軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

149.骨の釣り竿

食事を終えてから、俺は釣り竿作りを再開する。

毛皮を細く切って糸擬きを作り直し、背骨から余分な部分を切断して竿を作る。

竿の先端に小さな穴を開け、そこに糸を通してしっかりと括りつける。

サボテンから針を引き抜いて丁度いいサイズにへし折り、糸の先に縛る。

う~ん……一応釣り竿なんだが、ちょっと不格好だな。

やっぱこの辺が限界か。

こんなのに引っ掛かる魚っていんのかな。

「あ、あの、何を作っているんですか?」

ニーナが声を掛けてくる。

よっしゃ、玉兎、出番だぞ!

翻訳を頼む!

さっきたらふく喰わせてやったんだからしっかり頼むぞ!

きっちり思念を読んできっちり伝えるのが難しいってのはなんとなくわかるが、なるべく俺の言い方を変えない方向で頼む。

ほら、俺が話してる感がほしいし。

「ぺ、ぺふ……」

食事後の昼寝をしていた玉兎を尻尾先で揺さぶって起こし、翻訳を依頼する。

寝起きのところ悪いが、釣り竿を作ってみたんだと伝えてくれ。

『……釣リ竿、作ッテミタ』

やっぱ翻訳通すとちょっと硬い感じになるな……。

ま、多少は仕方がないか。できたら、できたらでいいんだけど、もうちっと砕けた感じにしてほしい。

「釣り竿、ですか?」

ニーナは俺の作った釣り竿を見て、首を傾げる。

ひょっとしたら俺の作った釣り竿の形が悪すぎてピンと来ないのではないかと思ったが、そういうわけではなさそうだ。

どうやらニーナは釣り竿を知らないらしい。

ひょっとして、こっちの世界には釣り竿自体ねぇのか?

いや、さすがにそれはないか。

四万年前の遺跡から釣り針が見つかったことがあったらしいしな。

丁度いい条件さえ整えってりゃ、餌垂らして魚釣るくらい誰かが思いつくだろうし。

多分、ニーナが知らなかっただけだ。

暮らしていた地や文化によっては、そういうこともあるだろう。

「グァッ」

海や川に針の部分を垂らして、魚が引っ掛かったら引き上げるんだ。

俺のいた所じゃ、専門職の人間以外は食料の調達っつうよりは娯楽の方に重みを置いてる節があったがな。

ニーナも一回やってみるといいぞ。

「ぺふぅ……」

『モウチョット、短メニ……』

あ、ああ、スマン。

つい興奮しちまって。

『針垂ラス。魚引キ上ゲル。楽シイ。ヤッテミルトイイ』

めっちゃ要約しやがった……。

いや、伝わったらいいんだけどさ。

なんか俺がちょっと冷たい感じに受け取られそうで怖いんだけど。

ダイジェストでもいいんだけど、もっとこう、温かみを頼む。

「その道具、お借りしてもいいんですか?」

説明を聞いたニーナは、目を輝かせながら釣り竿を見ている。

おっ、興味持ってもらえたか。

ニーナのステータスを見るに元々狩りとかやってたみたいだし、こういうのが好きなのかもしれない。

どうぞどうぞ。

俺は使わないし、港街の方に持っていっていいぞ。

ひょっとしたらそっちの方でも使える機会があるかもしれねぇ。

とと、そういえば植物には使えたけど、道具には〖ステータス閲覧〗って通んのかな。

一応やってみっか。

【〖骨の釣り竿:価値F+〗】

【あり合わせの材料で作られただけあって糸は太く、針も大きい。】

【上手く餌を刺しても、針を隠しきるのは難しいだろう。】

なかなか辛辣な評価……。

ま、まぁ、こういうのは気持ちが大事だから。

むしろ寄せ集めのオンボロ品なんだから、釣竿認定されただけでもラッキーだと思わねぇと。

量産しようと思ったらラクダの数だけ作れるしな。

余っていたラクダの臓物を捏ね、釣りの餌用に肉団子を数個ほど作る。

……こんなんで本当に釣れんのかな。

提案しといてなんだが、不安になってきたぞ。

そもそもこの世界の海って魚いんのか? 変な魔物に乱獲されたりしてない?

ニーナも俺を真似て楽しそうに肉団子を作っている。

今更不安を口にはできねぇ。

もうちっと海を見てから言い出すべきだったか。

これで何も釣れなかったら、俺はどんな顔をすればいいんだ。

玉兎も耳で余った肉を捏ねて肉団子を作り、自分の口に放り投げている。

どうせならちょっとは手伝えよと。

お前、ラクダ肉一番喰ってたくせにまだ足りないのか。

俺より数百キロ以上軽そうに見えるんだけど、何にカロリー消費してんの?

こっちの世界に来てから一番不思議なんだけど。

餌用の肉団子を毛皮で包み、釣り竿と共にニーナに持たせる。

ニーナは釣り竿を撫でてから海へと目をやる。

「任せてください! ニーナ、今晩のご飯の分は手に入れてみせますにゃっ! ほんの少しでも、お役に立ってみせます!」

お、おう。

気持ちは嬉しいが、そこまで力入れてやらなくてもいいんだけど……。

むしろ何も釣れなかったとき俺が申し訳ないから、もっと軽い気持ちでやってくれると助かるっつうか……。

玉兎、なにか、上手い感じに〖念話〗頼む。

適当に駄目だったときの保険かけといてくれ。

「ぺふっ」

『ウム、期待シテイルゾ。今晩分ニ満タナケレバ、足ラズハ貴様ノ肉ヲ以ッテ補ッテモラオウカ、ッテ』

「ふにゃっ!?」

玉兎っ! てめっ、こらっ!

保険かけるどころか追い詰めてどうするんだ。

ニーナちょっと震えてるじゃねぇか!

陰湿な遊び方してんじゃねぇぞ!

「ニ、ニーナなんかでよろしければ……」

訂正して!

玉兎、お願いだから訂正して!

この娘、変な覚悟決めちゃってるから!

ニーナは俺の慌てぶりを見て玉兎の冗談だと分かったらしく、胸を撫で下ろしながら笑っていた。

早速釣りをするため、海辺へと戻る。

ニーナは興奮からかそわそわしており、顔を赤らめながら海を観察していた。

猫耳の獣人だし、ひょっとしたら魚が好きだったりするのだろうか。

いや、別に猫はそこまで魚好きでもないんだったっけ。

牛の缶詰と魚の缶詰を選ばせたら大抵前者に飛びつくって聞いて、ちょっとがっかりした覚えがある。

虎の仲間だし、仕方ないわな。

しっかし、海の中に魚……あんまし見えねぇな。

これ、本当に釣れんのか。

なんか期待させた分、釣れなかったらスゲー罪悪感っつうか……。

長靴か空き缶でも釣れてくれたらまだ話のタネになるが、そもそもこの辺りに人間が通ること自体少なさそうだからな……。