軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21話 金髪の美少女

ダンが加わった俺達は毎日C級ダンジョンにアタックを仕掛け、連携に磨きをかけていった。

今は連携の訓練を兼ねたダンジョンアタックなので、最下層のボス部屋の前で引き返す様にしている。

勿論ダンジョンをアタックしているのは俺達だけではないので、他の冒険者パーティーにダンジョンを攻略されてしまう可能性も高いが、今は一回でも多くダンジョンをアタックして経験を積ませたいので、ダンジョンマスターとは戦闘していない。

このダンジョンが出現して二週間が経過しているが、俺達のパーティー以外でボス部屋にたどり着いた野良冒険者は居ないとの情報を得ている。これなら後数回はアタック出来ると思う。

ダンは素直で覚えも良く、状況判断も悪くなかった。

元が全くの素人だったので、最初に正しい事を教えてやればそれを基本として身につけてくれる。

それなりに育つまでの時間は何ヶ月間も必要とするが、それを帳消しにする程の良い結果だ。

これならギルドメンバーは全員新人から育て上げた方がいいかも知れない。

俺はそんな事を考えていた。

もし今、B級ダンジョンが出現したとしても、挑戦できるだけの実力を俺達は持っている筈だ。

★ ★ ★

ある日の事、ダンジョンアタックを終えギルドホームに帰る。

次のアタックに備え、リュックにアイテムを補充していると、ギルドホームに備蓄していたアイテムの在庫が乏しくなってきたのを気付いた。

幸いにも明日は休日にしており特に用事もないので、俺は市場にアイテムを補充しに出かける事にした。

翌日の正午、俺は市場にたどり着くと周囲の店舗に目を向けつつ。

市場の中を一通り歩きながら、商品の価格をチェックしていく。

同じ商品でも店によって、多少だが売値に差がある。

同じ商品を買うなら安い方がいいに決まっている。

俺は真っ直ぐ歩きながらも、露店のカウンターに陳列されている商品とその売値を記憶していく。

その時、目に入った露店で、お買い得の商品を見つけた。

「残り一個だよー! 早い者勝ちだ」

店主の売り言葉が飛ぶ。

「これは誰が見てもお買い得だな。俺も一つ買っておくか」

俺が商品に手を伸ばしたと同時にスッと視界の外から細い手が伸びてきた。

そして同時にお買い得商品に手を重ねた。

ギリギリの差で俺の方が速かったが、伸ばしてきた手を追ってみると金髪の美少女だった。

「あはは。お買い得だなって思ったんですけど間に合いませんでしたね」

恥ずかしそうにしている美少女は見た感じ二十歳前後に見える。

軽装の装備で腰にはレイピアと呼ばれる刺突武器を装備していた。

俺は初めて見る美少女相手に何故か懐かしい雰囲気を感じる。

「欲しいのか? 良かったら君が買うといい」

「えっいえ悪いですよ。貴方の方が先だったのに」

「俺の方はストックがまだ残っている。絶対欲しいって訳でもないからな。安かったからつい手が出ただけだ」

「そうなんですか…… じゃぁお言葉に甘えさせて貰おうかな?」

美少女は嬉しそうにお買い得のアイテムを買っていた。

「ありがとうございます」

「さっきも言ったが、気にしなくていい」

「その格好はポーターさんですか?」

俺は買った商品を持って帰る様に中を空にしたリュックを背負っていた。

背負っているリュックは多くのポーターが使っている量販品なので、彼女も気づいたんだろう。

別に隠しておく事もないので、俺は普通に頷いて見せた。

「あぁ、そうだが」

その時、店長が俺に声を掛けてきた。

「おっラベルが珍しくナンパしてるぞ!? これは事件だみんなに教えてやらねーと」

「ちげーよ。早く店番にもどりやがれ!!」

「ラッラベル!? 」

何故か美少女がビックリした表情を浮かべた。

そして更に話しかけてきた。

「有難うございます。私って違う町の冒険者なのでアイテムの値段があっちと全然違っていて……」

「よその国の冒険者って事なのか? アイテムの相場位なら教えてやってもいいぞ。それを元にアイテムを買えば余所者とバレてもボッタくられたりしないだろう」

