軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68話 完全勝利!!

フランカ率いる主力の六人は必死に逃げ続けていた。

ただ逃げるのではなく絶えず背後をチェックし、追撃者との距離を調整し続けている。

格上の冒険者から追い続けられるプレッシャーは精神的には大きな負担で、想像以上の疲労感をフランカ達に与えていた。

そのプレッシャーにも耐え続け、フランカはずっと背後に意識を向け続けている。

その理由は追撃者を引き付けるだけでは無い、フランカはずっと合図を待っていたのだ。

すると二百メートル位後方から一本の矢が空に向かって飛び立っていた。

矢には目立つように赤く長いリボンが取り付けられている。

「やりましたよ。エリーナ達がやってくれました。次は私たちの番です。逃げ回るのはもう終わりましょう。これからは反撃に移ります。全員、自分達の全力を出し切って【デザートスコーピオン】を足止めして下さい」

フランカの号令により、縦に長い隊列を走りながら横長に並び隊列へと組み直す。

縦に長い隊列は森の中で走りやすくする為で、隊列を変更する意味は逃げる事を止めた意思表示でもある。

組み直した隊列は横並びの真っ直ぐな一直線では無く、中央部分だけが敵に向けて飛び出している感じだ。

頭上から見ると【デザートスコーピオン】に対して半円の形状で向かい合う形となる。

そして急反転をすると【グリーンウィング】のメンバー達は、すぐに反撃を始めた。

「喰らいなさい【レインランス】」

フランカの手のひらから空に向かって巨大な水球が飛ばされると、その水球は空中に漂いながら、無数の水の槍を【デザートスコーピオン】に降らせた。

「スキル【ロックコート】発動だ!! 魔力が続く限りどんな攻撃だって耐え抜いて見せるぜ」

剣士の男がスキルを使うと身体の色が茶色に変色していく。

皮膚感も硬質化している様で、身体の周囲に岩が張りついた感じに近い。

身体が硬質化し防御にも攻撃にも使える攻防一体のスキルだ。

「俺の三連突きを叩き込んでやる」

手に持つ剣に光がともり、何時でもスキルが使える状態へと移行する。

残りの三名も、遠距離攻撃や自分達のスキルを使用し【デザートスコーピオン】に攻撃を始めた。

「気を付けろ。攻撃がくるぞ」

【グリーンウィング】が突然反撃に転換してきた事で、【デザートスコーピオン】達も一瞬だけ足を止められた。

しかし混乱する程ではなく、降り注ぐ水の槍を剣で破壊しながら、怪我人を発生させる事も無く対応している。

「どうやら。獲物は逃げる事を諦めた様だ」

「ちぇっ、これで追いかけっこは終わりかよ。もっと楽しませてくれても良かったのによ」

【デザートスコーピオン】のメンバーは剣士が主体だった。

武器を発光させる者や、身体能力を上げる者。

スキルを使用し【デザートスコーピオン】側も迎撃態勢を取り始める。

★ ★ ★

【グリーンウィング】は魔力切れお構いなしの総攻撃を仕掛け続けていた。

全力で攻撃を仕掛けているので長くは持たないのだが、実力差があったとしても、攻撃を受け続けている間は【デザートスコーピオン】達も思う様に動く事は出来ずにいる。

しかし防戦一方では無く、手短に作戦を話し合っていた。

「俺達が正面に突っ込んで隊列を崩してやるから、矢と魔法の対応は任せたぞ」

「任せろ!! さっさとぶっ潰して終わらせてくれ」

その後、ジリジリと前進を続け真正面に突っ込んできた。

だが【デザートスコーピオン】が正面に突っ込んでくる事も全ては想定内で、実際にそうなる様に誘導していたのだ。

横に長く広がった半円型の隊列の両端には遠距離攻撃が出来るメンバーを配置し、半円型の中央部分は一番敵に近い場所なので三人の剣士を配置していた。

遠距離攻撃が一番鬱陶しいので最初に潰したいのだが、両端までは距離もある上に絶え間なく遠距離攻撃が放たれている為、容易には近づけない。

結果、一番距離の近い上に近接戦闘部隊が配置されている真正面に突っ込んだのだ。

しかも中央部分の剣士三人は【デザートスコーピオン】を倒すつもりは無く、攻撃を受け流すといった感じで真正面から斬り合ってはいなかった。

当然、剣士の三人で十二人の冒険者を相手に出来ない事は最初から分かっている。

なので普通に戦っていたら中央部分が敵の圧力に押しつぶされてしまう事は明白だ。

