軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

48話 ハンスの断罪 その1

商業都市サイフォンで【黒い市場】の企てをぶっ潰した後、事後処理を終えた俺達は首都へと戻っていた。

今日の昼には首都に到着する予定で、その間に俺とカイン達は互いの事を話し合い、情報のすり合わせも行っている。

俺が追放された経緯からギルドを作った事などをカインに話した。

カインは話を聞き終えた後、再度頭を下げてくる。

俺はカインが悔いている事も分かっているので、気にするなと言い聞かせた。

カインの方も独自に調査を行っていたらしく、ハンスの愚行は大体知っているみたいだ。

なので俺はレミリアが俺に告げた退職金の事も話してみた。

その話は初耳だったらしく、カインは怒りに満ちた表情を浮かべる。

「【オールグランド】の退職金は所属年数と本人の実績から計算されるからな、お前の退職金が金貨十枚なんてあり得ねぇよ。ハンスの野郎絶対に許さねぇ」

「俺もおかしいとは思ったんだけどな。退職金の算出方法なんて知らないし、頭に血が上ってギルドホームから飛び出して行ったからな。まさか俺の退職金が盗まれていたなんて想像もしなかったよ」

「ギルドには今までお前が記名した書類も残っている筈だ。退職金の受領書と見比べてサインが偽造されているかスクワードの部下にも調べさせる。俺達がギルドに戻る頃には結果が出ているだろう」

「それでもしハンスが横領したと分かった場合はどうするつもりだ?」

「当然、それ相応の報いを受けて貰う。だけどな、ハンスの罪はそれだけじゃない。ギルド会議の情報もアイツから漏れたと俺は睨んでいる。そして睨み通りだと判明すれば、ハンスはもう地に落ちるしかない」

カインはそう言うと後は口を閉ざす。

その表情にはいつもの豪快さは消え去り、強い決意が浮かんでいた。

その後ギルドホームに到着した俺達はギルドホームに入っていく。

俺達は部外者となるのだが、関係者として同行する様に言われれていた。

ホームに入ってすぐにスクワードの部下が駆け寄って来た。

「ハンスは今、執務室にいます。別の者が見張っているので逃げても追えます」

「分かった」

俺達はまっすぐに執務室を目指した。

その移動中、療養中と聞かされていたカインが現れた事でギルドメンバー達が大きな歓声を上げながら駆け寄ってくる。

それをスクワードや部下がバリケードとなって防いでくれた。

「お前達に頼みたいことがある。今から三時間後に大ホールで緊急の会議を行う。今から集められるだけのメンバーを集めてくれ。そこで全てを話す!!」

「はっ!はい!!」

カインの迫力に押され、命令を受けたギルドメンバーは他のメンバー達を集める為に走り出した。

カインが帰還したという情報は瞬く間に広がり、ギルドメンバー達が続々と大ホールに向かっていく。

執務室に到着したカインはドアを勢いよく開いた。

部屋には元気がないハンスとリンドバーグが何やら話し込んでいる。

突然ドアが開いたので、ハンスが驚いた表情で俺達の方を向いた。

「よぅ、ハンス!! 俺が居ない間迷惑をかけたな!!」

「マッ、マスター!? 今は療養中の筈じゃ??」

「この通りピンピンしているぞ!! 俺が帰って来たんだからお前のギルドマスター代理はもう終わりだ。もうお前には何の権限もない」

その瞬間、ハンスは憑き物が取れたように脱力していた。

「これで終わり……だと? 俺の今までの苦労が……」

「そうだな、裏で色々やっていたんだ。そりゃ苦労もしているだろう」

「それはどういう……」

ハンスは訳が分からないと言いたげな態度を見せた。

「今からお前を処罰する。言い逃れはあるか?」

「処罰!? 俺が一体何をやった? 証拠でもあるのか?」

その瞬間、バチン!と言う大きく乾いた音が執務室内に鳴り響く。

音の原因は再度とぼけようとしたハンスの頬をカインが豪快に平手で打ち抜いた音であった。

「ぐべぇぇっ」

ハンスの顔が高速で九十度回転していた。

首がもげてしまったのではないかと思った。

「あがぁぁぁ」

口の中も切ったみたいで、口からは大量の血が流れている。

「ハンス様、大丈夫ですか!? マスター、何故ハンス様にこんな仕打ちをするのですか? ハンス様は今日までギルドマスター代理として精一杯頑張って来られたのですよ!!」