普通ならここまでやらないが、懐かしい雰囲気を持つ美少女の事が気になったのは確かだった。

美少女はパチンと手を叩いて喜んでいる。

「本当ですかー。有難うございます」

「それで何を買う予定なんだ?」

「えっと回復ポーションと……」

少女が買おうとしていたアイテムの数は十数種類もあった。

「中々の数だな。言うのは楽だが、覚えきれるのか?」

「えへへ。どうでしょう」

「うーん。それじゃ俺が信頼している商店を案内してやろう。そこで纏めて買うってのはどうだ? 安くする様に言ってやるぞ」

「そこまでして貰って有難うございます。ぜひお願いします」

「少しだけ歩くから付いてきてくれ」

「はーい」

人懐っこい性格の様で、その美貌と合わせれば虜になる男は多いだろう。

「こんなにして貰ってすみません。お名前を聞いてもいいですか? あっ私アリスって言います」

「俺か? 俺はラベルだ。そんなに急いでいる用事もないから気にしないでくれ」

「地理にも疎いんでこんなに広い市場だと迷子になりそうで……」

「確かにこの市場は大きいからな、慣れていない者はよく迷子になっているな」

「明日、大丈夫かな……?」

「明日?」

「私、身内の用事でこの街まで付いてきたんですよね。でも路銀も少なくなって来たので冒険者ギルドで野良のパーティーを探して一緒にダンジョンに潜らせて貰おうって思っていたんですけど、地理にも疎くて、知人もいないからちょっと不安で!! ラベルさんの様な優しい人がいてくれたらいいんだけど…… 」

アリスは不安げな表情を浮かべており、話の流れから俺のパーティーに参加させて欲しいのだろう。

俺はポーター丸出しの服装をしていたので、相談を持ち掛けたのだろうと予想する。

「じゃあ、俺達のパーティーに参加するか? でも俺達はC級ダンジョンしかいかないけど。アリスだっけ? 君は何級冒険者なんだい?」

「私はB級ですよ。でも今でもC級ダンジョンに潜っているので全然いいです。ぜひお願いします」

「B級冒険者か、それならリオンとダンの勉強にもなるな…… うん。じゃあいっしょにダンジョンへ潜ろう」

「よろしくお願いします」

アリスは元気よく頭を下げてきた。

★ ★ ★

翌朝の早朝、昨日の内にギルドホームは案内していたので、お願いした時間にアリスがやって来た。

「おはようございます。今日はおねがいします」

「あぁ、こちらこそよろしく」

「初めまして、リオンっていいます」

「俺はダンって言うんだ」

「リオンちゃんに、ダン君ね。よろしくお願いします」

自己紹介も済んだし、早速ダンジョンに行こうか?

「えっと、ラベルさんってその装備で潜っているんですか?」

アリスは俺の装備に驚いているみたいだった。

「あぁ、フェイスガードの事か? 俺はこれを付けて潜っているんだが? 変か?」

「いえっ変じゃないですが、ビックリしたっていうか……そりゃ見つかんない訳だ」

最後の方は声が小さくて聞こえなかったが、この見た目は確かに変かもしれない。

少し装備をスッキリさせた方がいいのかもしれない。

その後、ダンジョンに着いた俺達はアタック前のミーティングを行う。

ミーティングは毎回必ず行っている。

体調の報告や、本日の注意するべき点などを話し合ったりしている。

「お前達も知っての通り、今日はアリスさんと一緒にダンジョンに潜る事となった。彼女は他国からやって来たB級冒険者だ。リオンとダンよりも当然強い。今日は彼女の様にアタックしろとは言わないが彼女の迷惑にならない様にしてほしい」

「「はい!!」」

「じゃあ、さっそく教えた通り、打ち合わせからやろう。アリスさんと上手く連携が取れるかどうかは事前の情報の共有が大事だからな。誰とでも直ぐに合わせられる様になっておけば、長い冒険者生活で必ず役に立つはずだ」

「うん。わかった」

「アリスさん、の武器って刺突武器でしょ? 正面から魔物が現れた時の動きって……」

「アリスねえちゃん。俺、弓を使うんだけどさぁ、援護するタイミングって……」

俺は二人に初めて他人とパーティーを組む時の心得を教えていた。

何が解っていないといけないのか?

