軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

363.アルトワールアンテナ島開局セレモニー 02

「カニのスープもありか……?」

などと、こんなところでも拉麺のことを考え思案気なリノキスに、「じゃあ後でね」と彼女を残しニアはホテルの部屋を出た。

これからセレモニー第二部となる、夜の部が始まる。

酒が出る大人組と、健全な子供組で別れる構成だ。

数多くの国の要人が集うこの場で、大人たちは子供の前ではできない政治の話を、子供たちは子供たちで国や家に有益な付き合いを結んだり情報を探り合うのだ。

他国の者が来る場である。

何も知らない無邪気な子供ではなく、貴族の子供が連れて来られている。

そういう事情で、できる限り大人が立ち入らないことがルールとして定められている。

きちんと自分の役割を把握している子供たちだ、だから滅多なことは起こらないだろう、と。

表向きはそんな理由で、大人を排している――「大人の社交場は子供には退屈だろうから」なんて理由を付けられて。

果たしてこの区切りの理由は子供たちに対する信頼なのか、それとも試練なのか、あるいは――挑発なのか。

あらゆる国の上流階級の子供たちが集まる場。

大人たちの場でさえ色々ありそうなのに、大人を排した子供たちの場は、無法地帯のような様相にならないか。

いろんな不安はあるが――

「――お嬢様! くれぐれも暴れないでくださいね! 止める私はいませんからね!」

閉めたドアの向こうから、リノキスの声が聞こえた。

「……失敬な」

私よりリノキスの方が暴れているだろうが――そんなことを思いながら、ニアは歩き出した。

「――行こうか」

ロビーで待っていた兄ニールにエスコートされ、リストンの兄妹はパーティー会場へ向かう。

アルトワールでは、十五歳で聖人と見なされる。

ニールは現在十四歳で、来年成人する予定だ。

なのでまだ子供側である。

もはや百人以上は泣かせているだろう両親のいいところのみを継いだ顔立ちも、剣術や単船競技で鍛えられた細く引き締まった身体も、いろんな意味で大人っぽくはあるが。露骨に言うと若いツバメ的な魅力があるが。

それでもまだ子供側である。

昼から夕方にかけてのセレモニーは、屋外の立食パーティーだった。

二部のパーティー会場は、かつて暴走王フラジャイルが拠点としていた屋敷である。

大人は一階で、子供は二階だ。

さすがに冬だ、日没後の屋外は寒い。

改装と増築であまり原型は残っていないが、あの極悪な空賊の痕跡など一つたりとも残す必要はないだろう。

そんな屋敷に向かう、ニアたち以外の子供連れの人たちもちらほら見える中、エスコートするニールがニアに語り掛ける。

「ニアは外国の知り合いが多いんだな」

「留学しているからね。誰かと話した?」

昼は、あえて深く挨拶しなかったものの、ニアの顔見知りは結構いた。

両親が一緒だったせいである。

色々と説明に困る付き合いもあるので、あくまでも顔見知り程度に軽く目を合わせた程度である。

飛行皇国ヴァンドルージュからは第四皇子クリスト・ヴォルト・ヴァンドルージュと、空軍総大将ガウィンと陸軍総大将カカナ。

この三人は表向きの理由――ヴァンドルージュの結婚式の撮影で付き合いがあると説明できたので、それなりに挨拶した。

機兵王国マーベリアからも来ていた。

会ったことのなかった第二王子……いや、今では王弟となった者と、第三王女クランオールが来ており、まあ普通に挨拶した。

今留学している武勇国ウーハイトンからは、久しぶりにあったリントン・オーロンが来ていたし、すでに会っている聖王国アスターニャからは聖女フィリアリオと聖騎士ライジが。

要人の知り合い自体は少ないが、その少ない要人はなかなかの大物が多い。

「ニアの兄と言ったら驚かれたよ。ほら、髪の色が違うから。初対面では兄妹だとは気づかなかったみたいだ」

昼のパーティーでは、ニールは各国の要人に話を聞きつつ撮影を行っていた。

港で撮りきれなかった自己紹介を補完し、二部で公開する予定なんだとか。

今頃撮影班は、間近に迫る締め切りに向けて、地獄のような編集作業に追われていたりするかもしれない。

「そういえばお兄様、結婚相手は決まった?」

「ん?」

「挨拶に来た方々、お兄様の結婚の話題を出していたから」

ついでのようにニアの名も出していたが、あれはどう見ても兄ニール狙いである。本当についでのように妹の名を出していたにすぎない。

「それがいないんだ。まったく」

「お父様が選んだりしないの?」

「アルトワールはもう、子供を道具にする結婚を推奨する時代じゃないから好きに恋愛結婚しろってさ。ニアも同じ意向だと思う」

「ふうん……つまりお兄様は恋人がいないと」

「いない」

「早く特定の相手を作りなさいよ。泣く女が増えるだけじゃない」

「……あのな、ニア」

「何?」

「中学部に進級してから、たくさんの女性たちが寄ってきてね……それで色々揉め事が起こって、もう女性が怖くて怖くて仕方がなくなってしまったんだ……」

「……えぇ……」

兄の心の傷の片鱗に触れて引く妹は、いつの間にか心に傷を負っていた兄とともに、子供だけの夜のパーティーへと足を踏み入れていく。

「マーベリアの王女だったら紹介できそうだけど? どう? 会ってみる?」

「いや、ほっといてほしい。……え? マーベリアの王女と付き合いがあるのか? というかそんな友達を紹介する感覚で紹介していい身分の人じゃないだろ」

「身分だけ取ればね。でも呼び捨て同士の仲よ?」

「それもなぜだ? そんなに気安い関係なのか?」

と、そんな話をしながら。