軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.メガネ君、「夜明けの黒鳥」の住処へ

なんか不承不承感があるライラを急かし、「黒鳥」の拠点に案内してもらった。

観光がてら王都は結構歩いたつもりだが、まだ来たことがなかった倉庫街に連れていかれた。

なんでも、大きな倉庫を借り受けて内装をいじり、主立ったメンバーはそこに住んでいるらしい。

「あたしみたいな新入りは、また違うところに住んでるんだけどね」

ライラの話では、有名な冒険者チームなどは、冒険者ギルドや商業ギルドほか有力者から住む場所を紹介してもらえるのだとか。

単純に考えて、有事の際に確実に連絡が取れるよう、住んでいる場所を固定するためなんじゃないかな。

冒険者側も、ただ宿に泊まるより料金は安く済むから、双方向に利がある話だと思うけど。

何せ十人以上の大所帯だもんな。

宿を借りれば一晩でもバカにならない出費になる。

ちなみにホルンもここに住んでいるとか。

身内として言わせてもらえれば、問題行動ばかりの姉から目を離せないから、傍に置いているんじゃなかろうか。

「ちょっと待ってて」

とある倉庫の前に着くと、ライラは俺を置いて先に中に入っていった。

馬車が入れるほど大きな両開きの扉の出入口だが、ライラが簡単に押し開けたので、見た目ほど重くはないらしい。

「……『冒険者 夜明けの黒鳥』か」

両開きの扉の上部にある年月を経た古めかしい板に、そう書いてある。拠点であることは間違いなさそうだ。

で、中には数名の人の気配を感じる。三人かな。ライラを除いて。

……うん、どれも強いな。

全員ロロベルくらい強いみたいだ。なら、えっと、二ツ星か。三人とも二ツ星の冒険者か。

王都でトップの冒険者チーム、か。

…………

ん、柄にもなく、ちょっと緊張してきたな。

屈伸してこわばり出した足を動かし、ついでに上半身の筋肉もひねったりして伸ばしておく。

必要はないだろうし、そんな状況にもならないとは思うが、いつでも逃げられるように身体はほぐしておく。

そんなことをしていると、先行していたライラが戻ってきた。

「どうぞ。――あ、今リーダーいないんだけど、副リーダーでもいいよね?」

え?

うん、まあ、……うん。

…………

俺が動き出す前に「リーダー不在」を言ってほしかった。もう出入口に片足入っちゃったよ。

俺は、現状、姉が一番迷惑を掛けているだろうトップに挨拶に来たのだ。

代理に挨拶しても、誠意は伝わりづらいだろう。代理ではなく本人に伝えるべきなのだから。人伝の謝罪や謝辞に重きは置けないだろう。貴族とか王族でもないんだから。

いないなら、いる時に、こっちが合わせるべきなんだから。

……ここまで来て引き返すのも逆に迷惑だろうし、とにかく行くか。

で、もしメンバーの人当たりがよさそうなら、村に帰る前に改めてもう一度来よう。次こそリーダーに挨拶しよう。

今日、今のところは、副リーダーということで。

どうせ副リーダーにも多大な迷惑を掛けているだろうしね。

外から見たら大きな倉庫だが、中は宿のようだった。

入ってすぐに大きな長テーブルがあり、椅子がある。ここで食事したりくつろいだりするのだろう。

左手にある内階段を昇った二階に、手すりのある廊下と、開いていたり閉まっていたりする扉がある。あれが個室だろう。

出入口付近に武器を掛ける棚がある辺りに荒事の気配がするが、中は割とすっきりしていると思う。

そして、テーブルに二人いた。

一番奥……入ってきた俺にとっては真正面に位置する長テーブルの最奥に、手を組んで待ち構えていた人。

座る位置からして、この人が副リーダーだろう。

「こちら、ホルンお姉さまの弟です」

ライラが簡単に紹介し、正面の副リーダーが頷く。

「ようこそ」

女性。二十半ば。赤いフードを被った軽装の美女である。……強いのは確かだが、それだけじゃない何かの気配を感じる。

それと、左の中ほどの席にもう一人。

長い金髪を後ろに引っ詰めている、無精ヒゲのゴツいおっさん。……いや、意外に若いのか? ヒゲのせいで若干年上に見えるだけか? いかにも戦士って感じだ。もちろん彼も強い。

――観察はさておき。

「アルバト村のエイルです。姉のホルンがこちらでお世話になっていると聞き、挨拶に来ました。恐らく、きっと、間違いなく、大変姉が迷惑を掛けているかと思いますが、何卒今後ともよろしくお願いします」

きちんと頭を下げておく。それはもう、きっちりと。相手に頭頂部を見せつけるように。

「…………」

「…………」

「…………」

…………

…………え? 聞いてた? 俺確かに挨拶したよね? 無反応ってなんだ。

「……あ、え?」

え?

正面の女性が妙な声を漏らしたので、思わず頭を上げた。

……すごく驚いた顔をしていた。おっさんの方も。なぜか横にいるライラも。

「あの…………君、本当に、ホルンのおと、おとうと? ご家族の弟? ご家族の血の繋がっている幼少から一緒に育った弟? ……あっ、血の繋がってない弟ね!?」

…………

この反応。

この認識のされ方。

大方「あのホルンの弟」という先入観を裏切ったのだろう。

普段姉がどんな言動をもってこの冒険者チームを振り回しているか、迷惑を掛けているか、言外ながら如実に伝わってくる。

どうやら俺は、絶対に、リーダーにも挨拶に来ないといけないようだ。

これは絶対に、俺が考えている以上に、迷惑を掛けている。

手土産くらい持ってくるんだった。これは出してもいい雰囲気だ。

場合によっては借金返済のお金を出そうと思っていたから、そのほかはまったく用意していない。

「……お、おう…………とりあえず、座れや」

こちらも戸惑いが隠せないようだが、無精ヒゲのおっさんが、俺に椅子を進めてくれた。

「……なんでそんなちゃんと挨拶できるのに、あたしの時はしないんだよ……」

ライラが小声でブツブツ言っているが、大したことじゃなさそうなので返事はしないでおこう。