俺達は毎日ダンジョンに潜っているので、打ち合わせしなくても連携は取れる。

しかし今日初めて組む、アリスの事は何も知らない。

リオンとダンは自分がどう動けばアリスにとって動きやすいかなど詳細に質問していた。

俺も二人が問いかける質問を聴きながら、頭にアリスという冒険者の情報を刻んでいった。

質問されているアリスの方が戸惑っている様にも見えたので、俺はミーティングを終了させ、ダンジョンアタックを始める事にした。

アタックを開始すると意外と順調に進んで行った。

もちろん俺のスキルは使ってはいない。

このスキルに頼りすぎると俺がいなくなった時に、戦えなくなってしまう為、普段は使わないようにしていたのだ。

いきなり知らない人と組ませてみたが、思いのほか二人は上手く動きを合わせていた。

事前のミーティングの効果で連携は初めてにしては上出来だろう。

今回のアタッカーをB級冒険者のアリスと決めて、俺達三人は徹底的にサポートに徹する。

前衛のリオンも遭遇した魔物を倒しているが、決してアリスの動線を塞ぐ事はしなかった。

アリスが戦いやすい様に魔物を間引き、誘導する。

ダンも絶妙なタイミングで弓を放ち、アリスの手助けをしている。

上層を越え下層にたどり着く頃にはアリスという冒険者の事を殆ど掴んでいた。

俺の目から見ても、アリスはとても優秀な冒険者だった。

リオンとダンに合わせて、手を抜いてくれているのも分かったが、それはアリスのやさしさだと考え、口にはしなかった。

驚いた事に俺達の相性はとても良かった。

もちろん俺もアリスに対して全力のサポートを尽くした。

結果、俺達は今までで最短の時間で最下層に達する事が出来た。

「最下層到着だ。みんなよくやった。時間も新記録だぞ」

「やったー。ラベルさん俺達は何時間でこれたの?」

「四時間五十五分だな。俺も五時間を切れるとは思っていなかった」

「へへへ。やったぜ」

「うん。上出来」

「お前達、調子に乗るなよ。今回、五時間を切れたのはB級冒険者のアリスさんが参加してくれたおかげだ。俺達だけじゃ到底五時間を切る事は出来なかったんだぞ」

ダンは面白くなさそうに口を突き出していた。

「だけど今日のアタックで俺もそろそろC級ダンジョンを卒業してもいいと思えてきた。もし次B級ダンジョンが出現したら、俺達もB級ダンジョンにアタックを仕掛けよう」

「やったー!!」

リオンとダンが飛び跳ねて喜ぶ。

「ラベルさん、じゃあ今からダンジョンマスターを倒しに行こーよ?」

調子に乗ったダンがボスの部屋の方角を指さしていた。

「ダン、調子に乗るな。今日は助っ人でアリスさんがいるんだぞ。もしダンジョンマスターとの戦闘で思わぬ負傷を負ったらどう責任をとるんだ? アリスさんはB級冒険者だから大丈夫だろうけど、俺達の巻き添えっていう形で負傷する事もあり得るんだ。アイテムを補充し、明日、俺達だけでもう一度来よう」

「ちぇーっ。アリスさんなら余裕だと思うんだけどな」

「うんうん」

「駄目だ。ダンジョンマスターとの戦いは危険が多いんだ。即席のパーティーで挑むにはリスクが大きすぎる。そういう油断が敗北を招く事もあるんだ。ダンジョンに潜る事の危険性をもっと考えるんだ」

「わかってるよ。毎日言われて、耳にタコができてるって。俺が悪かったよ、すみません!!」

「私も調子に乗ってた」

「わかればいいんだ。それじゃ地上に戻るか」

そんな俺達のやり取りを見ているアリスは困惑した表情を浮かべていた。

多分、子供相手に大人げないとか、子守が大変だなと思っているのだろう。

その後、俺達はダンジョンから帰り、ギルドホームで分配を行った後、解散した。