軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

365.白き翼を携えて

竜王エルディアと別れ、二日が経った。

俺は巨大樹の巣穴近くの枝の先端側に立ち、この島の眺めを一望していた。

深く茂った木々を見回し、世界の果てである大滝へと目を向ける。

それから深く溜め息を吐いた。

『ナーニ辛気クセェ顔シテンダヨ』

相方がぐぐっと首を伸ばし、視界に割り込んできて俺と顔を合わせる。

やっぱ、色々思うことがあるんだよ。

こっから俺は多分、厄介なことに巻き込まれていくことになる。

エルディアをどうしたらいいのかもわかんねぇし……それに、魔王や神の声の問題もある。

『考エテテモ仕方ネェダロ。出タトコ勝負デ、ヤリタイコトヤッテリャイインダヨ』

いや、それはさすがに……。

つっても、情報が少なすぎて何もできねぇっつうのが現状なんだけどな。

俺が既に魔王を相手取るはずの勇者を倒しちまってんのがどう作用しちまうのかもわからねぇ。

せめて過去の魔王に関する歴史でもわかれば、何か傾向みたいなのがわかってくるのかもしれねぇが……。

一旦危険人物もとい危険ドラゴンであるエルディアの近くであるここを離れて、どうにか世情に強い仲間を作るべきか?

エルディアは今は、チラチラと大樹の根元から顔を出して俺を見上げていることもあるが、あまり大きな行動には出ていない。

魔王の部下として、神聖スキル持ちのこちらの動きを偵察している……わけではなさそうだな。

寂しいから気になってるだけか。

悪いが、いつか破綻することがわかりきっている相手と仲良くできるほど、俺は器用ではない。

悩み事の種といえば、アロ達の問題もある。

俺は背後を振り返る。

ナイトメアが、糸の巣に掛かった、赤と白のツートーンカラーの巨大蜂、【〖デスニードル:ランクC+〗】に喰らい付いている。

そのやや下方からトレントさんが〖クレイスフィア〗で土の塊を放ってデスニードルを弱らせており、枝に座っているアロが楽し気にそれを見守っていた。

あいつらも、随分と強くはなった。

だがこの先、アダムなんかでは比にならない強さの敵が出て来るのではないかと思う。

『オイ相方ァ、ナンカ来テンゾ』

ふと海を見回していた相方が、思念を飛ばしてくる。

俺は釣られて相方の視線の先を見る。

遠くに、何かが飛んでいる。

全身青い、青銅の像を思わせる外見の巨大な鳥の魔物だ。

鳥らしからぬ派手に広がる四つの翼が印象的だ。

安定の人面である。

髪は長く、風に靡いている。目だけは真っ赤で、先を睨んでいる。

幸い、こっちは向いていない。気づいていないというよりは、そもそも興味がない素振りであった。

【〖ネプチューン〗:A‐ランクモンスター】

【幾万の人骨を積み上げた〖セイレーン〗は、やがて〖海の王〗と称される存在となった。】

【圧倒的な防御性能と、飛行能力を誇る。】

【また海を用いた大規模なスキルを操る。大海の上すべてが彼女の領域である。】

【海近くの国や小島の民からは、〖海の守護神〗と畏れられている。】

や、やべぇ……アダムやエルディア以外にも、やっぱしAランクがいるんだな。

C+が雑魚モンスター、Bランク前後が中堅、A-が大御所って感じだなこの島。

俺が生まれた森の地域では、Cが最強クラスで本当に良かった。

ランク的には俺が二体同時に相手取ることに成功したアダムと同格だが、海を用いるスキルというのが気にかかる。

下手に関わらない様にしよう。

つーかあんな化け物に進化するなら、この島のセイレーンを滅ぼしておいた方がいいかもしれない。

『相方、アレモウマソウダガ、違ウ。ソレヨリズット奥ダ』

……美味そうな要素はなくね?

なんか鉄臭そうだぞ、アイツ。煮ても焼いても喰えんだろ。

俺は目を細め、相方の目線の先を見る。

遠く、本当に遠くに……小さな、白い輝きを放っている何かが見えた。

相方もよく見えたもんだ。俺が目を細めると、それがドラゴンであることが薄っすらとわかってきた。

ひ、ひょっとして、渡り竜? マイマザーさん?

い、いやいや、いくらなんでも、そんなわけねぇよな。

ただのこの島に立ち寄るつもりのドラゴンだろう。

ただこっちを見ている気がしたので、俺もじっと視線を返していた。

近づくにつれて、白いドラゴンの背に何かが乗っていることが明らかになってきた。

人間だ。

人間が、二人乗っている。

片方は剣を、片方は杖を持っている。

どちらも女らしい。

ドキリとした。

ま、まさか、俺の討伐か?

俺はここまで、トールマンの一件によってリトヴェアル族が割をくう可能性を少しでも減らすため、わざと姿を見せつけてここまで飛んできた。

俺の被害は勇者に擦り付けられた調査隊の壊滅、ハレナエ国への侵入、魔王への対応策である勇者の殺害、更には王国の都市付近までの接近。

更にはリトヴェアル族への生贄の要求、貴族であるトールマン率いる私兵団の壊滅、及びトールマンの殺害にまで及んでいる。

俺を倒せる算段さえあれば、人間が後を追って来るには十分すぎる理由があった。

だが、この果ての島までは来れまいと考えていた。

しかし、ドラゴンを使役できるのならば、話は別である。

大人数で来させなかった……というのは、海のお陰なのかもしれないが。

俺を倒す見込みがあってきたのならば、恐らくあのドラゴン、B+からA-の間くらいはあるだろう。

そこへ勇者やアザレアクラスの人間が二人加わっているとすれば、俺もかなり危うい。

勇者クラスとなれば、人間の間からも何らかの特別な扱いをされているはずだ。

エルディアの力を借りれば、容易く撃退できるだろう。

きっとエルディアも二つ返事で了承してくれる。

だがエルディアは、確実に二人を殺すだろう。

人化して敵意がないことを示すか?

いや、向こうが問答無用で攻撃に出た場合、大きな隙を見せる結果に終わる。

しかし戦って無力化してから説得するにしても、騒ぎを不審に感じたエルディアが横槍を入れて来る可能性もある

白いドラゴンはやがて、島の上空にまで入り込んできた。