ハンスの傍にいたリンドバーグが倒れたハンスの元に駆け寄った。

だがカインはリンドバーグを無視し、話を進める。

「ハンス、お前はギルドの規約を無理やり変更し、後ろに居るラベルを不当に追放した!! 間違いないな?」

「そっ、それは…… 確かに規約は変更したが、それは幹部達と話し合って決めた事だ。ポーターのおっさん一人を追放したくて変更した訳じゃない」

「お前が変更した内容によって被害を受けるのはラベルただ一人だ。それでも言い逃れをする気なのか?」

「……」

ハンスは言葉を詰まらせた。

そこに再び平手打ちが飛ぶ、ハンスの横にいたリンドバーグが反応できない速さの平手打ちだ。

たった二回のカインの平手打ちでハンスの頬は腫れ上がっていた。

「次にお前は無策でSS級ダンジョンに攻略を仕掛け、団員の命を危険に晒した。違うか?」

「ちゃんと攻略出来ると踏んで挑んだんだ。俺は俺なりにギルドの名声を高めるために!!」

「その割にお前は前線をユニオンだけに任せっきりにし、その間後方で酒を飲んでいたらしいじゃないか? お前は本当に何がしたいんだ?」

「そっ、それは……」

ハンスは再び言葉を詰まらせた。

「極めつけにお前は各ギルドに脅しをかけて、ラベルに不利益を与えたな。証拠は挙がっているぞ」

もはやハンスは何も言えなくなっていた。

「この件で分かるだろ? お前はギルドを私怨の為に利用し、ギルドが築き上げてきた名声を傷つけた。よってお前を処罰する」

ハンスは震えだし、カインの足元に縋りついた。

リンドバーグも自分の知らなかった事実が明るみになり、困惑していた。

「待ってくれ!!」

「何を待ってくれなんだ?」

「本当にすまなかった!! 俺が悪かった」

カインは無言でハンスの顔面に平手を入れる。

もう何発喰らったのか、俺にも分からなくなってきた。

「ぐべぇっ」

「謝るなら最初からするな!!」

ハンスはそれでも縋って来る。

「おっさん、いやラベルさんが自分は戦わないのに色々と文句を言ってくるから」

カインはまた無言で手をだした。

「俺はお前に言ったよな? ラベルに色々教えて貰えってな!! お前はギルドマスターが言った命令を守らず、自分の感情だけで優秀な人材を追放したんだぞ。分かっているのか?」

ハンスはカインの背後で黙って見ていた俺に縋りついて来た。

「俺が間違っていた。俺が必要なのはラベルさんあんただけだ!!」

「お前は俺を追放したじゃねーか!? 今更、何を言っているんだ?」

つい本音を返してしまった。

俺の言葉を聞いたハンスが絶望に満ちた表情を浮かべた。

そして背後からカインに首元を掴まれてしまう。

「もう二度としない。だから許してくれ、いや下さいぃぃ」

「二度としないんじゃない。お前が既にやった事に対する罰だぁろうがぁぁ」

涙目で懇願するハンスに対して、カインの見えない速度で繰り出される張り手が再びハンスを襲う。

「ぐふぅぅっ」

ハンスの整った顔は見る影も無くなっていた。

「おいスクワード、ハンスにポーションをかけろ。まだ殴り足りない!!」

「わーったよ。でも余り無茶はするなよ」

スクワードは瀕死のハンスにポーションを掛け、ある程度回復させた。

「もうしません。だからギルドにだけはいさせてください」

ハンスは土下座を始めた。

「いや無理だ。お前はやってはいけない事をやった」

そして土下座のハンスに再び平手を放り込んだ。

「追放されたら俺はどうなるんだ」

「お前にはレミリアがいるじゃないか!!」

「レミリアが居なくなったんだよぉぉぉ」

ハンスは絶叫した。

「じゃぁどうしたらいいんだ。俺はどうしたら許してもらえるんだ?」

「それは自分で考えろ。ただ考える余裕があればの話だがな」

ハンスは再び俺の元にすり寄ってきた。

「俺達は同じパーティーで共に戦って来た仲間じゃないのか? そんな俺を見捨てるのか? 頼む許してくれ」

「俺はお前達と同じパーティーで無駄な一年を過ごした事を後悔している。だから二度と俺に近づくな」

「ラベルさん、そうだあんたにも責任があるはずだ。もっと俺を上手く扱ってくれていたら」

「俺もあそこまで嫌われているとは思っていなかったからな、お前は俺が嫌いなんだろ? 今更、復帰要請なんてしてくるなって」

「アンタばっかりマスターに認められて羨ましかったんだ」

「羨ましいとギルドから追放するのか? その思考が俺には理解出来んぞ」

「どうかしてたんだ。お願いです。もう一度だけ俺にチャンスをくれ!!」

「知らん。俺には既に大切で最高の仲間が出来たんだ。俺はこの仲間達とこの先もダンジョンに挑むつもりだ」

俺はそう言いながら、リオンとダンに笑顔を向けた。

ハンスはがっくりと膝をつき、うずくまるしか出来なくなっていた。

だがこれで終わりではない。

この後、ハンスは俺の退職金を横領した罪を問われる事となる。