軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.飛行烏賊討伐

飛行烏賊(スカイスクイッド) の迎撃を回避し、単船から飛び降りて甲板に着地する。

少し遅れて、リノキスも単船を金属の手すりにぶつけて強引に停止して降り立った。

逃がすつもりはさらさらないが、さっき足を爆散させた「氣拳・破ル流」で引くようなら、見逃してもいいと思っていた。

飛行船を襲って痛い目に遭った、と学習すれば、今後は襲わないはずだ。

想像より弱いみたいだし、すでに私のやる気もなくなったし。

しかし――どうやら逆効果だったようだ。

しっかり絡みついていた足がずるずると動き出している。

巨大な黒い目が甲板に立つ私に向けられているので、私が攻撃したことを理解しているのだろう。

足を吹き飛ばされたことにお冠のようだ。

「おじょ、リリー! 私はどうすれば!?」

うん。

「急いでぶら下がってる人を回収して。烏賊は私が相手するから無視していい。それと回収した人の命綱を自分に結んでおきなさい」

飛行烏賊(スカイスクイッド) は私を標的と見なしている。

私に攻撃が集中するなら問題ない。

変に攻撃が分散してしまうと、飛行船の致命的な故障に繋がったり、ぶら下がっている人たちが危ない。

「わかった!」

さて。

案の定甲板には誰もいないし、多少暴れても文句は出ないだろう。

「――おいで」

言葉が通じているとは思えないが、挑発していることくらいは伝わったかもしれない。

飛行烏賊(スカイスクイッド) は大きく足を二本振り上げた。背後から三本迫っている。一本は積み荷だろうか、大きな木箱を掴んで持ち上げている。

うむ、弱い割には頭を使った攻撃方法もできるのか。特に道具を使う辺り、意外と知能は低くないかもしれない。……念のために木箱は優しく受け止めておこう。中身が気になる。金を稼ぎに来たのに弁償は嫌だ。

しかしまあ、その程度のことである。

リノキスが宙づりの連中を回収し終わるまでは、ちゃんと遊んでやろう。

飛行魚(スカイフィッシュ) 。

海に根付いた大陸を砕き、数多の浮島を生じさせた「大地を裂く者ヴィケランダ」の影響の一つで、海の生物の進化形態の一つと言われている。

文字通り、空を回遊する魚である。

いずれ海に帰るとも、永遠に空を泳ぎ続けるとも言われていたりして、正直何が何だかよくわからない生物だ。空を海と勘違いして泳いでいるだけ、みたいな存在である。

大きさはまちまちで、種類も統一性はない。

今回の 飛行烏賊(スカイスクイッド) のように嘘みたいな巨大なものもいれば、多くの者が良く知る、一般的な海魚サイズもいる。

有名なのは、およそ大きな浮島かってくらい巨大な飛行鯨「モーモー・リー」の存在である。

「光を食らう者モーモー・リー」。

天空を泳ぐ鯨が太陽を遮る時に落ちる影を見て、昔の人は「光を食べる存在」と恐れたらしい。

そんな逸話を持つ「モーモー・リー」は、もう何百年も大空という海を悠々と泳いでいる。

その雄大な姿は、神の化身、神の使いとも言われていて、信仰の対象にもなっているとかいないとか。

今でも健在で、世界中の空を泳ぐ鯨は、数年に一度はどこにいても姿が見えるそうだ。

前世(・・) でも見た気はするが、 今生(・・) はまだである。

まあ、要するに、 飛行魚(スカイフィッシュ) とはよくわからない存在ということである。

飛行烏賊(スカイスクイッド) の攻撃を時に避け、時に受け止める。

甲板を叩きそうな角度のものは片手で防御し、できるだけ飛行船に負担を掛けないように対処する。

特に問題はない。全身なんか生臭いぬるぬるでべちょべちょになっているだけである。

時々物を拾っては、飛行船の外から覗き込むように凝視している黒い目に向かって投げつけて注意を引く。

感情が見えない目に、どんどん怒りが募っていっているような気がする。

なかなか狩れない、それどころかわずらわしいちょっかいを掛けてくる私に対し、熱烈な眼差しがはずれない。

狙い通りである。

その間に、かなり自由に動けているリノキスが、宙づりになっている連中を回収して、烏賊を警戒しつつひっそりと開かれた船室に押し込んでいる。

「――リリー! こっちは終わった!」

お、回収は済んだか。

じゃあ遊びはここまでだな。

「どれでもいいから、槍に使えそうな重い棒に命綱を結んで!」

「えっ……あ、わかった!」

私の意図が伝わったのかどうかはわからないが、リノキスは指示通りに動き出した。

その間、私はもう我慢することなく、襲い来る烏賊の足を「破ル流」で爆散させていく。断続的な衝撃音が続く度に、 飛行烏賊(スカイスクイッド) の足がなくなっていく。

ギギギギ

果たしてそれは、 飛行烏賊(スカイスクイッド) の悲鳴だったのか、それとも飛行船がきしむ音だったのか。

私に触れた足が千切れ飛ぶという不可解であろう現象に、烏賊の黒い目がわずかに逸れた。

――動揺から畏怖へ、確かに感情が動いた。

「ダメよ」

飛行烏賊(スカイスクイッド) が逃げの動作に入る前に、一足飛びで距離を詰め、烏賊の頭の真上に飛んで位置を取る。

「もう逃がさない」

どうせ逃げるなら、初手で逃げていればよかったのに。

だが、もう見逃す気はない。

足に「内氣」を練り、「 重氣(・・) 」を込める。

この 飛行烏賊(スカイスクイッド) は見掛け倒しなので、技はいらないだろう。魔石ごと破壊してしまうと面倒だし、身も売れるかもしれない。できるだけ原型は留めておきたい。

そう、ただ甲板に向かって蹴るだけでいい。

軟体にはあまり効かないだろうが、関係ない。

――かなり弾力のある烏賊を蹴り飛ばし、頭を甲板に叩きつける。

「刺して!」

蹴った態勢のまままだ宙を舞っている私に言われるまでもなく、リノキスは烏賊の目に向かって、深々と命綱つきの曲がった金属棒を突き刺した。

よし、これで終わりだな。

…………

つまらん。

次はもうちょっと歯ごたえがある魔獣を相手したいものだ。