なので、それを防ぐ為に、両側から矢と魔法で絶え間なく遠距離攻撃を仕掛け、その攻撃に対応させる者を強制的に作り出し、戦闘に参加できる人員を減らしていた。

今の状態なら、中央部の剣士が実際に相手しているのは、一人に対し一人か、多くて二人である。

その上、【グリーンウィング】側は足を止めて斬り合ってはおらず、絶えず少しづつ後退をしながら相手の攻撃を受け流し続けている。

足を止めていない為、実力が上の【デザートスコーピオン】の冒険者と言えども、中々決定打を与える事が出来ないでいた。

その間にも両端から無数の遠距離攻撃が降り注ぎ続け、中央部分は混戦状態となっていく。

その数十秒後、【グリーンウィング】側の中央部だけが後退をし続けていると最初相手に向かって半円だった隊列が、いつの間にか相手を包み込む包囲へと変わっていた。

そして後方からハンネル達が合流し、【デザートスコーピオン】の後方も蓋がされ、全方位から遠距離攻撃が放たれる状況へといつの間にか変わっていた。

包囲が完成した時点で、本当の総攻撃が開始され、【デザートスコーピオン】は更なる混乱へと陥っていく。

「どうなっているんだ? これは防ぎきれねぇぇぞ!!」

「痛てぇぇぇ。矢が肩にぃぃっ!!」

「クソがぁぁ。装備に火がぁぁぁ」

必死に剣を振るい続け、水の槍や矢を振り払う。

火の玉は避けるか剣を横に向けてぶっ叩いて進路を無理やりかえる。

「もう駄目だ……」

そんな状況下で必死に包囲攻撃をしのいでいた冒険者が弱音を吐きだし始める。

身体には無数の怪我を負い、極度の疲労状態である。

「馬鹿野郎。冷静になりやがれ!! 実力は俺達の方が上だ。一点を突き崩せばこの包囲は崩れるんだよ。そうなりゃ【グリーンウィング】の連中なんてどうとでもなる!!」

ギルドマスターはそう指示を出して、混乱している仲間を落ち着かせようとした。

しかしその瞬間、二人の冒険者がある事に気付いた。

「おい。あの方向だけ、誰もいないぞ!! あの部分からなら逃げ出せる!!」

「急げえぇぇぇ。俺は逃げるぞぉぉ」

そう言うと、二人が走り出し、包囲から逃げ出した。

「俺も!! 待ってくれぇぇー」

二人に続き、更に一人が後を追い戦場から離脱する。

この時点ですでに十人対九人となり、【デザートスコーピオン】の人数的優位は既に無くなっていた。

更に包囲されているという不利な状況下で【デザートスコーピオン】の心は急速に折られていく。

その後、追加で二人が逃亡し、十人対七人となった事が契機となり、後は雪崩のように全員が逃亡を始めた。

「ここまで言っていた通りになるなんて、ラベルさんって本当に凄い人なんだ」

見栄えなど気にしないで必死に逃げていく【デザートスコーピオン】を尻目にエリーナが呟いた。

包囲に一点だけ逃げ道を作っておく様に指示を出したのはラベルである。

完全に包囲した場合、逃げられない事を悟った敵が死に物狂いで襲い掛かって来る可能性が高く、そうなれば包囲を破られるとラベルは説明していた。

なのでワザと一点に空いている場所を作り、そこへ敗走させる。

敗走させるという事は相手の心をへし折っていると言う事である。

当然、心を折られ逃げ出した冒険者には戦う気力は残っていない。

後は徹底的に追撃を続け、二度と手出しが出来ない程の恐怖を相手に叩き込むのが作戦だった。

「今日までの屈辱を返す時です。すぐに追撃を開始します!!」

「おぉぉぉーーっ!!」

完全勝利で士気の高まった【グリーンウィング】の追撃が始まった。

【デザートスコーピオン】のメンバーは散り散りに逃げているので、見つけ次第各個撃破されていく。

瀕死の状態となって命乞いをするまで、【グリーンウィング】が攻撃をやめる事は無かった。

【デザートスコーピオン】にとって二階層は、価値の低いただの上層な為、階層全体の捜索など行ってはおらず。

下層へと続く道のみ記された大雑把な地図しか持っていない。

なので逃げ出した【デザートスコーピオン】のメンバー達は森の中でさまよう事となる。

更に敵は【グリーンウィング】だけでは無い。

当然、魔物も襲ってくる為、出口にたどり着く前に疲労は貯まり、その場に座り込む者も現れる。

一方【グリーンウィング】は階層全体の地図も持っているので、手分けし効率よく【デザートスコーピオン】達を捜索し、優位な立場からの殲滅を続けていく。

そして遂に【デザートスコーピオン】のギルドマスターを捕らえる事に成功した。