対一で戦いを挑んで見事勝利を果たした、というのがどうにも胡散臭く思えてきてしまう。

しかし、アロもアトラナートも口を揃えてそう言っているのだ。

アロだけであればトレントのために気を利かせて妙な出鱈目を口にすることもあるかもしれないが、アトラナートは絶対にトレントを立てるためにこの手の嘘を吐くようなことはしないだろう。

「トレントさん、アトラナートも、きっと今大変なことになってる」

『そ、そうですな。私が、私がしっかりせねば……!』

トレントがぐぐっと幹を張り、己を奮い立たせる。

『俺は思うんだが……そこまで凶悪な魔物はここでも出てこねぇかもしれねぇ。元々神の声は、自由に伝説級の魔物を造り出す力なんざ持っていねぇはずだ。んなことができたら、苦労して俺を造り出す必要自体なかったんだからよ』

そう、神の声が自在に伝説級の魔物を造り出せるのならば、ここまで手の込んだことをする必要なんざねぇはずだ。

〖スピリット・サーヴァント〗で俺と同格以上の奴を続々と召喚してきたのには脅かされたが、〖スピリット・サーヴァント〗は〖スピリット・サーヴァント〗になった時点で成長が止まっているのだ。

そこからレベルが変動しなくなる。

確か、ベルゼバブやエルディアのステータスを覗いたとき、レベルの横に奇妙な表記ができていた。

神の声が俺と同格の魔物を何体も用意できるわけがない。

それができるのであれば、そもそも俺なんかいらないはずだ。

『なるほど……主殿に全て任せておけば、ひとまずは安心にここは乗り越えられるのですね……』

トレントがほっと安堵の息を、木に空いた口に似た空洞から漏らしていた。

……ほ、本当にトレント、単騎であのアルアネを倒したんだよな?

『と、調査を進める前に、やっておかなきゃならねえことがある。もっと様子を見て慎重に動きたかったが、それじゃ間に合わなくなっちまうかもしれねぇからな』

「やっておかないといけないこと……ですか?」

アロが不思議そうに俺の言葉を復唱した。

『ああ』

俺は頷き、トレントへと目を向けて〖ステータス閲覧〗を行う。

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種族:タイラント・ガーディアン

状態:呪い

Lv :66/85

HP :748/748

MP :309/309

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トレントはリリクシーラとの戦いの前から比べて【Lv:54/85】から【Lv:66/85】へと上がっていた。

トレント達は称号スキル〖魔王の配下〗により、俺よりランクが低い間は経験値の取得が倍になる。

しかし、俺は〖歩く卵〗と〖竜王〗の効果があるので、取得経験値は常に四倍になっている。

俺に比べればレベルはかなり上がり辛いはずだ。

そんな中、レベルを一気に十二も上げたのだ。

これこそ、トレントが命懸けでリリクシーラの配下と戦ってくれた何よりの証であった。

『……改めて、ありがとうな、トレント』

俺は前足で、軽くトレントの幹を撫でた。

『レベル、すげぇ上がってるよ。いっつもトレントは不安そうだけど、お前は強い奴だ。俺が保証するぜ。ステータスどうこうってだけじゃなくて、心の中に、本当に必要な時に全力で頑張れる熱いものを持ってる。この調子なら、次の進化もすぐできちまうだろう』

『あ、主殿……!』

トレントがぶるりと幹を震わせる。

「りゅっ、竜神さま! 私は! 私は!」

アロがせっせと両手を掲げて俺へとアピールする。

『あ、ああ、アロは……』

……アロは戦いの前から、かなりレベルが高かった。

あの域まで上がったら、ちょっとやそっとじゃレベルが上がらなくなる。

アルアネにトドメを刺したのはトレントさん一人という話だ。

今回アロのレベルは、あまり上がってはいないかもしれない。

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名前:アロ

種族:レヴァナ・リッチ

状態:呪い

Lv :85/85(MAX)

HP :729/729

MP :750/750

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リリクシーラとの戦いの前から比べて【Lv:80/85】から【Lv:85/85】へと上がっていた。

『さ、最大レベルじゃねぇか!』

五きっちり上がっているとは思わなかった。

聖騎士との戦いではアロの魔法がかなり役立ったはずだ。

そういうところが響いているのだろうか。

「本当? 竜神さま、私も、私も褒めて!」

『ああ、アロもよくやった! これで進化だってできるはずだ!』

アロの進化上限は〖魔王の恩恵〗の効果で取り払われていた。

これでA級の魔物になるはずだ。

そうなったら一気に戦力が増すし、スキルによっては変わった動き方ができるようにだってなるかもしれない。

「頭、頭撫でて! トレントさんにしたみたいに!」

アロが両腕をぱたぱたと上下させる。

『ア、アロは小さいから、ちょっと難しいかな……押し潰しちまいそうで、不安になるというか……』

俺は前足の指を一本だけ伸ばし、先端をぷるぷるさせながらアロへと慎重に伸ばした。

アロは得意げな顔で、ちょっと照れたように目を瞑り、顔を前に出していた。

『主殿、私の進化はいつ頃になりそうですかな……』

トレントが俺達の盛り上がり様を見て、ちょっと寂しそうに尋ねてきた。

……自分にスポットライトが当たったと思いきや、アロの進化に一気に俺が引っ張られてしまったので切ないのかもしれない。

わ、悪い、トレント……。

『だ、大丈夫だ、すぐ進化できるはずだ、すぐに』

『すぐとは、いつですか……? 何戦後ですか?』

『ここの魔物も見てねぇから、そんな具体的にはちっとわからねぇかな……』