軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第178話 衝突

最初に現れたのは、小柄な少女だった。

十代半ばくらいだろうか。

褐色の肌で、顔立ちだけでいうとネパールとか、あの辺りの印象を受ける。

でも怪我を負った男性と同じで、髪や目の色素がかなり薄い。

少女にやや遅れて、二人の男性が駆け込んできた。

大楯と大剣を背負うがっしりした体型の男性と、槍を持った軽鎧の長身の男性。

そのどちらも身体的特徴は同じだ。

褐色の肌と色素の薄い髪と目、髭は生えていない。

二人ともかなり若いから、あの怪我を負った男性ほど顔は濃くない。

それでも日本人に比べたら、かなり彫りの深い顔立ちだった。

そして最後に姿を現したのは——

あの赤褐色のフルメイルだった。

「…………」

「…………」

無言のまま、しばらく見つめ合う。

「……はぁ」

俺は重いため息をつき、頭をガシガシと掻いた。

”え? なんでそんな態度なん?”

”友好関係を築くのが目的なんじゃ……”

”イキってるとこ見られた照れ隠しじゃね?”

”いや見られたも何も、ずっと配信してて……”

”アホなんかこいつマジで”

俺は緩慢な動作で立ち上がり、わざと足音を立てながら瓦礫の山を降りた。

警戒した別世界人たちが、それぞれの武器を抜き臨戦態勢になる。

俺も呼応するように、重心を落として背負った剣の柄を握った。

”なんで戦う流れになってんねん……”

”これ馬鹿にしてるとかじゃなくて、マジで一回ちゃんと病院で診てもらった方がいいんちゃうか”

”現代医学でどうにかできんのかな”

”ブラックジャックが金払ってお引き取り願うレベルやろ”

別世界人は俺を包囲するように、ゆっくりと左右に展開する。

少しずつだけど、着実に俺が不利な状況になっていく。

とはいえ、こちらから攻撃を仕掛けるわけにもいかない。

俺は彼らと仲良くしたいのだ。

(……なのに、なんでこんなことに)

一体誰のせいなのだろう。

(別世界人に土下座って通じるのかな……?)

最悪、腰かけてもらっても構わないのだが……。

座り心地には、なかなか定評のある俺だ。

それが友好の礎になるのではないか——

そんなことを考えた時だった。

がっしりとした体躯の男性が、大楯を地面に叩きつけた。

神殿全体が震えるほどの轟音がして——

視界の端で何かが煌めく。

俺は反射的に剣を抜いた。

激しい金属音と閃光が 迸(ほとばし) る。

鋭い槍の一撃が、俺の脇腹を掠めて後方へと流れる。

額がふれそうな位置に、長身の男性の顔があった。

まさか防がれると思っていなかったのだろう。

男性の顔が引き攣り、でもすぐに体勢を立て直して俺の腹に前蹴りを放つ。

鈍い音がして、男性は反動で三メートルほど背後に飛んだ。

俺も二、三歩ほどタタラを踏んでから、バックステップで距離を取る。

全身から冷や汗が吹き出す。

バクバクバクと心臓がうるさい。

(い、今のはマジで危なかった……)

”え? 今何が起きたん?”

”おそろしく速い一撃、普通に見逃しちゃったね”

”でかいやつが注意を引いて、槍のやつがその隙をついたんやと思う”

”よく防げたな……”

速いのはもちろん、タイミングが完璧すぎた。

本当に紙一重。

今のは死んでいても——

いやむしろ、まだ生きているのが不思議なくらいで……。

”ジロー、めっちゃ青ざめてるやん”

”マジで危なかったんやな今の”

”よく考えたら、あの異形の神を倒すような連中やもんな……”

”なんかジローなら平気って勝手に思い込んでたけど、さすがに一人じゃ……”

”マジでちょっとやばくない?”

”このレベルの相手に、4体1って……”

”一旦引いた方がいいんじゃ……”

「も、もう少しで……」

俺はガタガタと震える。

「もう少しで斬り殺すとこだった……」

”あ、そういう……”

”もうヤダこの人”

”てか早すぎてスルーしちゃったけど、さっき蹴った側が吹っ飛んでなかった?”

”ダンジョンを突破したってのに、その先でこんなのが待ち構えてた時の気持ちって、どんなんなんやろな”

”想像もできんわ”

”気の毒すぎるやろ”

”コメント欄がだんだん異世界人応援する流れになってて草生える”

”大丈夫、お前らには俺たち視聴者がついてるぞっ”

”がんばれ異世界人っ!”