軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

51話 真夜中の襲撃

リンドバーグを加えた食事会は良い雰囲気だった。

俺以外のメンバーがリンドバーグより年下だったのが良かったかもしれない。

美味しい肉料理に舌鼓を打ちながら、俺達の会話も弾んでいく。

経験上の話だが、途中からギルドに加入する者と当初のメンバーでは、無意識の内に壁を作ってしまいがちで、最初はギクシャクする事が多い。

しかしリオンとダンはまだ冒険者になってそれほど長くはないので、変なプライドを持ち合わせておらず、年上で自分達より経験の多いリンドバーグに色々教えて欲しいと自ら頼み込んでいた位だ。

リンドバーグも面倒見が良く、どんな質問にも嫌がらず答えていた。

二人の質問攻めが功を奏し、リンドバーグという人物像が少しづつ見えてきた。

「リンドバーグさんの階級を教えて貰ってもいいですか?」

「リンドバーグのにーちゃんって、結婚してんの?」

「リンドバーグさんって武器は何使ってます? あっそれとポジションは何処ですか? 私は前衛なんですけど……」

「リンドバーグのにーちゃんって、家って何処?」

「ダン、アンタさっきから戦闘に関係ない事ばかり聞いているじゃない。私達は一緒にダンジョンに潜るんだよ。連携に必要な事を聞きなさいよ。家を聞いてなんの役にたつのよ? 遊びに行く気?」

「だって、家近いとなんか嬉しいだろ? ご近所なら遊びに行くのもありだ」

そのやり取りを見てリンドバーグが噴き出し、その瞬間にリンドバーグの緊張が完全に取り除かれたように見えた。

口下手な俺ではこの空気感は絶対に作りだせないから、リオンとダンには感謝している。

俺の予想通り、リンドバーグは真面目で心優しい男だった。

リンドバーグならリオンとダンを引っ張って行ってくれると確信する。

食事を終えた俺達は、このまま現地解散する事になった。

明日は四人でC級ダンジョンを潜る事になっている。

俺はホームに寄る用事が在ったので一度ホームに向かう予定だ。

リオンの自宅はギルドホームからそれ程離れていないので、途中まで俺が送っていく事になった。

街の中には等間隔で光魔法石を利用した外灯が設置されているので、そのお陰で視野が確保されて夜でも出歩く事が出来る。

「最近は色々と忙しかったよな。疲れてないか?」

「ううん。大丈夫」

「送ってくれなくても、私は大丈夫だよ」

「リオンが強いのはよく知っているから大丈夫だと思っているさ。俺は俺でホームに用事があったからな。そのついでだ」

「ホームに戻ってお仕事? ラベルさんも毎日ダンジョンに潜っているんだから、余り無茶はしないで欲しいな」

リオンは優しい子である。

ぬいぐるみの様な愛くるしさもあり、俺は自然とリオンの頭に手を載せて撫でていた。

リオンは嫌がる事なく、俺の手を受け入れてくれた。

「どうやら俺の方が心配をかけているみたいだな」

「最近色々あったから。ラベルさんも疲れていると思って」

リオンと出会って数か月の間で本当に色々な事があった。

懐かしそうに思い出しながら歩いていると、ギルドホームに着いていた。

「別にリオンの家まで送って行ってもいいんだぞ?」

「うん。ここから近いからもう大丈夫。ラベルさんもお仕事終わらせて、早く休んでね」

「わかった。じゃあまた明日ダンジョンに潜ろう」

「うん。おやすみなさい」

俺はリオンを見送った後、ギルドホームに向かった。

★ ★ ★

ギルドホームに付いた俺は扉のドアノブに手を掛けた。

「ん? 鍵が空いている!? まさか泥棒!!?」

俺達がエリクサーを持っているという情報を何処かで聞きつけた者がいたとすれば、どんな手を使っても手に入れたい筈だ。

(エリクサーはすぐには見つからない場所に隠しているが……)

俺は静かにドアノブから手を放し、ドアに耳をそっと当てて室内の音を聞いてみた。

(音がしないな? じゃぁもう荒らされた後か?)

このままここに居ても仕方ないので、俺は室内に入ってみる事にした。

音を立てないようにゆっくりとドアを開き、まずは真っ暗な室内を見つめてみる。

(誰もいないか? 鍵をかけ忘れた可能性もあるしな……)

