軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

49.一騎打ち

「ガァァァァァアッ!」

俺はツインヘッドを睨み、吠える。

ツインヘッドは退かない。

獰猛で冷酷な目で、俺の左腕を睨む。

左腕はツインヘッドに噛まれて、まともに動かなくなっている。

左側から崩そうと、そう考えているのだろう。

ただそれは俺とて同じことだ。

ツインヘッドとかち合うのならば、頭を失った右側から崩すのがベストだ。

「ガァァァッ!!」「グゥワオウッ!!」

互いに吠え合ってから、それを合図に突進する。

ツインヘッドは俺の左半身に噛みつこうと、俺はツインヘッドの右胴体をぶん殴ってやろうと。

本来ならば、ここでわざわざ闘うこと自体悪手だ。

放っておけばツインヘッドは毒で倒れるだろう。

俺も慌てて右頭部を追ったって、絶対間に合うわけがない。

黒蜥蜴が自力で逃げ切ってくれることを祈るばかりだ。

引き下がってツインヘッドが力尽きるのを待ち、それから黒蜥蜴の安否をゆっくりと確認しに行けばいい。

俺の身体も毒状態だが、一分一秒を焦って〖解毒〗してもらう必要はない。

それよりも身体中に毒が回らないよう、ゆっくりしていた方がいいだろう。

そうだとしても、わかっていても、俺は引き下がる気にはなれなかった。

俺とツインヘッドがぶつかり合う直前、ツインヘッドは左側から回り込むように動く。

俺は逆に、右側から回り込むように動く。

グシャリ。

ツインヘッドが、〖噛みつく〗を空振って自らの歯を砕く音。

俺はそれを聞いてから、胴体へと〖ドラゴンパンチ〗を放つ。

「ゴボォッ!」

確かな手応えを拳に感じた。

今のHPと毒状態を抱えたままだとちょっとキツイが、このまま一気に終わらせる。

俺は震える左腕を強引に持ち上げ、両手でツインヘッドの胸ぐらを掴み、思いっ切り地を蹴って真上へと飛び上がる。

〖ベビーブレス〗を下に吐いて飛行距離を稼ぎ、空高くで位置関係を逆さまにし、ツインヘッドを地に向ける。

「ガ……ガ……」

呻くツインヘッド。

だがこうなったら、抵抗のしようもないだろう。

翼を畳み、一直線に落下する。

クレイベア戦で得た俺の必殺技、〖くるみ割り〗だ。

ツインヘッドが頭から地と激突した瞬間、素早く俺はツインヘッドを蹴っ飛ばして宙に逃れ、自身に返ってくる衝撃を最低限に抑える。

【通常スキル〖くるみ割り〗のLvが1から2へと上がりました。】

「ガハッ!」

急落下から浮遊に転じたため、身体の中身を掻き乱されるような感覚に襲われる。

自分のステータスは……見ない方が、頑張れそうな気がする。

俺はツインヘッドへと目を落とす。

ツインヘッドの頭部は完全に潰れており、残った身体が痙攣しているばかりだ。

〖道連れ〗のスキルの発動条件はわからないが、これだけ潰れていれば何か仕掛けてくることはないだろう。

俺は二つの頭を失ったツインヘッドから目を離し、黒蜥蜴の走って行った方を見る。

視界が霞む。

アイツ、生きてるよな? 逃げ切れたんだよな?

必死によろけながら歩くが、左足が上手く曲がらない。

〖くるみ割り〗の最後に左足でツインヘッドを地に蹴りつけたとき、かなりの反動を受けてしまった。

……じゃあやっぱし、〖転がる〗で移動するしかねぇな。

手足尻尾を丸め、勢いよく前転して先へと向かう。

脳内やら身体やらが引っ掻き回されるような感覚の中、黒蜥蜴が転がった跡を追って必死に走った。

走りながら感じる焦燥感。

頭を過る嫌な想像を振り払い、今はとにかく無心に走ることを意識する。

しかしどれほどそうしようと思っても、頭の中を黒いもやもやが陣取って離れない。

だから少し逸らして、どうして自分がこんなに必死なのか、それについて考えてみた。

一分一秒向こうへの到着時間がずれたって、何がどうなるはずもないのに。

なぜ俺はこんなに、自分の身体を痛めつけながら走っているのか。

〖解毒〗してもらえないと困るからか?

いや、それだけなら俺は大人しくツインヘッドの横で黒蜥蜴の無事を待っていただろう。

やっぱりそれは、俺にとって黒蜥蜴が大事だからだ。

出会って二日だが、黒蜥蜴とは色々なことがあったように思う。

最初は敵対していて、レースの果てに和解し、共同でグレーウルフを狩り、洞穴に招待して、とっておきの干し肉を御馳走して、横に並んで一緒に水を飲んで……。

この世界に来てから俺の友達といっていいのは、ミリアと黒蜥蜴くらいのものだ。

そのミリアとも長らく会っていないし、次会ったときには邪悪なモンスターとして恐れられる可能性まである。

唯一この世界で気を許せる相手が、黒蜥蜴だったのだ。

「ガァァァァァッ!」

俺は吠え、〖転がる〗のスピードを引き上げる。

速度の代償に毒が全身を駆け巡り、衝撃が弱った身体の部位を甚振り、体内がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられているようだった。

ただそれでも、ひたすらに走った。