作品タイトル不明
305.空賊列島潜入作戦 合流後 5
「そうか、バンディットは全面的に従うと言っていたか」
予定通り、陽が沈んでからやってきた青剣王レイソンに今朝の話をすると、彼はニヒルに笑いながら頷いた。
今夜も会議の体で、テーブルを囲んだ。
今回はその中に、レイソンが参加している。
「獣人の多くは実力主義だ、よほど反感を買っていなければ強者に下る。……噂に聞く『狂乱のリリー』の仕事かね?」
視線を向けられたニア・リストンは頷く。
「どうする? あなたとも戦った方がいい?」
と、ニアは軽く言う。
レイソンが生粋の空賊じゃないとは聞いている。
だが、お互い実力がわからないのでは、これから協力して作戦を動かすには少々不安が残る、という気持ちはある。
――まあ、ニアとしては単に戦いたいだけだが。
「フフッ、やめておこう。バンディットを全面降伏させたのだろう? ならば勝てる気がせん」
それこそ生粋の空賊じゃないレイソンには、戦う理由がない。空賊として賭ける維持やプライドなど持っていないのだから。
大人の余裕さえ感じさせる態度で「それより」と、話を元に戻した。
「空賊列島を制圧する話をしたい。具体的なプランは決まったかね、ガウィン君?」
「ああ、まあ、うっすらとはね。ただ、こうなると四空王最後の一人となった無頼王キートン・レターグースの動向が気になる」
「ここまでの騒ぎが起こって動かないのでは、きっと不在だな。奴は騒ぎを聞きつけて帰ってくるかどうかもわからんよ」
「え、そういう奴なの?」
「自分の冒険が最優先で、時々思い出したように戻ってくる。キートンとはそういう男だ」
奴隷というのは、空賊列島に住んでいる者たちの総称に近い。
ここで働き、食物を作り、それなりの文化を保ち、空賊相手に商売をする――それが基本的な奴隷だ。
フラジャイルの支配地では色々とひどい扱いを受けていたが、他の島では……少なくとも今代の四空王の支配地では、奴隷という肩書の普通の庶民くらいの感じで暮らしている。
船や島を襲っては略奪し、どんどん奴隷を連れてきたフラジャイルとその傘下。
それに対し、レイソンとバンディットはできるだけ己の支配地から離れず、自分の島の奴隷たちを守っていたのだとか。
隙を見せれば、フラジャイルらはレイソンやバンディットの支配地からも奴隷や荷を略奪していたことだろう。
それこそ空賊列島を潰しかねない行為だ。正気の沙汰じゃない――その辺がフラジャイルが「暴走王」と呼ばれた所以だ。
しかし、キートンはそのどちらとも違う。
基本的に支配している島は放置で、時々帰ってくるだけ。
奴隷が増えたり減ったりも特に気にしなかった。
支配者としての自覚がなく、支配地をただの補給する港くらいにしか思っていない。
それがキートン・レターグースである。
そして、そんなキートンの島にいる奴隷を不憫に思ったレイソンとバンディットが、自分の島のついでに守ってきたのだ。
もし二人が守っていなければ、あの島はフラジャイルに蹂躙されていただろう。
――まあ、それは今はいいとして。
「結論を言うと」
少しばかりキートンのことを語ったレイソンは、結論を述べた。
「奴はいてもいなくても問題なかろう。支配地がなくなったとて大して気にもせんだろうし、気にするだけの責任も果たしておらん。奴隷たちの世話もしとらんしな」
そもそも空賊とは、帰港する場所はあろうとも、特定の支配地……居場所を持つような存在ではない。
キートンは、たまたま強くて四空王の椅子を手にしたが、支配地が欲しかったわけではないのだ。
そう考えると、この放置っぷりもわからなくはない、とレイソンは言った。――空賊に混じって何年も潜伏しているだけに、彼の空賊への造詣はなかなかのものである。
「そうかい? じゃあ……とりあえずキートンのことは無視して考えるとして」
四空王の内、三人は押さえることに成功した。
暴走王フラジャイルは排除済み。
青剣王レイソンは元から味方。
白猫王バンディットは傘下に入れた。
ここまで手札が揃ったのであれば、キートン・レターグースの協力あるいは排除という手札は、なくてもいい。
万全を期すために欲しくはあるが、不在ならば仕方ない。いつ帰ってくるかわからない者を待つのも時間の無駄だ。
「――じゃあ、ここからは作戦会議をしようか。といっても、必要な要素は全部揃ってるから、難しいことは必要ないと思うけどね」
会議は深夜まで続き。
空賊列島制圧作戦決行日は、これより三日後となった。