足音を立てない様、慎重に部屋に入ると光の魔法石を据えつけている場所に移動する。

そして心を落ち着かせて、光をともした。

室内が明るくなり、視界は昼間と変わらない様子だ。

「部屋を荒らされた様子はないか……。なら、やはり俺が鍵をかけ忘れてたんだろう。気を付けないとな」

ホッと息を吐き、緊張していた心を落ち着かせた。

そして部屋の奥に一歩踏み出した。

「待っていたぜ、おっさん。朝まで待つつもりでいたが、早く会えてうれしいぜ」

一歩踏み込んだ先には、ハンスが立っていた。

「ハンス……、お前がどうしてここにいる……?」

「ここの場所は以前に裏切者のリンドバーグが調べていたからな。知っていて当然だろ」

「お前はスクワードの部下に連れていかれて契約魔法をかけられている筈じゃ……」

「その最中に逃げたんだよ。おっさんに言ったじゃねぇーかよ。俺は絶対に許さないって……なぁぁぁっ!!」

ハンスはそう言った瞬間俺に飛び掛かって来た。

幸いなことにハンスは武器を持っていないので、一撃で斬り殺される事はない。

しかし基本の身体能力ではハンスの方が上だ。

いつもの俺ならアイテムを使って撃退する所だが、今はリュックを背負っていない。

俺は必死に体を翻し、リュックを置いてある場所に向かって走り出した。

しかし追いつかれた上に衣服を捕まれ、後方に引っ張られ背中から石張りの床に叩きつけられる。

「ぐふぅ!!」

肺の動きが一瞬だけ止まり、身体が硬直した。

そのままハンスの体重が乗った蹴りが腹に直撃する。

俺は腹をけられて吹っ飛ばされた。

飛ばされた壁には小物を置いている棚が設置してあり、棚に載せていた物が床に落ちていく。

「ゲボォッ!!」

蹴られた衝撃で胃の中の物が逆流し、さっき食べた料理を床にまき散らした。

「なんだよ、きたねぇなオイ!! 俺が捕まっている間にお前は旨い飯を食っていたっていう訳か!? ふざけんなよ、オラァァッ!!」

逆上したハンスは俺の胸倉を掴み持ち上げると、力任せに投げ飛ばした。

俺は何度も回転し仰向けで止まる。

すぐに立ち上がろうとしたが、それより早くハンスが俺の上に飛び乗ると、マウントポジションから殴りかかって来た。

「あははは。殴り殺してやるよ!!」

必死に両手で顔を守り、耐えてみたがあらゆる角度から飛んでくる拳を全て防ぐことなんて出来ない。

何度も何度も殴られ続けていく内に俺の体の力が抜けていく。

「なんだ、おっさん? もう終わりじゃないだろうなぁぁぁ? お前が俺から奪ったものはこんなもんじゃねぇぇぞぉぉぉ!! 簡単には終わらせねぇぇ」

既に俺は自由に動けない位ボロボロになっていた。

ハンスもそれが分かったのだろう。

殴っていた手を止めマウントポジションを解除した。

俺は必死に体を引きずりながらゆっくりと移動を始めた。

「なんだ? おっさん、まだ逃げる元気があるのかよ?」

しかし俺が向かう先は出入口ではない。

その進行方向の先には俺がアイテムを詰めているリュックがある。

「アハハハハ、道具が欲しいのかよ? ポーターの鑑だなおっさん。哀れすぎて涙が出てくるぜ。ほらリュックはもう直ぐだぜ。手を伸ばせば届くんじゃねーか?」

必死に腕を伸ばす様子を見てハンスは高笑いを始めた。

そして伸ばした手がリュックに掛かる時、俺の手をハンスは力一杯踏みつけた。

俺の手の甲の骨が砕ける。

「がぁぁぁぁっ!!」

踏みつけた足に全体重を乗せているハンスは、笑みを浮かべて俺が苦しむ様子を堪能しているようだった。

その表情は狂人者としか思えない位に歪んでいた。

「もう終わりか? クソ面白くもねぇぇ」

ハンスは飽きたかの様に呟いた。

「ん? なんだこれは……」

その時ハンスが何かに気付き手に取る。

「魔石…… いやダンジョンコアだな。この大きさならC級の物か…… どうして部屋に転がっているんだ?」

さっき棚に叩きけられた衝撃で、保管していたダンジョンコアが落ちたみたいだった。

そのダンジョンコアはリオンと二人で攻略した時の物で、売ろうと思っていたが色々あってそのままになっていた物だ。

しばらくダンジョンコア見つけていたハンスが口角を吊り上げ笑う。

「なぁぁ? おっさんなら知っているだろ? 魔物から生まれる魔石が余り人体に良くないんだろ?」

手に取ったダンジョンコアを見つめながらハンスは続けた。

「以前おっさんが雑談で言っていたよな? 魔石より何倍も高い魔力が含まれているダンジョンコアが人体に入ったら危険だから、加工後も誤飲出来ない様に色々と工夫されているんだっけ? じゃあ喰ってみたらどうなるか俺に見せてくれよぉぉぉ!!」

そう言うとダンジョンコアを床に叩きつけ、粉々に粉砕した。

そして砕かれたダンジョンコアの欠片を手で握り取ると俺の口に無理やり突っ込んだ。

「うぐぅぅぅぅ」

粉砕されたダンジョンコアは小石と同じで、口に入れられたとしても喉を通る訳ではない。

「ちっ!! 流石にそのままじゃ飲み込めないか…… 何かないか?」

ハンスは周囲を見渡し、俺のリュックを漁りだした。

そして適当にポーションなどの液体のアイテムを幾つも取り出し、俺の口にポーションや毒消しなどをお構いなしに飲ませてきた。

口にはダンジョンコアの欠片を放り込まれて、その上から大量の液体を流し込まれた俺は、むせながらポーションと一緒にダンジョンコアの一部を飲み込んでしまった。

その後、すぐに体中から強烈な痛みが駆け巡る。

「あがっぁぁぁぁぁぁ」

痛い! 痛い! 痛い!! 体の中が破壊されている様な痛みだ。

血管という血管が破裂寸前まで膨張している。

今にも破裂しそうだ。

強烈な痛みを誤魔化す為、無意識に胸に爪をたて血が出る位に皮膚をかきむしった。

更に痙攣が始まりだし自分で抑えられなくなる。

吐き気や激痛に襲われ、俺はその場で暴れ始めた。

気づけば視界は真っ赤に染まり、目から血が涙の様に流れている。

「これだよ、これだぁぁぁ。俺はおっさんが苦しむ姿を見たかったんだよ!! ぎゃははは、ざまぁぁぁ見ろぉぉっ!! これで少しは俺の苦しみが理解できたかぁぁ?」

ハンスは狂ったように高笑いして恍惚の表情を浮かべた。

激痛に耐える事しか出来ない俺は死を覚悟した。

もうどうする事も出来ない。

その時ドアから部屋に誰か入ってくるのが見えた気がした。

しかし今の俺には周囲に気を向ける余裕は全く無く、身体を蝕む痛みに気が狂いひたすら暴れ続けた。