軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

203.地下での戦い

俺は敵軍の赤蟻と対峙する。

数は二十体前後、こちらと大差ない。

一気に押し込んでやれるか?

「クッチャッチャッチャッ!」

と、通路の奥から不快な鳴き声が響いてくる。

でっぷりと肥えた大柄の赤蟻が現れた。大量の赤蟻を率いていやがる。

また援軍か。前の赤蟻の巣よりかなり規模が大きいなこりゃ。

一筋縄にゃいきそうにねぇ。

……あのデブ赤蟻、隊長格か?

赤蟻の顔なんざわからんが、余裕面のように見える。

敵の援軍の列は曲り角で後半が隠れているため数はわからないが、あの様子だと三十体はいるんじゃなかろうか。

向かってくる敵の赤蟻へ〖鎌鼬〗を放つ。

直接当てるのではなく、床を狙う。

爆風で間接的に足許を狙えば、確実に機動力を削ぐことができる。

外と違って狭いこの通路ならば、敵を見失う心配もない。

敵さんが横一列に広がっても、三発〖鎌鼬〗を放てば全体をカバーできる。

赤蟻の得意スキル〖クレイガン〗も、〖鎌鼬〗の爆風で逸らすことができる。

この間合いなら、俺の方が有利だ。

一方的に敵さんのHPを削り取ることができる。

とはいえ、こちらのMPが少々厳しくなってきた。

レベルアップしてMP最大値が伸びても、MPが回復しなければ意味がねぇ。

〖自動HP回復〗があるから、多少は身体で受けてやってもいいか。

「クチャッ!」「クチャアッ!」

俺に追い付いた自軍の赤蟻達が、敵軍へと〖クレイガン〗を撃ち始める。

援護射撃としては充分だ。

敵の赤蟻が一体、また一体と力尽きていく。

その度に神の声が、経験値取得とレベルアップを告げてくれる。

「クチャァァッ!」

この間合いでは不利と判断した敵の赤蟻達は、強行にこちらへの接近を試みる。

が、無理をすればそれだけ犠牲は出るものだ。

俺への距離は詰めれているが、それだけ俺の背後から撃たれている〖クレイガン〗の犠牲になるものも多い。

優勢かと思ったが、通路の奥からまた敵の赤蟻の加勢が現れた。

そろそろ尽きたかと思っていたが、まだいやがったのか。

「クチャッ!」

ついに敵の最前列にいる赤蟻が、俺へと飛び掛かってきた。

単体なので腕で叩き落として対処はできたが、それだけでは終わらない。

先頭に続き、どんどん飛び掛かってくる。

有利に戦えていたが、数の差は覆っていない。

今、俺のMPも少ない。俺を抜けて後ろの赤蟻を攻撃させられたら、一気に壊滅まで持っていかれかねない。

俺は通路いっぱいに広がり、右側から来る敵への対処を行う。

左側は相方に任せるとしよう。少々、不安はあるが。

倒し切らなくとも、弾いてひっくり返せば赤蟻が援護射撃でトドメを刺してくれる。

戦いは十分近く続いた。

途中難はあったが、ダメージの少ない自軍の赤蟻達が俺の左側について相方のサポートを行ってくれたこともあり、致命傷には至らなかった。

隊長赤蟻は俺より前に出て戦っていたが、敵の攻撃で足が欠けると味方に引き摺られて奥へと下がっていった。

長い戦いだったので集中力が切れ、死角に入った敵から攻撃をもらいそうになったときもあった。

ただそのときは、玉兎が的確に〖念話〗で教えてくれた。

敵の赤蟻は一体、また一体と倒れ、気が付けば残り一体になっていた。

「クッチャッチャ…………クチャ?」

例のデブ赤蟻である。

いつ来るのかと思ったら、ずっと敵陣の真ん中から動かなかった。

なんなら途中からちょっと下がっていた。

今まで自爆特攻精神剥き出しの赤蟻しかいなかったので新鮮だった。

デブ赤蟻は、呆然としたように辺りを見回す。

あれ、隊長格だよな?

ウチの隊長赤蟻のはほとんど最前線で戦っていたが……まぁ、赤蟻によって違うのだろう。

リーダーにも色々な種類がいる。

最前線で自軍を鼓舞して戦うもの、安全な位置から指示を出すもの、きっとどちらも立派なリーダーだろう。

よくは知らんが。

「クチャァァァッ!」

デブ赤蟻が、くるりと方向転換して逃げ出した。

俺はその背に飛びかかった。

相方が頭を天井にぶつけたが、気にしない。

鉤爪で串刺しにし、ひっくり返して地面の上に叩きつけた。

【経験値を135得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を135得ました。】

【〖ウロボロス〗のLvが54から55へと上がりました。】

……経験値が高い方ってわけでもなかったな。

やっぱり指示出し役だったのかもしれねぇ。

【通常スキル〖デス:Lv1〗を得ました。】

……これ、使ったら駄目な奴だろ。

一応、神の声で詳細チェックしておくか。

スキル調査は久々に使うな。

【通常スキル〖デス〗】

【対象の生命を刈り取る闇系統の魔術。】

【強力だが、よく失敗する。MPの消耗も激しい。使用者と対象の魔力値の差によって成功率に補正が掛かる。】

お、おい。

回復魔術得意なんじゃなかったのか。

なんかあからさまに死の呪いみたいな奴なんだけど。

しかもこれ、肝心なときに役に立たない奴だろ。

回復スキルはこれから覚えるんだよな?

つーかこれ、覚えたの俺だよな?

相方が覚えたら恐怖でしかねぇぞ。

ボス相手に効かない即死呪文を放ち続けてMPを浪費するどっかのゲームの残念AIみたいになりそうだ。

……とりあえず、今回、味方の赤蟻に力尽きたものはいなかった。

〖クレイガン〗の流れ弾で半身の潰えたものはいるが、〖ハイレスト〗での応急処置は行った。

身体は崩れたままだが、後で赤蟻自身のMPが回復すれば〖自己再生〗で修復できるはずだ。

しっかしあれだけ援軍を投下し続けてきていたのに、それがぴたりと止んだ。

ここは敵の本拠地だ。情報が行き渡っていないわけがない。

ようやく敵の赤蟻の兵が尽きたのだ。

俺のレベルもかなり上がった。

後は、敵の女王の首を取るだけだ。